第8話ホワイトデーの一日

なんで私ここにいるんだろ?  


紬ちゃん、私明君とホワイトデーに色々周るんだけど、紬ちゃんも一緒に来て。


「はい?」


なんで? 私行かないけど。2人で勝手に行け。


「やったー。ありがとう紬ちゃん。」

泉ちゃんが、私の手を取り上下に振った。



「ちゃうわ! はい! じゃなくてはい? だからね。なんでって事。」


「明君来てくれるって。」

少し離れた、明君に言った。


いや待てよ。話聞けって。


「行くなんて言ってないから。」


「紬一緒に来て欲しい。泉から聞いたよ、この前映画館で色々あって、それから気まずい関係なったんだって? 関係修復しよう。」

明君が両手を合わせて頼み込んでる。


おーい、どう言う事すか? それはあなたと泉ちゃんが付き合うって事で、多少揉めただけで、最後はちゃんと関係修復したような?


「あの勘違いしてるよ、2人とも。私は別にもう気にしてないし。」


正直明君には、未練がある。でも死ぬほど好きだったわけじゃない。

あくまでクールで、反面優しくてかっこいい明君に、尊敬を抱いていた。尊敬から好きになったけど、私と明君に深い繋がりっていうのはない。



「紬ちゃん優しいからそう言うけど、私はもっと、紬ちゃんと仲良くなりたいの。気にしてないって言うけど、あれ以来あんまり話さなくなったよね? 私達。」


悲しそうな表情で彼女は、俯く。


それは…確かに。でもそれは、2人の仲を邪魔しないようにしてるだけで…他意はないよ。


「俺からも頼む。彼氏としては、友達が関係悪化しちゃうのは、嫌なんだ。」



拒否出来ず…そうして今に至る。


今カフェで、アイスを頼んだ。まぁ今日は、少し暑いからね。


「明くーん、アーン」

泉ちゃんがスプーンでアイスを掬い、彼氏に食べさせた。


「美味しい〜。ありがとう泉。」

明君がお礼を言う。


「良いの。じゃあ〜次に私に食べさせて?」

彼女が笑顔を彼氏に見せて、口を開ける。

まさにラブラブを私は見せつけられている。


クソが…こんなもん見せんじゃねーよ。

でも…泉ちゃんの表情を見ると恐ろしくなる。彼氏に微笑んではいるが、目がまったく笑っていない。


こぇぇな。なんつー女よ。

私はブルっと体を震わせた。


そんな泉ちゃんの様子をガン見していて、目が合ってしまった。


やば、見てたの気がつかれた。


すると泉ちゃんが、私に笑顔を向けた。目が…笑っている。


おまえっ、どんだけ私が好きなんだよ。やはり明君狙いじゃなくて、私を釣る為に明君は餌付けなんじゃと勘ぐる。


私はその笑顔に、苦笑いで答えた。


「む〜紬ちゃん、不快な顔してるぅ。笑って? 紬ちゃんの笑顔見たいな。」

残念そうな表情それはまるで、犬がお預けを食らった様な、なんとも言えない雰囲気を漂わせていた。


「はは〜さては、俺たちのラブラブなの見て、自分もしたいって感じじゃない? 紬は彼氏作らないの?」

明君の無神経な言葉に苛立ちを覚えた。


いや〜あなたに恋してましたんで、それは私の心を抉るんだけど。


「明君、紬ちゃんは、彼氏作らないとかじゃないの! 相応しい人が学校にいないから、作る気も起きないの。」


泉ちゃんが急に明君を叱る様に言った。どしたどした? 私は戸惑いを覚えた。


「悪い、そうだな。泉の言う通りかもしれないな。」

ちょっと引き気味に明君が頬を膨らませて、目を泳がせた。


「本当だよ。紬ちゃんなら、彼氏なんて作ろうと思えばすぐだよ? 釣り合う人が…でも明君なら釣り合うね。それぐらい明君は、素敵だから、フフ。」


「なんだよ。参ったな。泉は、変な事言うなよ〜。」


「満更でもない癖に〜。」

泉ちゃんが肩で明君を突いた。


2人だけの世界入りやがって。何を見せられるんだ私は。はぁ〜泣きそう…帰りたい。


「そうだ…紬俺たち2人からの、ホワイトデーのプレゼント。」


「2人? 私明君にしかあげてないよ?」


「ああ、そう言う意味じゃなくて、クッキーなんだけどさ、泉と2人で作ったんだ。」


ああ、そう言う事。私は明君からプレゼントを受け取りお礼を言った。


それから適当に周辺を周り、帰路につく直前泉ちゃんが耳打ちをした。


「今日は紬ちゃんとデート楽しかった。また誘って良い?」


ん? 何言ってんのこいつ。いつも変な事ばっか言うな。


「泉ちゃん、明君とデートでしょ? 私とじゃないよ?」


「明君と紬ちゃんとデートだね。」


びっくりした。これで明君って誰? とかジョーク飛ばされたら、裸足で逃げ出したわ。


「もう懲り懲りだから、正直言うと、明君とあんたのラブシーンは勘弁。だから私誘うならせめて泉ちゃんと誰か違う人にして。」


苦しい感情を彼女に伝えた。


「ごめんね、紬ちゃん。私に嫉妬してるんだね? 

分かった今度からそうするね。」


何か引っかかる言い方ね。まぁ良いか。


「おーい、2人で何話してんの? 俺仲間外れ?」


「明君のこと2人で話してたんだ。内容は女子の内緒ってことで。」


泉ちゃんが唇に人差し指を当てた。

それを聞いて、明君が恥ずかしそうに頭を掻いた。


「あー、私…財布落としたかも。飲み物買おうかなとポーチ見たら、入ってない。」

泉ちゃんが青ざめて言う。


「マジか? やっばいな。どこで落としたか心当たりある?」

明君が心配そうに聞いた。


だが、私は知っている。こいつが財布をポケットに入れてたのを…相変わらず天然だなぁ。


「ポケットに入れたでしょ? も〜うあんたは。」

呆れて言葉もでないよ。やれやれ。


「あー本当だ! 紬ちゃんありがとう。私の事凄い見てくれてるんだね?」


勘違いすんな。


「はいはい、さて帰るとしますか。」


私は泉ちゃんを相手にせず、そそくさと1人帰って行った。

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