第31話 【出張】『記念日』/上月祈 かみづきいのり先生
本作が三作目ということで、意欲的なご参加誠にありがとうございます!
【出張】『記念日』
https://kakuyomu.jp/works/16818093072985291348
この詩、マルク・シャガールの『誕生日』というものを知っていないと連想できないと思われますが、あえて、「知らない」ということで解説と感想を述べたいと思います。(一応、マルク・シャガールの『誕生日』については軽くググらせてもらいました)。
求めちゃいけない
そんなこと
恋愛中の二人に完全なる自由はなく、またそれを許してくれる環境もない。ただ、ささやかであっても心だけは通じ合っていたい。そんな気持ちがベースにあって、明るい音楽がどこか儚く流れている。そんなコントラストを感じますね。
わたしはあなたに幸あれと願う
あなたはわたしに幸あれと願う
意地の悪い見方をすれば、「願う」ということは現在は幸せでないということになります。詩の流れからいって何らかの困難が二人に重くのしかかっていることを暗示しています。
今日は記念日 無名の記念日
ねだっていいなら申します
マルク・シャガールの『誕生日』に触れないといいましたが、少しだけ補足のために言及いたしますと、『誕生日』に描かれた後の妻になるベラは花束を持っています。何かお祝いや良いことがあったのかもしれません。ですが、この絵画には「花瓶」がありません。するとこの花束は何を意味するのでしょうか。わたしの貧しい想像力ですが、おそらく遠くにいるシャガールが持たせた「幻の花」だったのだと思います。きっとシャガールがその幻の花を送ったのが「無名の記念日」になるのではないでしょうか。恋人にはいくつもの無名の記念日あります。そんなロマンチックでありながらどこか哀しさを含んだ記念日を感じました。
ロマンティストが
押しだまるような
すてきなキスを
してください
ここに想いのピークを持ってきていると思いました。「ロマンティストが押しだまる」というのがまた味わい深く、「ロマンチックなキス」ではないのです。つまり現実的なキスを渇望しているわけで、ロマンチックなどという幻想的なものはいらなくて、遠くにいる恋人への慕情ではなく、きちんとしたキスを望んでいるのです。「ロマンティストが押しだまる」という表現が、この詩の一番の素晴らしいところだとわたしは思いました。
ありがとうございました。この作品に出会わなければ絵画をモチーフにして詩を作るなんてことを目にしなかったと思います。貴重な体験をさせていただきました!
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