第14話放課後の教室
「紬ちゃん、学校終わったら遊ぼ。」
泉ちゃんが両手を後ろに回して、可愛く私に声をかけてきた。
一瞥を交わして、私は、カバンに教科書をしまう。
放課後の教室で、帰り自宅をする生徒達。
私の机の前を通って行く生徒が、泉ちゃんに、ちょっと、と声をかけていた。退いてくれと暗に伝えたのだろう。
黒板のチョークの白い粉が微かに残っている、のが気になった。消してやるかと思い、先に泉ちゃんに返答した。
「ごめん、他の子と遊ぶ約束してる。」
言い終わった直後に彼女の顔を見る。
渋い顔をしていた。やきもちかな? 何かを言おうとしていたけど、彼女は考え込んで質問をしてきた。
「じゃあ明日は?」
明らかに機嫌が悪くなった。ぶっきら棒な言い方に、私を優先してと言うメッセージが込められていた。
泉ちゃんも明君優先しなさいよと、心で叱った。
「明日は勉強する。」
私は、取り合わずに、一言そう答えた。彼女に優しくし過ぎると、私の身体が危ない!
「えーじゃあ…明後日は、明君とデートの約束だ。」
別に明君の名前出さなくても…普通に予約あるで良いでしょ? でもそれが故意に言ったのかは分からなかった。
「そうなん、良かったね。」
はいはい、お熱い仲で。でも好きなのは、私なんだよね。複雑な関係だなと、ため息を吐いた。
「ねぇ〜明日勉強一緒にやろ〜。」
彼女が抱きついて言う。暑苦しいな〜。まったく。
泉ちゃんの体温が感じられた。周りの反応がまたやってるよ、そう言う言葉が聞こえてくる。
「あんたって勉強するの?」
背後に回った彼女に顔を向けて言う。
「しないよ。けど、紬ちゃんと一緒ならする〜。」
彼女が一緒に勉強すると言う提案に、戸惑いを覚えた。
私は、彼女にとって特別なのだろう。
苦行も私といられるなら、すると言う。
その危うさが、私の胸に微かな将来への不安を感じさせた。
私の為なら、おかしなことも、仕出かしそうだからだろう。
「してない癖に私より勉強出来るってどうゆう事?」
「えへへ、私記憶力には自信がありまして、勉強しなくても、良い点取れちゃうんです。」
最近知ったけど、泉ちゃんは勉強出来るらしい。
自分の事で精一杯なので、知るのが遅れたのだ。
「腹立つな〜。何よそれ…結構根に持つタイプ?」
何かしたら、根に持ってやられそう。
「はい、紬ちゃんがした事全部覚えてます。」
やっぱり! ひぃ〜心臓の鼓動が速くなる。彼女を怒らせたらと思うと恐怖を抱いた。
「怖っ…近寄らないで。」
でも、私になんかするかな? さすがに好かれてるから、何もしないよね? きっと。
「やですぅ。近寄る〜。」
もう近いがな! 心で怒鳴った。
「ふん、学校の授業は真面目に受けてるの? ほんとは勉強してるんじゃないの? おっちょこちょいなのに。」
教室から続々と皆出て行く。足音がバタバタと耳に響く。
そして明君がこっちを睨んだ気がする。こっちもやきもち妬いてんのかな?
面倒くさ。
「学校の授業ずっーと、紬ちゃんのこと考えて真面目に受けてないです。勉強嫌いなのでしてないです。」
そんなバカな! あれ…そう言えばなんかそう言う天才児のことなんて言ったかな? 確か…思い出した。
「うっそーん。もしかしてギフテッド?」
「はい! 紬ちゃんのギフテッドです。紬ちゃん検定満点取れます。」
「おいっ! そんな検定ないわ! でも…だとすると泉ちゃんの行動に整合性がとれるのよね〜。」
「紬ちゃんのギフテッドです。」
「それは分かったつーの。いや、分からん? じゃない、私限定品扱いやめーい。」
泉ちゃんのペースに乗ってしまった。けど、私はそのやり取りが、悔しいけど楽しくて、恋心のない友達なら、最高なんだけどなと惜しんだ。
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