第18話心理戦

泉の視点

「ふふ、まず赤い糸で結ばれるってさ、ロマンチックだなぁって。男子に言うなら分かるけど、女子に言うって、尊いなぁて。私の心に響いたの。」


仁美さんが説明をしてくれた。


なるほど…紬ちゃんの為ではないのなら、少し安心した。



「それとなんでイカサマを敢えて暴露したかって理由ね。分かりやすく言うと、大事な友達だから。赤の他人だったらしないけど、友達を騙したままじゃ気が引けるから。納得した?」


彼女が真剣な表情で、伝えてくれた。


「うーん、半分くらい…大事な友達だからって矛盾してるので。大事な友達にイカサマをするんですか? そこが気になります。」


そう問いただしたのは、紬ちゃんを騙した怒りからだろうか? でも自分も明君と付き合ってる。それは、紬ちゃんを騙している。そんな心の葛藤が襲ってくる。



「痛いとこつくねー。大事な友達だから逆にイカサマ使えるんだけどね。他の人にやったら叱られちゃうでしょ? イカサマって言っても、大金掛けてやる訳じゃないからさ。」


髪を掻き上げて、彼女が首を傾げて言う。


「でも…友達騙してますよね? 遊びだから許せって事ですか?」


それは自分にも聞いてる様にも思えた。

好きでもない男子と、損得勘定で付き合っている自分に。


「追求するねー。騙すは人聞き悪いよ〜。そうゆう泉ちゃんは、友達騙したりしないの?」


仁美さんの目が鋭く射抜く様に見えた。

まるで、ハンターが獲物を捉えたかの如くに。


「友達…してます。騙してます。自分さえ騙してるかも。」


明君に私は、恋をしていないにも関わらず、してる風に装っている。

それは、騙している事になるだろう。


でも明君を好きになればそれは、結果的に騙した事になるのだろうか?


「そっか。なら少しは気持ち分かってくれたかもね。世の中そんな単純じゃないからね。この話はここでお終いにしよ? 口喧嘩みたいになりたくないから。」


彼女の賢い判断に私は、従う事にした。


「分かりました。」


頷きながら、仁美さんの表情が穏やかになるのを感じながら、ふと胸を撫で下ろした。



「さて最後に私達のやり取りが分からないって言ってたね。それはさ、今の私達と同じようなやり取りと思わない?」


確かに似てるけど、もっと複雑だったと、心で呟き、口を尖らせた。


「難しく考えなくても、王様ゲームのルールとかおかしい、おかしくないってやり取りしてただけなんだよね。」

 

シンプルに考えろって事だろう。


「そうで…すか。確かに言われると、分かりました。」


腕を組んで深く考え込んだ。すると背後から肩に手を置いた。振り返ると紬ちゃんが、そこにいた。


「まぁまぁ、私と組めるんだし、もっと喜びなよ。泉ちゃんなら、めっちゃ嬉しがると思って、仁美ちゃんも配慮したんだろうし。」


微笑んでいた紬ちゃんは、やはり可愛いくて、胸がドキドキする。



「それは…凄い嬉しいですよ? 紬ちゃんと一緒に組めるのは。でも…私運動音痴なので、絶対紬ちゃんの足手纏いになると考えたら、怖くなって…ぐすっ。」


そう私は、紬ちゃんの足手纏いになりたくない…そう考えて、私は王様ゲームを本気では、やらなかった。


棒を全部確認させて下さい。仁美さんにお願いする。そして棒の位置を完全に記憶する。

そうすれば負けなかった。


最も、そうすればイカサマバレしてたんだね。


そう! もし紬ちゃんにキスの権利だったら絶対に負けなかった! 


