戦いの余波②

「Hi. Excuse me. How do I get to the station?」


 ここはアメリカ北部の小さな町。

 そこで女性が、木にもたれかかる男性に道を尋ねていた。


「………」


 しかし男性は、つまらなさそうに遠くの空を見上げていた。

 女性が不思議に思うと、男は突然こちらを向き、ゆっくりと口を開いた。


「嬢ちゃん。今の魔力を感じたか?あれ、うちの大将なんだぜ。すげえだろ。」


 男は気だるげそうに、だがどこか目に光を宿しながら女性にそう言った。

 女性は突然知らない言語で答えられ困惑する。


「ああ、そうか。ここは異世界だもんな。言葉が通じねえのも仕方がねえか。」


 男は苦笑し、おもむろに頭を掻く。

 それから少し伸びた髭をいじり、少しばかり思案した後、面倒くさそうにため息をついた。


「大将の魔力の発生源は、今の俺と距離がありすぎるな。仕方ない、大将のところまで行く方法は地道に探すしかなさそうだ。」


 すると今度はだらんと横に寝そべり、目をつぶり始めた。

 道を尋ねた女性は男からの道案内を諦め、地図アプリを使おうとスマホを取り出す。

 直後、女性の前を自転車が猛スピードで通り抜ける!


「What!?」


 女性は驚いた拍子にスマホを落としてしまう。

 そしてそれは、近くで寝ていた男の顔面を直撃する…はずだった。


 ………!!!


 落ちてきたスマホは、男の顔面間近で真っ二つに切り落とされる。

 そのあり得ない光景に女性が目を疑う。

 すると、男はゆっくり目を開いてこう言った。


「すまない。気配を感じたもので刀を抜いてしまった。あなたの大切なものだったか。直せるとはいえ、一度傷つけてしまったこと、ここで詫びさせてほしい。」


 男は“リペア”を唱えると、深々とその場で謝罪した。

 目の前で起きている出来事に理解が追い付かない女性は、その場でたじろぐしかなかった。

 すると男は下げていた頭を戻し、少年のような目で女性を覗いて口を開く。


「…そうだ。話変わるが、嬢ちゃん。ここの野原は気持ちがいいぞ。昼寝にうってつけだ。ほら、あんたもどうだ。」


 そう言って、男は手招きして女性を誘導する。

 先程の件でたじろぐ女性は、戸惑いながらもその誘いを受ける。


 それを確認した男は、もう一度昼寝を始めるのだった。



△▼△▼△▼



 ここは、とある民家の中。


「こここ!この圧倒的威圧感を放つ魔力!あのお方に違いない!一刻も早く向かわなくては!」


 男が突如大声をあげ、翼を広げて外に飛び出す。

 その自慢の飛行で一秒でも早くあの方に会うために。

 すると、


 ぼっ!


 男の全身が燃え始める!

 いや、正確には日光に当たった箇所だけ燃えていた。


「しまった~~~!!!そういや拙者、吸血鬼でしたぞ~~~!!!」


 そうして、男は流れ星のように地面へと叩き落されていったのだった。

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