第7話 白の牧師
日曜礼拝
魔導士は無報酬の副業だが、本業は
礼拝の後、相談事を聞く時間を設けている。
「黒木さん、うちの子が今年の春やっと就職したのだけどね、その会社の仕事をしている姿を見たことがないの。子どもが言うには、リモートだから出社しなくてもいいって。お給料は毎月貰ってるみたいだから、詐欺ではないのだろうけど・・・」
「今はパソコンを使った仕事なら、出勤しなくてもできますよ。そういう会社なのかもしれませんね」
「就職したのに家にずっといると、ご近所の目が・・・ねぇ?」
就職すれば、毎日出社するのが当たり前だ。って言いたいんだろう。
古い考えだ、時代の流れに乗り遅れているとは思わないのか・・・
最近こういう相談事が増えている。
「今は、お子さんの就職を素直に喜んであげてください。就職難で一番辛かったのはお子さんですから」
「そお?・・・・・そうね、やっと就職できたんですものね」
自分の子どもが他人と同じではないと不安になるのだろう、神にすがりたい気持ちも解る。しかし親が焦ってもどうにもならない事もある。
相談者が途絶えた隙に、多目的室で遊ぶ子供たちの様子を見にいく。そこではゴスロリメイド服のシスターが、子供たちの相手をしていた。
「こんどわぁしすたーのばん!」
「なんで?わたしのばんだもん!たっくんシスターばっかり」
子どもに『この遊び』をさせてるのか!?
大人のパーティーゲームの定番ツイスターゲームだ。子どもたちの親が見たら泣くぞ。
「た・・たっくん・・・・シスターもう・・むり・・・かなぁ~きゃあ!」
俺の存在に気がついたようだ。
軟体動物状の子どもに足を絡み取られ、腰をひねり両腕はブリッジバンザイのシスターがプルプルしながらこちらを見た。
「ぷっ・・・お楽しみのところ、すまない。昼休憩に入るから後よろしく」
「ち・・ちがうんですう・・黒木さぁん」
後ろ手にドアを閉めると、ドタッ
「あーーーーーしすたーダメじゃん」
「ちがうのおおおおおおおお」
オフホワイトの牧師服を脱いでソファでくつろぐ。昼飯はサクヤが作ってくれたようだ。
ダイニングテーブルに移動して食器にかぶせてあるラップを外す。
アマトリチャーナ俺の好きなパスタ料理だ。一口分をフォークで巻き取り口に運ぶ。
相変わらず上手いな。
始めて会った時、料理が得意だと言っていたサクヤは内気な少年だった。
前髪で顔を隠し、いつも何かにおびえていた。
バターーーン
ドアが勢い良く開く。
「あれぇ?黒木さんいつの間に戻ったんですかぁ?おばさまたちに囲まれて鼻の下伸ばしてたのにぃkkk」カトちゃん ぺっ のしぐさをするサクヤ
今では見る影もないが・・・・
食べ終わった皿をサクヤに押し付ける。
「ご婦人たちは悩める子羊だ、からかうものではない」
「白の牧師さま、トマトで口の周りが真っ赤でございますよ」
「!!」ティッシュで口を拭く、薄くオレンジに染まった。
「きゃはははh」
「礼拝は終わりだ!遊んでないでサッサと掃除に行け」
「は~~~~い」パタパタパタパタ廊下を走っていくサクヤに丸めたティッシュを投げつけた。
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