異世界のゴミアイテム『聖遺物』で『宗教ビジネス』……のはずが『ルネサンス・宗教改革』~ 追伸、信徒が『カルト教団化』し、国を滅ぼそうとしてます。誰か助けて下さい ~
第37話 宗教としてではなく、ビジネスとしてやっていきたい
第37話 宗教としてではなく、ビジネスとしてやっていきたい
カミヒト教団だと……。冗談じゃねえ……。
何だ! その俺の名が入った、くそダサい名前は……。
第一、俺が教祖なんかになったら、ろくなことにならねぇぞ。
私利私欲の限りを尽くし、はたまた、若い女性信者の手を出してハーレムの上、総スカン。
自信がある……。俺が教祖になったら父 天仙のような最低なカスになれる自信が……。
ここは断固として止めなければ。
「領主様……カミヒト教はちょっと……」
そう、場を鎮めようとした……。
――その瞬間。
「しっ……」と、マリーの人差し指が、声を発さない様に促す。
「――――!!?」
一同の視線が、彼女へと集まり、緊迫感が一気に高まる。
「……聞かれております……」
そう、小声で指し示す先――部屋の扉。
(まさか……教団のスパイか!?)
一同が警戒しつつ、執事 ティル ・ニクソンがその扉を開け――確認すると。
そこには色鮮やか花弁のフリルようなドレス姿の少女が――驚き、派手に転びながら部屋の中に入ってくるのだった。
「あ痛たた……失礼しますわ……」
「ユリアナ!!? お前、なぜここにいる?」
「お父様! お話はお済みになられましたか?」
「いや……まだ、だが……?」
「退屈ですわ!」
困った顔を覗かせる領主。その顔は威厳とは程遠い……、父親の顔になっていた。
「領主様? こちらの可愛いらしいお嬢様は……」
「おお、すまない! 紹介が遅れたな……うちの娘 ユリアナ・サンジュ=ルクモレン だ」
ああ、そういえば……確か……。
前にフィデスが助けたあの領主の娘さんである。
領主と同じ色の
まるで見たままの、異国のお嬢様のよう。
年齢はマルタよりも幼いくらいだろうか。
その少女は
慌てて俺も不器用なお辞儀で返していた。
……あの時は、挨拶どころなかったではなかったな……。
「随分とお元気になられて、安心しました……」
「ははは、元気過ぎて困っとるぐらいだがな……」
その微笑ましい光景に、先程の堅苦しかった部屋の空気は嘘みたいに和んでいった。
そして、その少女は。
あることを思い出したように手拍子を打つのだった。
「そういえば、お父様! なんでも私の事を助けて頂いた”聖神女”様がお見えになられているとか?」
「ああ、そちらにいる金髪の女性がそうだよ」
そう、領主が紹介するとフィデスは謙遜した会釈を見せる。
少女は「まあ、貴方がそうでしたの!」とその眼を煌めかせ、マジマジと見つめていた。
どうやら、すぐに気に入られたようで、彼女の傍へと近づき、その手を取りをとるのだった。
その愛らしい光景に、場の雰囲気は完全に緩みきっていた。
「そうですわ、お父様! ”聖神女”様に城中を見せてあげたいのですが、よろしいでしょうか?」
「いえ……ユリアナ様……まだ、お話が……」
「どうですかな、カミヒト殿。どうやらうちの娘が、いたく”聖神女”様を気に入ったようだ。少し宜しいかな?」
「ですから……私はお話が……」
俺は、分かりやすく戸惑う彼女を横目に考えこむ。
ここ最近も仕事ばかりだった彼女……。
本来、休日の予定であったが、どうしても同行したいという彼女の希望で、ここまで付き合わせてしまった。
この重い内容ばかりの会議は彼女にとって、さぞ退屈なものであろう。
やはり……俺としては日頃の疲れを取り、ゆっくりして過ごして貰いたい。
それにここは社交辞令でもあるし、お嬢様のお言葉に甘えるか……。
「ユリアナ様! よろしくお願いします!」
「ちょっと、カミヒトさん!?」
「まあ! お許しも出たことですし”聖神女”様! さあさあ、お外へ行きましょう! 当家自慢のお庭をご案内しますわ!」
そう言って、強引に手を引かれ……。
フィデスは「私は……まだ……お話の続きが……ぁ」と言い淀んだまま、部屋を後にするのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「……すまない……話を元に戻そう」
そう言って、領主は咳払いをし話の続きを再開する。
ひとまずは宗教団体の設立は、一旦置いておくとして、まずは”黒死病”の予防と再発防止である。
もう、二度とパンデミックを起こさないよう、各家庭の衛生状態を上げる必要がある。
都市の住民への更なる衛生の意識改革についてである。
そこでまずは、マリーの作る製品を無料で配布するという案が議題にあがる。
彼女の作る石鹸、洗剤、お香はどれも疫病には有効な予防手段で、その効果は既にスラムの住人達で立証済みであった。
だが、ここで一つ問題がある……。
無料で配布すると言っても持続的に都市の全員に渡すには限界がある。
