第9話 原咲視点②
「んぅ〜.....」
「おはよう、原咲さん。」
「ふぁ〜、おはよう。樹下くん」
「いま朝ごはん作ってるから顔洗ってきていいよ。服はこれだね、はい。」
「なにからなにまでありがとう。」
「ううん、全然大丈夫。」
起きるとそこは見慣れない天井だった。そうだった、今私は樹下くんの家に泊まらしてもらっているんだった。
「なんで私樹下くんの家にいるんだっけ?えーっと確か....」
昨日の出来事をまとめていたら何やらいい匂いがしてきた。そういえば先程、樹下くんが朝ご飯がどうとか言っていた気がする。
実は昨日からお腹がすごい減っていた、ハンバーグ定食だけでは私の胃の中にいる猛獣は満足しなかったらしい。
とりあえず顔を洗うことにしよう。
歯ブラシはまだ使っていないホテルのアメニティのものがあるのでそれを使っていいとのことだった。洗面所に着くと樹下くんが使ったと思われる黒い歯ブラシと、ピンク色の歯ブラシがあった。
ズキン
ズキン?何.....これ......まるで針で心を刺されたような......こんな感情は知らない。これが世間一般でいわれる嫉妬?というのだろうか.....
「!」
ないないないない。だって樹下くんはまだ少ししか話たことないクラスメイトだし、まだ樹下くんのこと全然知らないし、でも私のこと助けてくれたし、今だって助けられてるし.....
うぅぅぅ〜
とりあえず冷静になろう、私。少し興奮しているだけだ。それにあれは女の人の物と決まったわけじゃない。
それより早く支度をしないと遅刻してしまう。
♢
「「いただきます」」
今日の朝ごはんは樹下くんが作ってくれた。白米、味噌汁、だし巻き卵、サバの塩焼き、いかにも日本!って感じの朝ご飯だ。
テーブルに並べられた食べ物たちはまるで宝石のように輝いていた。(お腹が空いているだけ)口に運んでみると全て美味しかった、樹下くんは天才だ。私が料理をするとなぜか炭ができてしまう。特に卵焼きは絶品だった。
「美味しい!」
「特にこの卵焼き!自分で作ったんでしょ?すごいよ!」
「そ、そうかな?ありがと。」
褒められて嬉しいのか樹下くんは少し頬を赤らめ笑ってくれた。
♢
「「ごちそうさまでした。」」
「洗い物するからお皿ちょうだい。」
「洗い物なら私やるよ?私も一人暮らししてますから」
泊めてもらった上にご飯まで作ってもらったので何か恩を返さないと落ち着かない。
「そう?じゃあお言葉に甘えようかな。」
「うん、そうして。樹下くんはゆっくりしてなよ」
「ありがと」
私はそう言ってキッチンに向かった。しかし頭の中は歯ブラシのことでいっぱいだった。
♢
「樹下くん、洗い物終わったよ。」
「へ?あぁ、ありがとう」
樹下くんは熱心に占いを見ていた。そういう子供っぽいところ可愛い。
「じゃあ、そろそろ学校行きますか。」
「そうだね、本当に何から何までありがとね!この恩は絶対に返すよ、」
「まぁいいよ別に、それより早く行かないと時間結構やばくない?」
「うわ!本当だ、急ごう」
樹下くんと二人で玄関に向かう。
ガチャ
「お邪魔しました、そして行ってきま〜す」
「うん、僕も行ってきます」
「じゃあ行こっか、学校」
「うん」
樹下くんと一緒に登校する。いつもより足が軽いのは気のせいだろうか?
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