異世界のゴミアイテム『聖遺物』で『宗教ビジネス』……のはずが『ルネサンス・宗教改革』~ 追伸、信徒が『カルト教団化』し、国を滅ぼそうとしてます。誰か助けて下さい ~
第12話 君こそがこの世界に舞い降りた”女神”だ!
第12話 君こそがこの世界に舞い降りた”女神”だ!
『神が栄光のためにあらかじめ用意しておられた憐れみの器に対して、その豊かな栄光を知らせてくださるためになのです』 ―― ローマ人への書 9章 23節 ――
「……昔はのう……この辺も……何もない……草原でなぁ……」
目の前に座る、老人の客。
杖をつき、擦れた声でもう、二時間以上……一方的に話している。
このお爺さんは『腰がどうしても痛くてたまらん、どうにかしておくれと……』と言われ、『占い、関係なくね?』と心の中で思いつつも……。現代の
一方的な爺さんの長話はまだ続く。
そのあまりの長さに、痺れを切らした俺は。
話の流れを遮るように、こんな質問をしてみた。
「爺さん、この都市の領主についてなんか知らないか?」
もはや、やけくその情報収集である。
だが、爺さんはその言葉を聞き……。
一呼吸固まった、そんな気がした。
(……ん? なんだ、この反応は?)
「……あー、……あれは死んだ……ばあ様に告白してた時の話じゃがぁ……」
と、爺さんの長ーい惚気話が始まってしまったのだった。
(だぁぁあ”あ”あああああ!! ダメだ……このジジイ……最早、耳が遠いという次元じゃねぇ……耄碌してやがるぞ!!!)
俺はこんなところで時間の浪費してる場合じゃねぇんだ……早く、お金を集めなければならないんだよ。
ここ、<ボンペイ>は<コステリヤ神聖王国>の辺境都市。
周囲にはどこまでも続く草原があり、それを抜けると魔獣の出る森がある。更に先へと進むと、四方八方囲まれた山岳地帯があり、その近くの村までは、5日間もかかる。
この都市を出ていくには、最低でも5日間以上の食料、その他生活雑費もろもろと、移動用の荷馬車が必要となる。
どう、計算しても金貨3枚、日本円で約30万程度は欲しい……。
さらに道中、魔獣に襲われない為の準備が必要だ。
冒険者の護衛を雇うとなると出費はもっとかさむ……。
現所持金は十六五枚と銅貨十二枚 約六万六千五百円程度……。
宿屋の仕事が下宿代と賄い代から差し引いて、日当は銀貨二枚程度。
この占いは銅貨五枚程度だから、だいたい一日二千五百円程度。
どう考えても全然、お金が足らない!
何か、ドカーンとお金を生み出すような儲け話を探さなければ。
そう、今必要なのは、『金の卵を産むニワトリ』だ。
そんな甘い事を考えながら……。
日が傾き始めてきたのだった。
「もう、こんな時間かのう……」
そう言って杖を突き、立ち上がる……お爺さん。
(ふっー、……やっとか……)
「……ああ、最後に一つ言い忘れとった……」
「……?」
「……
なんだ……何を言っているんだ?
