1章 異世界転移、辺境都市での立志編

第4話 使えない『聖遺物』なんて要らない、葉っぱ一枚あればいい

 

 

 『有情、輪廻して六道に生まること、なお、車輪の始終なきがごとし』 ―― 引用:心地観経 ――

 


 

 「……ここはどこだ?」


 目を開けると――そこは……大自然。

 複雑に入り組んだ、緑の迷宮。

 見知らぬ森の中だった。

 

 

 ヤッタ♪ ヤッタ♪ ヤッタ♪


 人は突如、ジャングルに放り出されると――不安になる。


 ヤッタ♪ ヤッタ♪ ヤッタ♪

 

 それも、全裸で放り出されていれば――なおさらである。


 ヤッタ♪ ヤッタ♪ ヤッタ♪

 

 その状況に、脳容量限界キャパオーバーとなった俺は……。


 ヤッタ♪ ヤッタ♪ ヤッタ♪


 そこらへんに生えている巨大な無花果の葉ような植物で、股間を隠し……。


 ヤッタ♪ ヤッタ♪ ヤッタ♪

 

 ――ひたすら踊り狂っていた。


 ヤッタ♪ ヤッタ♪ ヤッタ♪

 

 (もう……信者からの罵倒クレームを受けなくてもいいんだ……)

 

 ヤッタ♪ ヤッタ♪ ヤッタ♪

 

 (そう……ここは楽園エデン……休日出勤も……長時間の残業もしなくていい……今日から毎日が日曜日だ……)


 ヤッタ♪ ヤッタ♪ ヤッタ♪

 

 そう、自分に言い聞かせた結果……。


 ヤッタ♪ ヤッタ♪ ヤッタ♪


 少しずつであるが、頭と股間が冷え……いや、冴え。


 ヤッタ♪ ヤッタ♪ ヤッタ♪

 

 ……そして、悟りを得る。

 

 ヤッタ♪ ヤッタ♪ ヤッタ♪


 あの時……確かに……俺は刺されて……死んだ。


 ヤッタ♪ ヤッタ♪ ヤッタ♪


 ……そして、今――。


 ヤッタ♪ ヤッタ♪ ヤッタ♪

 

 「生きているだけでラッキーさぁ!!!!」


 腰に手を当て、決めポーズをとってみる。

 零れ日に照らされた、おっさんの裸一貫わがままボディ


 高らかな声は……。


 さぁ! ……さぁ! ……さぁ! ……。

 

 森中に響いていた。

 

 ……。

 

 んー、虚しい……。

 

 もし、これがバラエティー番組だったら速攻でチャンネル変えているだろう。


 ……というか……。


 ここ、どこぉぉお”お”おおおですかぁぁぁぁぁあ”あ”ああ!?

 

 誰かいませんかぁぁぁあ”あ”ああ!!!


 めっちゃぁあ”あ”あああああ! 心細いですけどぉぉおおおおおお!!


 『【啓示】を獲得しました』

 

 突如――頭の中に流れ出す無機質な電子声。

 

 ん? ……。

 

 急に視界の左隅に合われた文字。


 なんだ……これ?


 「……ステータス?」


 それは、まるでゲームみたいな表記だった。

 


 ――――――――――――――――

 

 ~ ステータス ~

 

 【名前】:天草 神人

 【LV】:1

 【種族】:人間

 【職業】:預言者

 【年齢】:34歳

 【状態】:健康

 

 【HP】:95/100

 【物攻】:G(10)

 【物防】:G(10)

 【敏捷】:G(20)

 【知力】:D(423)

 【幸運】:A(712)

 

 【スキル】:【啓示】Lv1 【話術】Lv4

       【策謀】Lv3 【聖墳墓】Lv1 



 ――――――――――――――――


 

 俺のステータス、弱っ!

 

【知力】と【幸運】以外が明らかに弱くないか……。


 待てよ! ここがゲームみたいな世界だったら……モンスターとかもいるんじゃ……。


 ざわめく葉擦れの音。


 それにビクつく……クソ雑魚の俺。


 何だよ!!ただの風か!?

 

 ……こんな調子ではまた、すぐ死んでしまうのでは……。


 そんなどうしようもない不安が襲ってくる。


 どうにかしなければ……。


 ん……? 【聖墳墓】に何か入っているぞ……。


 ―― 【啓示】Lv1 発動 ――


 な――!!!!?

 

 『【聖墳墓】の中身を閲覧しますか?』


 おお!!!?急に頭の中からアナウンスの声が聞こえてくる。

 

 答えは"Yesイエス"だ。


 視界に広がる新しい文字が浮かび上がる。


 ええっと……なになに?


