第5話 この世界にも神はいないのか?


 『事実、わたしの父の御心は、子を見て信じる者がみな永遠の命を持つことです。わたしはその人たちをひとりひとり終わりの日によみがえらせます。』 ―― ヨハネの福音書 6章 40 節 ――


 

 

 「……イエス・キリストやないかーい!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 かーい!

 

 かーい!


 かーい!

 

 森中に虚しく響く絶叫。


 そして、再びの静寂。


 駄目だ……。

 『聖骸布』以外……使いもんにならねぇ……。

 

 ゴミアイテムじゃねぇかぁぁあ”あ”あああああ!!


 水は? 食べ物は?

 どうやって、このサバイバル環境を生き抜けばいいんだ。


 あと……これ、どうやってしまうんだ……。


 そう思った瞬間、『聖骸布』以外の物が消滅――。

 

 【聖墳墓】Lv1……スロット4/6。


 なるほどね。ゲームのアイテムボックスみたいなもので、発動は意識と連動してんのか? これは……。


 とりあえず、状況を整理する必要があるな。


 そう、何気なく、股間にある葉を摘まんでみると――。


 

 ―― 【神眼】Lv1 発動 ――

 

 

 ――――――――――――――――

 

 ~ ステータス ~

 

 ヘアンの葉


 【品質】 良

 

 詳細……【MP】+1 【MP】+1回復。

 

 ――――――――――――――――

 

 

 おお、これはいいな……なんでも見ようと思えば見られんのか。


 これ、食べても平気なのか?


 とりあえず、しまってみるか。


 【聖墳墓】Lv1……スロット5/6。


 はぁ?……たった一枚でアイテムボックスが1/6増えたぞ。

 

 ということは……1つしか入れられないのか……。


 ちょっと、待て!思った以上に何も出来ねぇぞ。


 このゴミアイテムといい、この状況といい。これからどうすればいいだ……。


 そう、途方に暮れていた――。

 

 その時、森を駆け抜けるような音が木霊する。


 なんだ……?


 そのざわめきに思わず、ビクッと肩を震わせていた。

 

 さっきまでとは一変する周囲の状況。


 そして……。

 

 微かに聞こえる叫び声。


 誰かいるのか……?


 その音のする方へと自然と足が向く。


 どんどん、近くなる音。


 (こんな森の奥で、一体何がおきているというのだ……)


 そっと茂みを掻き分けた先。小高い崖の斜面の下に、四つの人影が動いていたのだった。


 (やったー! 第一村人発見だー! 助かったー!)

 

 そう、安堵も束の間。その異変に、すぐに気付く――。

 

 「囲まれているぞ! 盾を構えろ、ステイン! リアは回復魔法でジュリーの足を治してやってくれ!」


 剣を持った青年が切羽詰まった声で叫ぶ。

 その者達を取り囲むように、獰猛な獣達の息使いが聴こえていた。


 (……えっ……これは戦闘……なのか?)


 俺は高い位置から息を殺し、静かにその様子を窺う。


 次の瞬間、巨大な猪のような獣が次々と現れ、その者達へと襲いかかる。

 刹那、防具を付けた二人の男達が剣や盾で応戦し、後ろの女性、二人を守っていた。

 

 (ん……? 一人は手負いなのか?)

 

 女性が足を抑えて、疼くまっている。

 そして、もう一人の女性が手を翳し、何やら呪文を唱える。


 発光する掌……ファンタジー世界の魔法ような。

 それに、あの獣……。


 まるで、RPGゲームの冒険者、そのものである。

 

 必死の形相で意気込み、応戦する男達。

 彼らの腕前は、素人の俺から見ても熟練していて、簡単に獣を斬り伏せていく。

 

 (おお! これだったら、いけるのでは……?)