一瞬、お爺さんの顔が正気に戻った気がした。
しかし、俺はこの時……。
『なんだ、老人の戯言か?』と思い、深くは考えなかった。
後に繋がる重大な事だとも知らずに――。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
こうして、やっと、爺さんの長話から解放され……。
今日はこのくらいにするか。
そう、片付けをしようと、した時――。
「あのー……まだ、やってますか……?」
目の前に、新たな女性のお客が席に着いたのだった。
透き通るような金髪に白い肌。歳は二十歳前後の町娘。
顔の半分をスカーフで隠すように巻き、幸薄そうな憔悴しきった顔を浮かばせる。
これは、また……訳アリなお客さんだなぁ……。
「はい、大丈夫ですよ! 何を占いましょうか?」
金髪の女性は一呼吸を置いた後、ため息を零すように語り出す。
「……先程、仕事をクビになってしまいまして……この先、私はどうすればいいのでしょうか?」
今にも列車のホームから飛び込みそうな悲痛な表情を見せる彼女。
これは、だいぶヘビーだな。
「分かりました! 仕事運を中心に視させていただきますので、まずは手相を見せてください!」
彼女は言われたまま、手を差し出してくる。
俺は「失礼します……」と言い、手相を見るフリをし、いつものコールドリーディングを始めた。
彼女の手は、若い外見とは打って変わって、火傷やあかぎれなど手荒れが酷い。
綺麗な金色の髪がバサバサに広がっており、枝毛もあちらこちらにある酷い状態で……。
そして、なによりも一番に目を引くのは……彼女の顔である。
端正な顔立ち、美人といえば美人なのだが……問題はその顔の半分を覆ったスカーフである。その隙間からは、大きな火傷の痕が垣間見えている。
さらにその服装。襟詰めの長袖、ロングスカートの服で隠しているがその裾から見える地肌にも無数の切り傷の痕が見受けられた。
そのどれもが、だいぶ古い傷。これはまるで行為的に付けられた虐待のような痕……。
それが原因なのかわからないが、彼女は絶えず陰鬱な表情を浮かべ、暗く沈んだ雰囲気を纏っている。
典型的な自己肯定感の欠如の特徴。
この時、俺は胸の奥が締め付けられるような感覚に襲われる。
それは、初対面の俺でも容易に想像できてしまうほどの――幼少期の過酷さだったからだ。
(いやいや、これだけで判断するのは早計だな……)
俺は頭を振り、今一度、別の思案を巡す。
それは彼女がクビになった理由である。
一般的に仕事のトラブルの大半は人間関係だ。
社内の虐め、仕事上のミス。
はたまた……その外見からくるトラブルなのだろうか?
(どちらにしても、これだけではわからないな……)
―― 【神眼】Lv2 発動 ――
――――――――――――――――
~ ステータス ~
【名前】:フィデス・ガリア
【Lv】:2
【種族】:人間
【職業】:治療魔法師
【年齢】:22歳
【状態】:虚脱感
【HP】:95/100
【MP】:10/110
【物攻】:G
【物防】:F
【魔攻】:E
【魔防】:B
【敏捷】:F
【知力】:D
【幸運】:G
【スキル】:【算術】Lv1 【大天使の加護】LvMAX 【手芸】Lv1
――――――――――――――――
「なるほど、貴方は”治療魔法師”でしたか……それに、これまで良い運気に恵まれてこなかったみたいですね」
「凄い、当たってる……!!?」
彼女は分かりやすく関心し、その表情が少し柔らかくなった。
(よし! これで少しは話をしやすくなったな……)
あと……他に、気になるステータス情報は……と――。
―― 【啓示】Lv1 発動 ――
ん……何だ?
『【神眼】がLv3になりました』
「――な!!!!?」
追加される新たな情報。
そのスキル欄に、俺は思わず絶句した。
【大天使の加護】LvMAX……自身の状態異常の無効化。
(おいおい、噓だろ…………)
【SP】:1200
この娘……まさしく、金の卵――いや……。
”
「占い師さん? どうかされました? ……何が視えたんですか?」
次の瞬間――。
俺は……興奮のあまり、またも盛大にやらかす。
思わず、彼女の手を両手で握り……。
こう叫んでいた。
「君こそが……この世界に舞い降りた”女神”だ!」
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あとがき
お読み頂き誠にありがとうございます。
久しぶりの長編物でお見苦しい点があるかもしれません。
良ければ、コメント頂けると嬉しいです。
作品のテーマは
「読者に最高の経験をさせる」=「読者を神にする」です。
ということで、ようやくヒロインの登場です。
ここから、訳ありのヒロインと駄目なオッサンのすれ違いラブコメ開幕です。
『面白そう!』と思った方や誤字脱字報告等。
評価 と 感想 を頂けると嬉しいです。
いつも いいね される方ありがとうございます。大変励みになっております。
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