第10話「自分、大自然感じに行きました!」

ある日、ガロウに連れられ山を登り始めた。


「一体なんだってんだよ、急に山登るぞなんて言い出してよぉ」


「まぁまぁ、それよりちゃんと飯は持ってきたんだろうな」


「あぁ、林檎を今回は奮発して20個もな」


「持ってきすぎじゃないかそれ」


「飯持って来いって言ったのはお前だろガロウ」


「そりゃそうだが・・・お、そろそろ見えてきたぞ」


どうやら山の山頂に着いたらしい。ガロウは持ってきていた椅子設置し、テントを張りながら言った。


「おい、見てみろよ周りの景色をよ。そんなに高くない山だから景観はそこまで良くないかも知れんがな」


辺りを見渡しても何一つ思うことは無い。おそらく、これが人間の言う綺麗、美しいという光景なのだろうか?だが、モンスターの俺には分からなかった。


「今日はここに1泊しようと思う。夜になるとまた違った景色が見れるからいいぞ」


「お前、こんな趣味を持ってたんだな」


「そりゃ1つや2つくらいあるさ。ま、これに関してはここ最近出来た趣味だがな」


「度々1人で何処かに行っていると思ったらそういう事だったのか」


「まぁな。こういうのを見たくなるのは歳だからかねぇ、街を抜け出して度々大自然に触れたくなるものなのさ」


「自然は触れられる物なのか?」


「触れられるものもあればこうやって見るものもある。楽しみ方は人それぞれってやつだ」


「ふぅ〜ん・・・」


ガロウの用意した椅子に腰掛け、景色を見る。やっぱり何も感じるものは無い。だが、ガロウは微笑みを浮かべて茶を飲んでいる。楽しいことかのか?これは。そう思いつつも林檎を1つ袋から取り出して飲み込んだ。


「ここは大草原だから敵も弱いし寄ってこない、それに登りやすい。絶景のビューポイントってやつだ。あんしんしてゆっくり出来るぜ?」


「何言ってんだ、最近はゆっくりしてばっかだったろ?」


「あれ?そうだったか?いや、そう言われればそうかハハハッ!」


「・・・お前は今楽しいのか?」


「あぁ、最高に楽しいぜ。お前と一緒に、自分の趣味を堪能できてよ」


「そうか、ならいい」


こいつがそう思うならそれでいい。そんなふうに思った。・・・昔の俺だったらそうは思わなかったのだろうか?俺も少しは変わったのかもしれない。そう思いながらボーッとしているといつの間にか日が暮れ、星が輝きだした。


「この星空もいい感じだろ?」


「ただ光ってるだけにしか見えないが?」


「まぁ、いずれお前にも分かる日が来るさ」


「そうか」


分かる日が来るのだろうか、景色を見て美しいと、綺麗だと分かる日が来るようになるのだろうか。そうなった時、俺は人間のようになるのだろうか?見た目だけではなく、中身も・・・


「さて、そろそろ寝るとしようぜ相棒」


「ハハッ、お前が俺を相棒と呼ぶなんてな。今日は初めてのことだらけだ」


「良かったじゃねぇか、初めてなことは新鮮みがあっていい慣れちまったらもう二度と感じられないからな」


「そういうもんかね」


「そういうもんだよ」


ガロウのテントに入り、雑魚寝しながら目を閉じた。本当に今日は初めての経験ばかりだった。


「たまにはこういうのも悪くはないかもな・・・」


そう呟いて眠りについた。

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