第13話 決断

 「あの〜原咲さん?俺今日ベース持ってないんだけど....」


 「音楽室に吹奏楽部のがある!...と思う」


 「確認はしてないんだ....」


 この子結構大雑把だな、やっぱりクラスに居る時と今じゃだいぶキャラが違う。どっちかっていったらこっちのキャラの方が原咲さんの素って感じだ。


 ♢


 「やっぱりあった!」


 準備室からアンプとベースを持ってきた原咲さんはそう言って笑った。


 「あったんだ、じゃあやる?セッション」


 「うん」


 僕はベースのストラップに頭を通し、チューニングをした。原咲さんも同様ドラムの席に座り、チューニングをした。


 「じゃあ私適当にドラム叩くから合わしてきて」


 「分かった」


 僕はアンプの電源を入れ、GAINやVOLUME、BASSを調整する。スタジオと同じアンプだったので音はいつも通りのものにできた。


 「よし行くよ」


 原咲さんはエイトビートを叩き始めた。比較的に簡単にできるものだが原咲さんの音はなにか違う。


 同じ8ビートでも演奏する人によってそれぞれの個性が出る。それをグルーヴと呼ぶらしい、音の中には演奏する人の人生や感情、経験がでる。原咲さんのグルーヴは一寸の狂いもなくなものだった、だがどこか音に迷いがある。



 本当の原咲さんの音を聞きたい。そう思った



 「原咲さん、」


 「良いんだよ。俺の前では気を使わなくて.......原咲さんの本当の音、聞かせて?」


 口が勝手に動いてしまった。しかし原咲さんは何も言わず小さく頷いてくれた。


 同じ8ビート、でも先ほどとは違う。現在の原咲さんのグルーヴは好奇心旺盛、だがその中に繊細な優しさがある音に変わった。


 「樹下くんも早く入ってきて」


 そう言われて気づいたが今はセッションをするのだった、原咲さんの演奏に惹かれすぎた。


 僕はべースを弾いた。音に合わせて。


 初めはペンタトニックスケールをなぞった。9フレットから14フレットあたりがうまく音にハマったのでビートが安定してきた。

 

 そこから俺はスラップなどを入れながら、原咲さんもアレンジを入れながらセッションした。


 ラストは俺のソロで終わらした。


 「やっぱ上手だね樹下くん」




 「原咲さん。俺入部する」


 会話をするわけでもなく俺はそう答えていた。




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