第9話「自分、ダンジョン攻略します!」
本来はガロウと行くはずだった依頼を念の為、ガロウを残して一人で行くことになった。その依頼は、沼地のダンジョンの最深部にあの勇者の装備が隠されているから取ってきて欲しいとのことだった。
「あまり無茶するんじゃねぇぞ?無理そうならすぐ帰ってこい」
「大丈夫だって、安心しろよ、俺は今レベル80もあるんだぜ?こんなのちょちょいのちょいだっての」
「いいから、あんま無茶すんな」
「はぁ、分かったよ。無理そうなら帰ってきますよ〜っと。んじゃ行ってくるわ」
「おう、行ってこい」
ガロウに軽く手を振りながら我らが故郷、そしてダンジョンの奥深くへと潜っていくのだった。
「うっわ〜このジメジメ感超懐かしい〜」
思い返せば俺はこういう場所で暮らしてたんだよなぁ・・・懐かしい。こういう場所で冒険者に怯えてプルプルと・・・いや、ガクガクとだったか?今となっちゃ記憶が混ざりすぎてよく分からなくなってる。まぁ、そんな昔のことは今はいいだろう!今は勇者の遺品探しだ!高レベルだからか、それとも同じモンスターだからか一向にモンスターが襲ってくる気配はない。スルスルと奥深くへと下って行ける。
「いやぁ、楽なもんだなぁ・・・これが強者の、いや最強のオーラってやつですか」
そんなことを言っているといつの間にか最下層へ辿り着いていた。
「ありゃ?もう最下層か。案外早かったなぁ・・・」
「ようこそ裏切り者。そしてさようならだ」
いきなり振り下ろされた鎌を軽快に避け、後ろに下がる。
「現れたな?スケルトン界最強のモンスター、スケルトンキング!」
闇の中からゆっくりとその姿を現す。・・・超かっけぇ・・・俺もやりたいそのヌッって出てくるやつ。
「さて、裏切り者がなんの用かな?死にに来る以外には考えられんが。」
「いやいやまさかそんな。ここは1つ話でもしようや」
「話?話だと?笑わせるな、貴様と何を話すというのだ?」
「勇者の遺品について」
その時、スケルトンキングの様子が変わった。先程までの殺気は消え、こちらのアクションを待っている。
「その様子からして、何か知ってるな?」
「知っていたとして貴様に何の意味がある」
「おおありさ、なんてったって、依頼だからな。」
「依頼、だと?」
「そう。俺はその勇者の物なんかには興味はねぇ。だが、人間はそうはいかねぇらしい。一子相伝とか家宝とか何かそういう感じのやつだよ。次生まれ来る勇者の為に回収しときたいんだとさ」
「次の勇者、か・・・」
スケルトンキングは闇に手を突っ込むと、装備品らしき物を取り出し俺に投げつけてきた。
「それが勇者の遺品だ」
「案外素直に渡してくれるじゃねぇか」
「・・・私には価値のない物だからな。持っていても仕方がない。それに、それを求めて人間達がわんさかと押し寄せてくるのも煩わしい。ただそれだけだ。」
「あっそ、んじゃ有難く頂戴していくぜ」
「待て」
「んだよ」
「貴様は今、人間と共に行動していると聞いた。何故だ?」
「ただの利害の一致、だだそれだけ」
「本当にそうか?」
「何が言いたいんだよ」
「いや、何も。さぁ、とっととそれを持ってここを出ていけ」
「言われなくてもそうしますよ〜っと」
持ってきていた袋に装備品を詰め込んで出口を目指して走っていく。スケルトンキングはその背を見つめながら昔を思い出していた。
「(ぉ〜い、お〜い!ケストン!こっちだこっち!!さぁ早く行こうぜ!)」
「・・・本当に短い間だったな、人間」
スケルトンキングはそう呟くと再び闇の中へと姿を消した。
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