第7話映画館での告白

「それはないと思う。ごめん」


「私が女だからですか?」



「うん、やっぱりそれが一番大きい理由かな。泉ちゃんは正直可愛くて、性格も愛らしくて、男の子なら、誰でも好きになると思う。でも、私は女の子好きにはならない。」


「そうですか、でも性別じゃなくて私を見て欲しい。そんな性別の垣根なんて超えて欲しい。」

泉ちゃんが自らを手で指して言う。


「でも女の子好きなのに、男の子と付き合っても、考え捨てられないと思うよ?

女の子と付き合えば良いじゃん。」


「違う! 女の子が好きなんじゃない!

紬ちゃんが好きなの!」


何度も泉ちゃんが私に好きと言う。周りに聞こえないか、知り合いがいないか、私はあたりを見回す。


「私紬ちゃんが好き好き好き好き。すきだから、明君と付き合って、紬ちゃんの為にこの考えを捨てるの。

だから、友達を辞めるのだけは、して欲しくない。」

物凄く悲痛な心の叫びまで、聞こえてくるほど、彼女の声が心に響く。


ちょっと待ってよ、めっちゃ告るやん。明君が気の毒になる。当て馬見たいな。けど、私を好きな気持ちを捨てるか。


はぁ〜もう2人の交際認めるしないじゃん。そんなの。


「分かった、友達は辞めない。2人の交際も認める。けど、なんでそこまで私の事好きなん? 何か理由でもある?」


「紬ちゃんが、私より可愛くて、魅力的で世界一可愛から。性格も男勝りで、とっても賢くて、頼りになって、私のタイプだから。それでいて、宇宙一優しくて、たまに突き放してくるところが、好き。それから…」



「ちょっと、恥ずかしいわ! もうええて。ふぅ〜。」

これ永遠に続くのかと思った。

世界一可愛いって、あり得ん。大体泉ちゃんのが可愛さで言えば、結構負けてるし。優しいっても、泉ちゃんとどっこいだし。


しかし止めなきゃ続いた。


「紬ちゃんの面白いところが大好き…ううん、愛してる。」


泉ちゃんが、めっちゃ恥ずかしいこと言ってんのに、言いきって満足しとる。幸せな表情してからに。


聞いてるこっちが恥ずかしいってどゆこと?



「あのね〜泉ちゃんが思ってるほど、出来た女の子じゃないからね? ひょっとしたら、明君の事であんたに嫌がらせとかするかもよ?」


とは言ったものの、しないから言った。少しは脅し返してやるかと思った。


ジグソーパズルの様に複雑な彼女のそれを、私だけが簡単に解ける。


でも逆は、ないだろうと思っていた。

私の方が複雑なのよ…と。


「しないから付き合うんだよ。むしろ、嫌がらせして欲しい。紬ちゃんを嫌いにさせて欲しい。紬ちゃんが欲しい…なんてね?」


最後の台詞〜欲しいとか…それにしても、照れ臭そうな泉ちゃんの表情のなんと可愛い事よ。女子の私でもドキッとする。


「はぁ〜その気持ち良く分かったから。明君と付き合って無くなれば良いと思うけどね? ただその気持ちを無理にさ、捨てようなんて思わず大切にして、だんだんと薄くさせていけば良い的なね。」


「まぁ上手く言えないけど。」


「それって紬ちゃんと最終的には、付き合えるって事?」


「ちゃうわ! なんでそーなる!」


「違うの? 優しい言葉は、今の私には、つらいってば。」


「本当は、明君と付き合いたいわけじゃないんだよね? 私と付き合いたいんだよね?」


ここがややこしい。どうしてこんな事聞いたのかな?

聞いた所で、何にも出来ない。もうそっとしておいた方が良いのにな。


「うん、それはそう。紬ちゃんと本当は付き合いたい。けどそれは…無理なんだよね?」


この問いに無理。と前回も答えた気がする。

今回も…ほんとに無理なのかな?

えっ? ヤバいな…無理と断言出来ないや。


「それは、将来の事は分からないよ。」


「それって、可能性ある?」


えらく突っ込んでくるなぁ。分かんないよ!

もう。


「なんとも言えないよー。分からないんだもん。そっちだって、明君の事好きになるかもしれないじゃん?」


「そうだよね。私達まだ、中学生だもんね。」



「そーゆこと。好きな人ころころ変わるんだよ、思春期だからって言う友達もいるし。」


「誰? 私以外に友達いるの?」

泉ちゃん目が怖っ。いるに決まってんですけど?


「うん、いるよ。泉ちゃんだっているよね?」


「いないよ? 紬ちゃんの…ごめん。ちょっと今日の私変だよね?」


いつも変だけど…今日は確かに特に変だね。と心で思いながら、それは伏せる。


「しょうがないよ。恋のなんだ? 恋の悩み…そう恋煩いって奴? 普通だよ。泉ちゃんは、悩んで、苦しんでるだけ。」


「紬ちゃん、優しすぎる〜ばかばかー。」

泉ちゃんが軽く両手をグーにして優しく、私を叩く。


「あんたは可愛いすぎる〜ばーかー。」


最後は2人で笑って、私たちは納得して帰路についた。

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