第6話 危ない二人


 あの日はまだ残暑が厳しく暑い日が続いていた。外回りをしている俺は少しネクタイを緩めてベンチで休憩していた。

「さてもう一丁頑張るか」

 と立って歩き出す。ちょうど高校生が帰る時間かと思っていたら急に魔法陣が下に浮き出て光っている。中心は男女3人だが俺も中に入っていると外に出ようと試みたが無理だった。買い物帰りのおばちゃんやタバコを吸ってる若者もその中にいた。


 どうせならもっとピンポイントで召喚してほしかったな。


 そんなことを思いながらコーヒーを飲むとまぁ、来てしまったものは仕方ないかと諦める。

 飲み終わったのか俺のベッドに寝転ぶヨミ。

「どっか行くか?」

「行く行く」

「行きます!」

 と言うので3人で外に出る。美味いパン屋や串肉の屋台などいろいろ見ながら買って試してを繰り返す。

「お!ルナちゃんにヨミちゃんじゃん!」

「うげ」

「あ、あの」

「なんだ?お前も召喚者か?」

 ルナとヨミの前に立つと睨みつけてくるが、

「そうだよ、んで今はパーティー組んでるものだ」

「あっそ。邪魔だからどいてくんない?」

「はぁ、嫌がられてるのもわからないのか?」

「はあ?お前が決めんじゃねーよ!なぁ!ルナちゃん」

 と手を伸ばすのではたき落とす。

「汚い手で触るんじゃない!」

「んだとテメェ!殺すぞタコ!」

「殺される覚悟があるならこいよ」

「んだとこら!」

 くっそ鈍いパンチを捕まえて投げ飛ばす。

「グエッ!!」

「ったく!悪い虫はさっさと王城で寝てろ」

「ピクピクしてる」

「殺したんですか?」

「な訳ないだろ?手加減したし、ちょっと腰とかが痛いかもな?」

「うふふ」

「悪い虫!」

「いくぞ!起きたらまた面倒だ」

「「はーい」」

 俺たちは普通に無視して買い物を続ける。


「あんのやろう、いつっ」

 王城に戻ってきたヒロシは腰を庇って座る。

「あんた大丈夫かい?」

「チッ!うっせーよ!」

「なんだい!せっかく治してやろうかと思ったのに!」

「なんだ治せるのかよ?お願いするよ」

「もうババアなんて呼ぶんじゃないよ!ヒール」

「おっ!治った!ありがとうおばちゃん!」

「まぁ、それでいいよ」

「くっそあのヤロウ今度は痛い目見せてやっからな!」

「はぁ、ったく若いもんはまだやるのかねぇ」

「それよりあのうっさいおっさんは?」

「ご飯食べに行ったよ」

「またうるさくなりそうだな」

「ほんとよねー」


 俺たちは買い物を続ける。が、また召喚者のおっさんがいた。なぜか怒鳴り散らしているが触らぬ神に祟りなしだ。

「このクソまずい飯に金なんて払えるか!」

「ならおとといおいで!」

「くそ!おい!無視はないんじゃないか?」

 俺たちが横を通る時に気付いたみたいだ。

「はぁ。なんだよ?」

「お前、年上に口聞いたことないのか?」

「うっさいおっさんは黙ってろよ」

 ほんと絡むのが上手いおっさんだな!

「敬語も知らんのか?お前もあの若造と一緒だな」

「は?敬う必要のない人間になんで敬語使わなきゃなんねーんだ?」

「この野郎!黙って聞いてりゃ図に乗りやがって」

 どこが黙ってたんだよ!しかも鈍いパンチで、

「ウゲェッ」

 体重があるからそれなりにダメージが入ったみたいだな。

「あはは!あんたら良くやったよ!スッキリした!」

 店のおばちゃんが笑いながら言う。

「絡まれただけですけどね」

「いいんだよこんなやつほっとけば」

「ですね」

 俺らはそのままほっといて街ブラを再開した。



「いつつ、あのヤロウ」

「あんたもかい」

「なんだババア!」

「なんだい?治してやろうと思ったのに」

「ほんとか?ならやってくれ」

「もうババアなんて言うんじゃないよ!ヒール」

「ありがとうおばちゃん」

「あんたにおばちゃんて言われてもね」

「しょうがないだろ?」

「まぁそうだね」


「おっさんもやられたのか?同じ召喚者に?」

「あ?あぁ、そうだがお前もか?」

「そうだよ!ちっと強いからって威張りやがって!」

「そうなのかい?そんな人には見えなかったけどね」

「あいつは敬語も使えないようなやつだぞ」

「そりゃ怖いねぇ」

「まぁ今度あったらただじゃおかねえけどな!」

「おっさんテェ組もうぜ!あいつをやっつけるために」

「あ?まぁいいけどな!」

「まだあそこら辺にいるだろ?」

「多分な!」 

「行くぞ!」


 俺たちはマグカップを見ていた。自分のが欲しいらしくてちょうど陶器を扱ってる店があったからそこで買い物していると。

「いたぞ!さっきはよくもやってくれたな!」

「あ?ここは店の中だぞ?外に出るぞ?」

「おう!早く出てこいや!」

「んとに。めんど臭い奴らだな」

「なんだとてめえ!スーパーカッター!」

 若いやつが手を振り抜くと後ろの壁が切れている。

「うおっ!危ねえだろ!街中で使うなよ!」

「っせえな!おっさんも何かあんだろ!」

「ああ!ウォー「使わせるかよ!」ガフッ!」

 顎に掌底をかます。ついでに回し蹴りで若いクソヤロウに蹴りを入れる。

「グカッ」

 2人を路地裏に置いておく。


 危ない奴らだな!街中で何しようとしてんだよ!


 

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