第16話知恵者

コインが見えた。

…あれ? 何も書いてない? 何コレ…表でもない、裏でもない。


「ふっ、正解は何も書いてないでした〜。私の勝ち! なのでくっつくのは私でーす。残念でした!」


仁美ちゃん! こいつ、イカサママジックしやがった。


さ…さすが知恵者自称するだけある。


「えっ、そんなのアリなんですか?」


「…異議ありです! そんなの聞いてないもん。」



「ふっ、2人とも甘いね〜真に愛する者は、これくらい汚い真似するんだよ? つまり、私が1番紬に相応しいと。お子ちゃまの出る幕はないって訳。」


見事な言い分に2人とも白旗を上げた。

無言で…納得するしかなかったんだろう。


そして仁美ちゃんが私にくっついてきた。


「争い回避させたの、凄いでしょ? 後でご飯奢ってね。」


仁美ちゃんが耳元で囁いて言った。


「助かった、さすが知恵者だね。」


私も小声でお礼を言った。


「ねぇ、なんで紬ちゃんとくっつきたかったの? 

紬ちゃんと何かあったの?」


泉ちゃんが、紗理奈ちゃんに質問をしていた。

やるなぁ、自分を敵にして、2人の仲を良くするなんて。


「私ね、つむたんに守って貰った事があって。バスケの部活で先輩から。それでつむたん、先輩と関係悪くなって…辞める事に。だからつむたんの事大事なんだ。」


…紗理奈ちゃん…仲良くなるの早っ。もう泉ちゃんと仲良く話してんの?


「そうなんだ。紬ちゃんってやっぱり聖女様だね。私も救ってもらったことがあって。」


2人して褒めるやん。全然そんな事ないけどね! 至って普通人です。



泉ちゃんと紗理奈ちゃんの間に交わされた会話を聞きながら、ラウンド近くまで到着した。


仁美ちゃんが腕を組んでいたのをそっと腕を外した。


「紬ちゃん、ありがとう。世は満足じゃ。」


満足すか、おおい〜この人どこの国のお偉いさん?

結構冗談言うのね、仁美ちゃん。


「女王様、それは良かったですね。」


悪ノリした私は、笑顔で彼女の表情を見る。


「ラウンド着いたね。ボウリングは定番だけど、今回は違う事するんだよね?」


仁美ちゃんがラウンド店のボーリングのどでかい飾りを見て言う。


何故にやらないのに見る? やりたいのか? そうなのか? しかしここは、スルーしよう。


「うん、バスケと卓球だね。」


彼女に答えた。休みの日に、ボーリングしたいからだ。もちろん勉強もしなければいけないから、折を見てやる。



「なら、バスケと卓球でチーム組もう。

間違いなく紬が1番人気なので、公平を期すため、また勝負して決めよう。」  


仁美ちゃんが提案する。


「またイカサマするんじゃないですか?」


泉ちゃんが疑い深そうに目を見張る。


「さぁ? イカサマはバレなきゃ、イカサマじゃないんだよ?」


仁美ちゃんが分からないポーズをして言う。


「それじゃ、ひとみんが有利すぎるよー。」


紗理奈ちゃんが、すかさず疑問を口にする。


「まぁまぁ、そう言われると思って、私が最後にやれるゲームを考えた。」


腰を当てて言う。最後にやれる? 最後が不利になるってことかな?


「普通に時間で決めたら、良いんじゃないんかね?」


私は、公平を期すならその方が良くないかと思った。あんまりイカサマされると、お二人が悪知恵が付くんじゃないかなと、恐れたからだ。


特に泉ちゃんがヤバい。


「それじゃあ面白くない! そもそもだよ? 私が勝ち確なのに、それを手放すと思うかい?」


仁美ちゃんが、手を振り私の提案を拒否した。

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