第6話恋の葛藤

「そんな…どうしてそんな条件。明君と別れてって、私が言ったらどうするの?」

泉ちゃんを問いただした。


一体泉ちゃんは、何を考えてるの?  

絶対明君にお断りの返事すると思ったのに、OKの返事をするなんて。

頭に何度も何故と言う言葉が浮かんだ。



「私と付き合うつもりもない癖に、別れてって、無責任だねって言います。実際私孤独なんです。明君と別れて、明君が紬ちゃんと付き合う事になったら、何するかわからない。」


なるほど、ヤキモチか。私と明君が付き合わない様に、それで無理して、付き合ってるのか、ははーん。

そう私は軽く考えた。


「この事私が、明君に告げ口するかもしれないのに? それで何するかわからないって脅し?」


そんな脅しには屈しないから。それにもちろん、告げ口はしない。惨めたらしい事をするほど、私は嫌な子じゃない。


でもそう言わないと、脅しに屈してしまう。そう考えた。


「紬ちゃんが告げ口なんてする訳ない。そんな人を好きになんてならないです。絶対にしません。命掛けていいです。」


私の事…理解してるんだ。それならなんで、私の好きな人と付き合うの?

私にもっとアプローチすれば良い…けど、それに冷たく断ったのは、私だ。


それでも、私達の仲で明君は、関係ない。彼を巻き込まないで。



「…そんなに私のこと思ってる癖に、私の好きな人と付き合うなんて! おかしいよ、明君も可哀想だよ。そんな利用する真似。」



ヤバい…この状況。正直穴があったら入りたい。逃げだしたい。

けど…聞かなきゃ…これは聞いておかなきゃ、いけない事。


明君を奪われた怒りで言ってると思うと、彼女に八つ当たりしてるのでは? 

そう思うと惨めで恥ずかしい。




「利用じゃないです。助け合いです。私の寂しさを明君が埋める見返りに、私が笑顔で答える。紬ちゃんがしてくれないから。」


恋は人を強くするって言葉があった。1ヶ月前の泉ちゃんとは、別人だ。ドジなところがあって天然で、賢くはなかった。


けど今の泉ちゃんは賢くて、私の言い分に対して、言い返して来た。


実際彼女の言い分は、間違ってない。私と付き合う為に、明君を利用する訳じゃないなら…ね。


「分かった。でも好きな人を…明君を取ったんだから、私はもう泉ちゃんと仲良くは出来ない。それで良いよね?」


情けない。自分がまるでいじめっ子の様に駄々を捏ねてる。

そう思っても口から出るのは、彼女を責める様なことばかりだ。


「取ってないですよ。向こうから好きって言われたんで。それに紬ちゃんそれって、無視するとか?」


泉ちゃんの意見は尤もだ。彼が先に告白した。

泉ちゃんからじゃない。

これは、彼女を責めあぐねる最大の、理由だ。



「私それでも紬ちゃんに話しかけるよ? 紬ちゃんが私を無視する姿をみんなに見せたら、紬ちゃんが、酷い人って見られると思う。」

泉ちゃんが更に言葉を重ねる。


私を見る目が恋してる乙女だ。残酷だ。私も泉ちゃんを好きになれれば、楽なんだけどな。


「それでも構わない。無理。それとさ、私が付き合うから、明君と別れてって言ったらどうするの?」

少し怒りの感情を込めて言った。


「落ち着いて、紬ちゃん。そんな事、紬ちゃんは、絶対に言わない。だから明君の返事に答えたの。紬ちゃんなら、明君にも話しつけるって言うもん。」



「正直そうして欲しい。明君から私を奪って欲しい。でも…そんな事あるはずないよね。」

泉ちゃんが悲しそうに言う。


悲しいのは、こっちだよ。

どうしよう…これから。


映画館の静かな雰囲気で私はこれからの事、そしてどう答えるかを深く悩んだ。

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