第11話 始まりはいつも静かで冷たい

「さて、ここなら良いであろう。」


 そう言うと、ゲルゼナードは海面を凍らせ足場を作る。

 ゲルゼナードの超速飛行にしがみつき、私たちは見渡す限り地平線しか見えないような海上に降り立った。


「すっご~い!ほんとにゲルちゃんって氷が使えたんだね。」


「さて、動画とやらを撮る前にお二方にお願いしたいことがあります。」


 いつになく真剣な表情で、エルは私とゲルゼナードを見る。


「なんであるかな?エルよ。忘れ物なら、儂が取りに帰るのである。」


「違います。お二方には手加減をしてもらいたいのです。私もできる限り防御魔法を展開して、人間に被害が出ないよう努めます。ですが、全力で戦われると守り切れる保証はありません。ご協力をお願いします。」


 助かった。

 これで私の命が守られた。

 すると、それを聞いたゲルゼナードが口を開く。


「なぜである!?戦いであるぞ!全力でぶつからなくてどうするのである!?」


「はあ、やはりこうなりますか。それなら3・分・です。3・分・間・でこの戦いは強制的に終了させてください。魔王様、頼めますか?」


 {ふん!上等じゃ!調子に乗った龍を叩きのめすには十分じゃ!}


 その3分間でやられるとかないよね?

 魔王とゲルゼナードの実力がちゃんと分かってないから不安しかない。

 でも、魔王も乗り気みたいだしここは信じるしかないか。


「わかった。それでいいよ。」


「ふむ…。仕方ないのである。なら、もう御託はいいであるな?」


 すると、ゲルゼナードの周囲の温度が一気に落ちる。

 ゲルゼナードの臨戦態勢だ。

 私も覚悟を決めよう。


「千春。動画お願いね。ゲルゼナードも動画に映らなくなるから、ここからあんまり動かないでね。」


「善処するのである。」


{じゃあ魔王、お願い。}


{今までの恨み、全部ぶつけてやるのじゃ!}




 ーーーキンーーー



 こうして史上最高峰の決戦が幕を開けた。

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