第5話 社員証

 夢でも見ていたのだろうか。

まさか、犬が人間の言葉を話すわけない。そう思っていたのに・・


ピンポーン

玄関の呼び鈴で目を覚ます。


「はい?」

「書留です、お名前が間違いなければサインをお願いします」


郵便局員が封筒を渡してきた。

「あ・・ご苦労様です」


封筒の中身は、保険証と社員証、手紙?


『  ○○様

 採用おめでとうございます。

 本日から使用できる保険証と

 社員証を同封いたします。

 給料振込みの預金通帳を作成

 しましたので、カードなどは

 ご自身でおつくりください。

        総務部    』


 本当に使えるのか?

とりあえず、会社が通帳を作った銀行へ行ってみる。


「あの・・ATⅯカードを作りたいんですが?」

「どちらのお通帳ですか?」


「これなんですが・・・・作れますか?」

「はい、当行のお通帳ですのでつくれます」


「じゃあ・・お願いします」

「お預かりいたしますね、おかけになってお待ちください」


 あの面接は本当だったのか。

出社するなって書いてあるが、そもそも会社の建物が無いのだから無理な話だ。


仕事の内容も人間としか書いてないし、給料日もいつなのか・・・

社長の最後のあの言葉「頑張って生きろ」って?


 無職を嘆いていた両親に、採用されたことを伝えた。

「そうか!やっと仕事が見つかったか。何て言う会社なんだ?大手か?」

「良かったわ~これで私たちの老後も安泰ね」


 相変わらず自分たちのことしか考えてない両親にうんざりしている。

「株式会社 人間っていう会社だよ。たぶんリモートだから出社しなくていいんだ。はい・・これ社員証」


「ああ、いい。見せなくても知ってるさ」

「お父さん、この会社知ってるの?」

「同級生が自慢してたんだよ、そいつの息子がこの会社に入ったとかで」


「・・・・」

自室に戻る


 リビングから両親の興奮して話す声が聞こえてくるが、どうせ自慢話を誰に聞かせるかの話し合いだ。


早く給料日来ないかなぁ

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