 

 ――――――――――――――――


 

 【聖墳墓】Lv1……スロット5/6


 【スロット1】:『聖冠』……【神眼】を得る

 【スロット2】:『聖十字架』……触れると【聖餐】が発動

 【スロット3】:『聖槍』……装備すると【物功】+(a×1.01)【魔攻】+(a×1.01)

 【スロット4】:『聖骸布』……装備すると一度だけ【HP】の完全復活。使用後72時間の再使用停止

 【スロット5】:『聖杯』……対象者が『聖杯』に入った水を飲むと【洗礼】が発動

 【スロット6】: 空き


 

 ――――――――――――――――



 

 ……駄目だ、わけがわからん。

 

 色々と気になるところはあるが……なんかゲームのイベントリみたいだな。

 それに、なんだ?この聖遺物みたいなアイテムは……。

 

 まあ、ちょっと試してみるかぁ……。


 『聖冠』?

 

 瞬間、錆びた鉄の王冠が目の前に出現する。


 うお!!? なんだ!? どこから出てきたんだ?


 警戒しつつも、試しに頭の上にのせてみると――。

 

 『【神眼】を獲得しました』


 【神眼】!!?

 おお!なんか、かっこいいスキルを手に入れたぞ!


 

 ――――――――――――――――

 

 

 【神眼】……ステータスの閲覧が可能。


 

 ――――――――――――――――

 

 

 

 これで、ステータスを見られるようになったのか!

 

 ……あれ?

 

 ステータスはもう、見ることできるんですけど……これ、意味あんの?

 

 まあ、いいか……で、それで?


 ……。

 

 ……えっ、この『聖冠』、他になんか使い道ないの?


 ……ただの鉄屑じゃん。

 

 それに全裸に王冠って……俺は裸の王様か!


 全然、意味ねぇよ。


 次だ、次――。


 『聖十字架』?

 

 手に乗るサイズの十字架が出現し、試しに持ってみる。

 

 『【聖餐】の発動を確認……該当者無し……』

 

 【聖餐】!!? ……とは?


 

 ――――――――――――――――

 

 

 【聖餐】……【SP】に応じてスキルを獲得。


 

 ――――――――――――――――

 

 

 ふむふむ、これでスキルポイントを割り振れんだな!


 ん……?俺の【SP】はいずこに?


 

 ――――――――――――――――

 


 条件:【信仰度】80%以上のパーティーメンバー対象。


 

 ――――――――――――――――


 

 パーティーメンバー? 【信仰度】? なんだ、それ?


 何だよ、これも使いもんにならねぇじゃないか。


 次――。


 『聖槍』?

 

 目の前に荘重な金の槍が出現する。

 

 やったー! これだよ! これ!

 もしかして伝説の武器ってやつじゃねえのか!?

 今、一番欲しい物が手に入った――って……重っ!!!!!!

 

 

 ――――――――――――――――

 

 

 条件:聖職者、【槍術】LV5のみ使用可能。


 

 ――――――――――――――――

 


 ――だと!


 【槍術】スキルとか持ってねえよ! 使えないじゃないか!

 何だよ、これもゴミかよ!?


 次――。


 『聖骸布』?

 

 目の前に汚れた布が出現する。

 

 おお! 身体を羽織る物は丁度今、欲しかったし、これはありがたい。

 

 早速、羽織ってみるかぁ……って、あれ?なんか汚いな。

 

 よく見たら、血痕のようにも見えるぞ……まあ、無いよりはマシか?

 

 なになに、このアイテムの詳細は……。

 おお、1度だけ復活できる?

 つまり、無敵ということか!

 きた! もはや、チートだな!

 

 あれ、すいません……。

 

 【物防】:G の雑魚装甲なんですけど……。

 コレ、イミアリマスカ?


 次――。


 『聖杯』

 

 目の前に黄金の盃が出現する。

 

 【洗礼】? って、あれだよな……キリスト教の儀式の……。


 

 ――――――――――――――――

 

 【洗礼】……【信仰度】80%以上の者をパーティメンバーに加えることが可能。更に【聖職者】へと変更可能。

 

 

 ――――――――――――――――


 

 【職業】の変更? また、パーティメンバーか?

 それに……また【信仰度】!? なんなんだ、一体……それは?

 というか仲間どころか、こんな森の中じゃあ……人っ子一人いないですけど……。


 ん……。


 ――というか、俺の【職業】の欄が”預言者”になってるぞ?


 待てよ……”聖遺物”に”預言者”って……。


 まさか!!? ……これ……。


 

 「……イエス・キリストやないかーい!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::


 あとがき

 

 お読み頂き誠にありがとうございます。


 久しぶりの長編物でお見苦しい点があるかもしれません。

 良ければ、コメント頂けると嬉しいです。


 今回の作品のテーマは。


 「読者に最高の経験をさせる」=「読者を神にする」です。


 今後、『聖遺物』というギミックがどうなっていくのか?

 

 色々と伏線を張らせてみました。

 

 正直、管理が大変です(笑)

 

 『面白そう!』と思った方や誤字脱字報告等。

 コメント・感想と評価を頂けると嬉しいです。

 いいね された方ありがとうございます。大変励みになっております。

 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る