第3話 この魔法いつ使うの?
このままじゃ被った被害と釣り合わないと思った私は、早速魔王から一つ目の魔法を教えてもらおうとしていた。
「それじゃあ、折角だし魔法を教えてくれない?体渡すし、この世界を堪能してきたら?」
{いや、別に今はいいの…。いや、そこまで言うなら一つ魔法を教えてやるのじゃ!}
そう言うと、魔王は何やら呪文を唱え、唱え終えると体の奥底が一瞬熱くなる錯覚を覚えた。
{これで魔法が使えるはずじゃ!ほれ、さっきの鏡の前まで行って試してみるのじゃ!}
おお、遂に私も魔法が使えるようになったのか!言われた通り、鏡の前まで歩を進めて先生の指示を仰ぐ。
{よし、それじゃあ鏡の前で我の顔を見つめ、これから言う我の言葉を貴様も言うのじゃ!“石化”!}
「石化!」
あれ?これって…
瞬間、私の体が石になり、身動きが全く取れなくなる。
{ぎゃはははははは!引っかかったのじゃ!やはり人間はバカじゃのう!これで貴様は何もできまい!}
こいつっ!一瞬でも信じた私がバカだった!
けど、これってつまり魔王も動けないよね?
{あの~魔王さん。これってどれくらい石のままなんですか?}
{大体半日ってところじゃな!ここまで笑えたのは久方ぶりじゃ。感謝するぞ、人間。}
すごく得意げにおっしゃられているが、残酷な現実を教えなければならない。
{魔王様。この体が動けないということはあなたも動けないということを分かっておりますか?}
{なんじゃ?改まって。我は既に、体の主導権を貴様に握られておるのじゃ!動けなくて困るのは貴様だけじゃ!}
どうやら、気づいていないらしい。結構深刻な問題なんだけど…
{あの…この体の感覚って共有されますよね?}
{ん?さっきの手の痛みを忘れたようじゃな?お主が怪我をするから、我にまで被害が来たのじゃぞ!どう責任を取るつもりじゃ!せ・き・に・ん!}
石化で勝った気でいる魔王様は、完全に調子に乗っている。
一回殴りたいが、それは後にしよう。
{あのお、なら確認なのですが、今から半日飲まず食わずってことでしょうか?}
{当然そうなるのじゃ!あ…!や、やってしもうた!つまり、貴様が喉が渇いたりお腹が減れば我も同じ苦しみを味わうということか!?}
{そういうことです。}
{嫌じゃ嫌じゃ嫌じゃ!いや、半日ぐらいなら何とかなるじゃろ!貴様、最後に飯を喰らったのはいつじゃ!?}
すると、石の腹からぐきゅるるるるる~と盛大な腹の虫が鳴り響いた。
{いや~実は食べたのが推しの配信始まる前だったから、かれこれ12時間は食べてないんですよね~。}
{バカバカバカ!貴様はバカなのじゃ!朝ごはんは!?水は飲んでるんじゃろうな!?}
{いや、あんなことがあって悠長に飲み食いしてるわけないじゃないですか。}
{バカ~~~~~~!!!!!!}
こうして私たちの初日は空腹感と砂漠化した喉に耐えながら、口論を続けて幕を閉じた。
ここから、犬猿の仲の私たちによる同居?ライフが始まるわけだけど、それは後程。
ちなみに、講義はもちろん行けないので、落単にリーチがかかってしまった私なのであった。
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