第15話 仲良しの証

 「じゃあ倒そう」

「うん!」


 ≪キズナノチカラ≫の第二段階が発動して、僕とミリアは合体。

 戸惑いもあるけど、僕も彼女もなぜかいける気がした。


「グギャアアアアア!」


 実験魔物が再び咆哮ほうこうを上げる。

 いつまでも待ってくれるわけじゃないだろう。


「ミリア、具体的にはどうするの!」


 ここは研究棟。

 危険物もたくさん置いてある。


 二次被害を考えると、いつものミサイルではダメだ。


「とりあえず溜めよう」

「え、ちょっ!」


 でも、ミリアが思ったより脳筋だった。

 彼女はそのままエネルギーを溜め始める。

 

「「……!」」


 だけど、その瞬間に確信した。

 キュイイインと音を立てて、溜めるエネルギーは青白く光っている。


 これは──!


「「ビーム……!」」


 僕とミリアの感性が共感する。

 男の子は大好きなレーザービームだ。

 

「今までずっと出せなかったのに」

「とにかくこれなら──」

「「いける……!」」


 僕とミリアの呼吸がぴったりと合う。


「アルス」

「うん!」


 物理的に合体しているからか、ミリアの考えも自然と伝わってきた。

 また、それはミリア側も同じらしい。


「「ちゅん」」


 ちゅどーん、どかんに続き、新たな効果音「ちゅん」を同時に発する。

 それと共に、一瞬ビッと青白いレーザービームが走った。


「グギャアッ!?」


 一瞬のレーザービームが貫いたのは、右足のすね

 大きな体を支えるための足にダメージを与えたことで、実験魔物はガクンと姿勢を落とす。


「「やった!」」


 これ以上暴れられても困る。

 だからまずは、動きを止めることを優先した形だ。

 これなら周りに被害が及ぶこともない。


 そして、胸の部分に光るものを見つける。


「ミリア、あれだ!」

「うん」


 おそらく実験魔物の“心臓部”だろう。

 動きを止めたのは、あれを正確に貫くためでもある。


 そうと分かれば、やることはひとつ!


「「ちゅん」」

「グッ、ギャアァ……!」


 心臓部を貫けば何もすることはできない。

 実験魔物からは煙を立ち始めた。

 魔物を倒した時の反応だ。


「よくやってくれた!」

「「……!」」


 そんなところに、後方から声が聞こえる。

 どうやら駆けつけた応援部隊みたいだ。


「こんな危険な場所でよく……って、君達の状況を聞いてもよろしいか?」

「え」

「あ」


 そこで改めて気づく。

 僕たちが合体しているということに。


 ≪キズナノチカラ≫の光でつながっているとはいえ、傍から見れば、僕が後ろからミリアに抱き着いているかのような態勢だ。

 実験魔物よりも異常事態かもしれない。

 

「ア、アルス、離れて!」

「ご、ごめん!」


 お互いの気持ちが離れたからか、僕たちの体は再びまばゆい光を放つ。

 次に目を開けた時には、互いに地面に座っていた。


「な、なにがどうなっているのやら……」


 応援部隊の人がそうつぶやく。

 でも、本当に聞きたいのはこちらだ。


「まあとにかく、改めて礼を言おう。アルス君に、えーと君は……」

「む。第三小隊ミリア」

「すまない、ミリアさんもありがとう。後処理はこっちでやっておくよ」


 自分の事を知らなかったからか、ミリアはちょっと頬を膨らませる。

 それから、軽く頭を下げていく応援部隊を横目に、ミリアが口を開いた。


「みんなアルスのことだけ知ってる」

「そ、そんなことないよ」

「でもいいもん」

「!?」


 唐突にミリアはグッと顔を近づけてくる。


「アルスは私の友達だから」

「……っ!」


 少し赤らめた頬のまま、ミリアはニコっとした笑顔を浮かべた。


 クールだと思っていたミリアの不器用な笑顔。

 それが今はとても眩しく見える。


「じゃあ、ん」

「え?」


 そうして、少し高めに掲げた手をこちらに向けてくる。


「まだやってなかった」

「あ、そうだったね」


 仲良しの証(らしい)ハイタッチをミリアと交わした。

 ちょっと手が高いんだよなあ。







<三人称視点>


 夜中、第三小隊の部屋。


「……」


 みんなが寝静まった中、セリカは布団の中で携帯端末をいじっていた。

 本日のレポートをまとめているようだ。


 内容は、アルスの≪キズナノチカラ≫について。


・周囲の人のスキルや身体能力を強化する

・絆を深めるほど強化の影響力が増す

・絆をかなり深めると第二段階『スキル干渉』が発揮される


 今はこんなところだろう。


「ふーん」

 

 軽くまとめた後、考える素振りを見せるセリカ。

 それから、音もなくベッドを降りた。


 セリカの下にはアルスが眠っている。


「すー、すー」

「……」


 そして何を考えたか、アルスにぐーっと顔を近づける。

 唇同士がくっつきそうなほどに。


「ふ~ん」


 そのまま、何かを企んでいそうな表情でつんっとアルスの頬をつつく。


「絆、お姉さんも深めちゃおうかなぁ」





─────────────────────

不器用なミリアと心も物理的にも距離が縮まり、仲良しになれたアルス君。

次はセリカが何かを企んでいるようですが、果たして……?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る