「ばーか。そんな事考えるなつーの。私も泉ちゃんと組めるの嬉しいよ? だからさそんなの思わず思いっきり楽しもうよ。足手纏いだろうと、私1人でやるって考えたら、いてくれる方が良いんだから。」  


考え過ぎだった…彼女の優しさなら、私がミスしても、笑って許して楽しんでくれる。


紬ちゃんを信じれなかった。情け無いな自分は。


「紬ちゃん…好き! 付き合って!」


吐露するほどに、全てを投げ出したくなるほど、彼女に恋をしていた。


「おまっ、彼氏捨てんな!」


はい、彼氏は捨てないです…多分。


「聞いて下さい、私本気でやったら、仁美さんに、王様ゲーム勝ちます。紬ちゃんが1番賢いって思ってるので!」


紬ちゃんが1番だ。少なくとも同い年なら、紬ちゃんと知恵比べしたら、誰も勝てない。



「そんな簡単な相手じゃないよ〜。じゃあ、もう一回対戦して勝てたら、なんでも言う事聞くよ? 付き合って意外ならね。」



キス! 私はキスをして貰おうと思った。

確かに簡単に勝たせて貰える人じゃないだろう。


取らぬ狸の皮算用という言葉が、思い浮かんだ。すでに勝ったつもりでいる自分を諌めた。


「分かりました! 挑んできます!」


そう言って私は仁美さんに王様ゲームを挑んだ。


紬ちゃんのご褒美は、伏せて、もう一度勝負しようと持ち掛けたのだ。


「3回勝負して、2回王様の棒引いた方が勝ちだ、勝負して下さい。本気出すので。」


私は、笑いを堪えながら言う。紬ちゃんとのキスを妄想してしまう。


「良いよ、どっちが上か勝負しようじゃん。」


私は棒を先に見せて貰った。よし、位置は覚えた。

私の勝ちだ! キス!


そう確信したら、彼女が棒を隠してかき混ぜていた。


「イカサマ! 仕掛けてますよね?」


これじゃ位置が掴めない。私は声を張り上げ、クレームをつけた。


「分かった。じゃあさ、紬ちゃんに混ぜて貰おう」


「それは駄目です。それなら私が混ぜます。それで仁美さんが、先に引けば言いです。」


と更に私が提案する。紬ちゃんが混ぜた後に、何か仕掛けるかもしれない…それは駄目。



「それは…良い案ね。けどそれだと私がイカサマしても気づかないと思うよ? 本当に良いの?」


仁美さんが、私に揺さぶりをかけた。

挑発っ、だけど、どっちもイカサマを仕掛けれるのは確か。良いとも、駄目とも言えない。


私は額に冷や汗をかいた。


私は、かなり有利が一転して、心理的に不利な立場に立たされた…簡単に勝てると思ったのに。


「く…仁美さんって賢いんですね?

でも1番賢いのは、紬ちゃんなんで。なので、イカサマされたくないので、1番左か、真ん中、右で言ってください。」


「仁美さんじゃなく、代わりに紬ちゃんが引けば間違いないです。

あなたの狙いは、私看破したので。」


私は本気モードになった。キスがこっちには掛かってるの。キス、キス、キス!


「看破されちゃったか〜。辞め辞め。」


「じゃあ私の勝ちって事で良いですか?」


「違うよ。このゲームで勝負つけるの勿体無いと思ってさ。

だから別のゲームで後日決着つけよう。」


「嫌です。」


「私もこれで勝負つけるの嫌。」


「む〜、負けるのが怖いから勝負を放棄したんですか? 私の勝ちで良いですか?」


「ふっ、その言葉そっくり返すよ。他のゲームで負けるのが怖いんでしょ? 私との別ゲー放棄で私の勝ちって事でいい?」


私と、仁美さんが言い合っていると、紗理奈ちゃんが、呆れる様に、私たちにラウンドの入り口を指して言う。


「ねぇ、2人とも、そろそろラウンド行こうよ〜。遊べる時間が迫ってるからさ。」


うん、紬ちゃんとのキスを諦め、ラウンドの入り口に進んだ。


でもいつか、再戦するんだ。近いうちに。

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