それは簡単に言ってしまえばこの都市の資金不足が原因である。
この都市の重要な組合の三つあり、それぞれが相互の元、経済をまわしている。
問題は、ヴァセリオン教団が一番重要な、この都市の”商業組合”を牛耳っていることである。
そのせいで都市の財政状況も税制だけでは、心許無いのが――今の現状。
領主自身――娘の治療、”聖水”に莫大な資金を取られ、個人的な資産の余裕は全くないとのことだった。
まあ、それでも、都市の公的資産には手を出さないところを見るに、この領主は良心的な領主だと云えるが……。
何とか、謎の『あしながおじさん』の資金提供のおかげで、当面は村の運営、その継続が出来るが……それも長くは続かない。
早急に何かしらの資金集め、外貨獲得のための策が必要だった。
これは、カミヒト教はともかく……事業、会社を設立する必要があるな……。
「この資料に異論はない。各所の細かい点は即日詰めるとして、出来る準備はこちらで、すぐに用意させよう!」
「ありがとうございます」
こうして、マリーが考えた案は即、採用となり、話題は次の課題、ゴミの処理問題へと移る。
領主の話によると。
かき集めたゴミをどこでどう処理するか? その置き場に困っているとのことだった。
そこでマリーは、都市の外のスラム街周辺に大きな穴を掘り、そこに埋める案を提示していた。
聞けば、そのごみの大半は生ごみや人糞など自然に返せる物が多いとのこと。
異論はない……見事な提案である。
(だけど……何かが、引っかかる)
そういえば……アフリカの砂漠の土地をゴミで緑化する日本人とかいたなぁ……。
そんなことを思い浮かべながら、ポツリと……。
「……その場合、考えられるのは畑の肥料とか……ですかね」
自信なさげに呟く。
「ん……? ”ひりょう”とはなんだ?」
そう、領主は目を丸くし、食いつく。
ん……これは……見解の相違なのか? と驚く俺に――。
同じように驚いた顔。いくつもの視線が一斉にこちらへと向けられていた。
「えっとですね……肥料とは土に不純物を混ぜることで栄養を与え、植物が健全に育つようにすることですが……」
その言葉に皆、不思議な顔を覗かせる。
ただ、一人を除いて。
「なるほど……それは盲点でしたね」
と、マリーが関心そうな眼差しを向け、微笑ものだった。
彼女は、農作物についてはかなりの専門家である。
その彼女が盲点というのはよっぽどの事だった。
どうやら、この世界には畑の肥料というものが無いらしい。
彼女曰く――。
この世界には『魔元素』という最小の物質があり、それを多く含む鉱物が魔石と言うらしい。それは、この大地にも微小に含まれており、植物の成長に大きく関係していると言う。
それは土の栄養「窒素、リン、カリウム」と同様なもので、『魔元素』は有限の物質であり、畑で作物を作れば作る程、畑が痩せるのだという。
つまり、『魔元素』が無くなった畑では作物や 草木 が育たなくなるということだった。
そして『魔元素』は、生き物にも大きく関係する。それは、魔獣や人間も持つ力、魔法の動力、『魔力』の源らしい。
魔獣は『魔石』や植物から、人間は魔獣の肉や植物から『魔元素』を摂取している。
故に、その排出物や生ゴミを肥料として畑に撒くことで、畑の回復が見込めるのかもしれないというのが彼女の見解だった。
「流石は、カミヒト様です」
そう、賞賛し、再び向けられる妖艶な微笑み。
しかし、なんというか、この賞賛を素直に受け入れられない自分がいた。
これは誰でも知り得ることで、俺自身が編み出したことではないのである。
ん、待てよ……。
この世界には肥料という文化が無いのか?
とすると、他の現代知識も応用が利くのではないか?
と、俺の頭にいくつかの妙案を思いつくのだった。
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あとがき
お読み頂き誠にありがとうございます。
久しぶりの長編物でお見苦しい点があるかもしれません。
良ければ、コメント頂けると嬉しいです。
第二章 ”レサエムル村の復興と宗教設立編” でございます。
ここからはビジネスと領地開拓、そして宗教設立が同時進行していきます。
タイトルでも主題となっている『宗教ビジネス』
宗教と金は残念ながら切っても切れないで、だいぶセンシティブなイメージをお持ちかと思いますが
この作品では『論語と算盤』という思想の元に書かせて頂きたいと思います。
良ければ、コメント・感想と評価を頂けると嬉しいです。
いつも いいね される方ありがとうございます。大変励みになっております。
なお、この作品の更新は不定期させて頂いております。推敲の進行速度とストック状況によって途中、休載するかもしれません。
楽しみにして頂いている方には大変申し訳ございませんが、御理解のほどよろしくお願いいたします。
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