第29話 崩壊


 三つ目のダンジョンはアメリカだった。

 流石に俺は動けなくて、アメリカは大惨劇となった。が初めて知ったことがある。ダンジョンブレイクが1時間もしたらなくなったことだ。モンスターが消えて行った。

 なんとか立て直すが、アメリカは被害が大きすぎた。ダンジョン廃止の声が高らかに上がった。だが誰もその方法は知らない。

 

「俺がアメリカに」

「その必要はないかな」

「え?」

「アメリカの企業があの土地を買い取った」

「と言うことは」

「そうだ。我々と同じようにギルドを作るだろう」

「そうですか」

「大丈夫かね」

「自分の無力さを感じているとこですね」

「あれは災害だ、どうしようもないな」

「せめてあの場に行けたなら」

「そうだな。だが君は行けない、だから気にするな」

「はい」

 何かないかと探してみる『転移』を取得してみたが行ったことある場所だけだった。

 あちらの世界に行けるのか試すと目の前が真っ暗になって倒れたようだ。

 やはり魔力不足ということのようだ。

とりあえず東京都内は行けるようにしとこうと思い時間ができるとドライブして回った。


 4回目、5回目と立て続けにダンジョンが立ったのは全て海外だった。死傷者は三百万人を超えた。


 6回目。7回目と続き次はどこかと皆が騒ぐ。


 聖女が面白がっていると思うと悔しくて仕方ない。

12度目にしてようやくまた東京だったのですぐに転移して対処した。

「出てこい聖女!いるんだろ?!」


「ハァ。ここはつまらない、あなたがいるから」

「ふざけるなよ!何百万人死んだと思ってんだ!」


「別に?魔王なんだから何人死のうが関係ないでしょ?」

 つまらなそうにする聖女は破壊衝動に駆られているのか?

「やめろ!」

「ヨシヒコ!」

「勇者君…」

 走って来たのは勇者君と賢者君だった。


「もうやめろ、ヒトミ」

「ヨシヒコが言うならやめてあげる」

「そうだ、これをあげるよ」

「スキル玉?黒いの?」

「あぁ、それで良くなるはずだ」

 首を傾げて開ける聖女。

“ボロ”

「え?いや、なにこれ?」

『崩拳』から『崩壊』に変えたら黒玉が出来たのだ。崩壊を止めることはできない。

「崩壊だよ」

「え?瞳を治すんじゃなくて?」

「恨まれても仕方ないがこれは必要なことだ」

「あぁ、ヒトミ」

「うそ。私死ぬの?」

「これまでの人の分も背負って死ぬんだな」

 もう体の半分が崩れて来ている。

「あぁ、ヨシヒコ!愛してる」

「なんでだよ!待ってくれ」

「私はヨシヒコの記憶に残るわ」

「待てって」

「じゃあね、バイバイ」

 完全に崩れ去った聖女の後には虹のスキル玉があったので収納する。

「さぁ、俺を恨んでいい」

「クオンさん」

「俺だって最後まで諦めずに探したが無理だった。恨まれ役は買ってでるさ」

「…いや、安らかに眠ったんです」

「勇者君」

「こちらこそありがとうございました」

「ごめんな。こんな大人で」

 汚い大人のせいで、

「いえ。僕も背負いますから」

「悪かった、ごめんな勇者君」

「あなたが謝ることじゃない!ヒトミはもうダメだったんだ!」

「ケンイチロウ?」

「当たり前だろ!あれだけ人を殺しておいて!自分が死ぬ時は安らかに死ねて!そんなばかなことあるか?」

「…賢者君」

「僕らはあいつに踊らされすぎたんだ、俺は疲れたから帰るよ」

「待てよ!」

「じゃーな!」

「賢者君も壊れかかってたんだな。俺は…」

「クオンさんは悪くないですよ、最初から瞳を見てなかった僕が悪いんです」

「あはは、もう終わったことだ。もうなしにしよう。勇者君も帰りなさい」

「…はい」

「いや、送って行くよ」

「いいです、少し一人になりたいので」

「そうか」


 俺は帰って行く姿を見送ることしかできなかった。


 だけどこれで魔王はいなくなった。

 ヒトミと言う女子高校生が何を思っていたのかだが、寂しかったのかもしれないな。


 とてもじゃないがあれだけの大惨事を起こした張本人だと思えない。


 だけどこれでダンジョンが増えることはない。

 魔王も生まれない。



 あとは俺たちの心に残るだけの聖女。



 虚しいな。



 次の日は休みをもらい、聖女の家に行って花を置いて来た。

 

 自分勝手だけどな。


 

 

「んじゃいつも通りな!」

「「「はい」」」

 3人はダンジョンに潜って行った。


「はぁはぁはぁ、おい!俺らには何もないのか?」

「頑張れよ」

「チッくそ!」

「なんだってんだよ!俺とお前のどこが違うんだよ」

「それ、自分で言ってて虚しいだろ?人は皆違うんだから」

 俺はそう言って帰ろうとする。

「おい!剣を握れよ」

「お前じゃ勝てないのがわかんないのか?」

「ふざけんなゴフっ」

「うちのがすまんな!血の気が多いみたいだ」

「良いですよ」

 馬鹿2人もそれなりに頑張っている。


「お母さん!」

「あらどうしたの!ケガしたの?ヒール」

あのおばちゃんが自分の息子にヒールをかけてるのをみるとあの2人が特別運が悪いような気がするな。


「だが結局人は人だからな俺は俺でしかないし」


 聖女はなんのために人を殺したんだろうな。


 誰かに認められたかったのか?


 わざわざ東京に戻ってきたのはとめてほしかったからなのかもな。

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