 そう、見える戦闘の様子。

 

 しかし……よく見ると――。

 

 男達は既に防具や剣がボロボロになっている。

 森の奥から次々と襲い掛かる獣達の猛攻に、徐々に消耗戦を強いられていたのだった。


 これではせっかく、第一村人に出会えたのに、危機的状況ではないか……。


 (そうだ! ……あれ、試してみるか……)

 

 

 ―― 【神眼】Lv1 発動 ――

 


 ――――――――――――――――

 

 ~ ステータス ~

 

 

 【名前】:暴巨猪グレートボア

 【Lv】:21

 【種族】:魔獣


 ――――――――――――――――

 

 

 魔獣? 暴巨猪グレートボア

 おかしい……情報が異常に少ない。


 対する男の方は――。


 

 ――――――――――――――――

 

 ~ ステータス ~

 

 

 【名前】:アレク・ネノス

 【Lv】:27

 【種族】:人間

 【職業】:剣士

 【年齢】:21歳

 【状態】:軽傷 疲労大

 

 ――――――――――――――――

 

 

 これも情報が少ない。

 俺のステータスでは【HP】や【物攻】等々の欄が視られたのに……何でだ?

 

 もしかして……俺のスキル【神眼】の”Lv1”の部分が関係しているのか?


 そんな思考を巡らす、俺の視界に……。


 突如、映り込む新たなステータス……獣の姿グレートボア


 (――!!? 誰も気が付いていない!!!)

 

 その獣は冒険者達の後方の死角、茂みの奥から女性達を狙いを定めている。


 「お前ら!!! 後ろだ!!!」


 俺がそう、叫ぶと、彼らは俺の存在に気付き、驚きの声を上げた。


 刹那――暴巨猪グレートボアが女性の冒険者達へと襲い掛かる。


 「リア!!! 避けろ!!!!!!」

 

 男の一人が助けに入ろうとするが……手一杯の状況――。

 

 (……間に合うか……)

 

 瞬間、俺は何も考えず、斜面を駆け降り――。


 そして……。


 ――俺は 彼女達を庇う形で立ち塞がったのだった。


 「貴方は……一体?」


 物凄いスピードでこちらに向かってくる暴巨猪グレートボア

 

 しかし……。


 (そうだ! ここは、異世界。ファンタジーの中……)


 昂った感情が恐怖感を吹き飛ばしていた。


 (俺はきっと……ここで何か特殊な力に目覚めて……)


 すかさず、右手に顕現する――『聖槍』。


 (……彼女を助けて、一躍ヒーローに……)

 

 ――こい!!!


 ――次の瞬間。


 「な、――!!!?」


 『聖槍』が手から滑り落ち、地面で消滅。


 ――驚き目を逸らす、一瞬。


 暴巨猪グレートボアの牙が、脇腹に突き刺さり――貫通。


 (……噓だろ……)


 ――――――――つ痛痛痛痛痛痛痛。

 

 想像以上の激痛と衝撃が意識を一瞬で吹き飛ばし……鮮血が宙を舞う。


 そして……無慈悲な衝撃と――。


 女性の絶叫――。


 視界は地面を捉えたまま、ぼやけていく。


 「――おい、あんた! しっかりしろ!」


 (……忘れていた……俺は……)

 

 身体は、ゆうことを利かず……。


 (……ヒーローなんかではない……)

 

 徐々に瞼がおりていく。


 (……何もない……ただのオッサンだ……)


 そして……。


 またしても、呟くこととなる。

 

 またか……。


 

 「この世界にも神はいないのか……」……と――――。


 


 


 〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::



 あとがき

 

 お読み頂き誠にありがとうございます。


 今回の作品のテーマは

 「読者に最高の経験をさせる」=「読者を神にする」です。


 主人公の年齢設定は

 磔にされたイエス・キリストと同じ

 34歳から異世界転生スタート…………


 そして終了です。


 今までありがとうございました。

 今後の作品にご期待ください(笑)

 

 『面白そう!』と思った方や誤字脱字報告等。

 コメント・感想と評価を頂けると幸いでございます。


 いつも いいね される方ありがとうございます。大変励みになっております。

 


 

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