第8話「自分、初看病の巻!」

「ゴホッゴホッ・・・すまねぇ、どうやら風邪引いちまったみてぇだ・・・」


「人間ってすぐ病気にかかるんだなぁ・・・大変だな」


「あぁ、そういう生き物だからな。悪いがしばらくは冒険もナシだ」


「は?ということは収入も?」


「ナシだ、ゴホッゴホッ」


ガーンッだな・・・これは由々しき事態だ。林檎が食えなくなるのはまずい・・・非常にまずい!何とか出来ないものか・・・そこで閃く天才モンスター。治癒魔法があるじゃん!・・・と、スキルを見てみたところ、戦闘向きなスキルばっかで治癒がゴミみたいなものしかない。正確に言えば、超初期からあるような治癒魔法しかない。というか、あっただけ凄い。焼け石に水かも知れんがこれをガロウにかけよう。すぐさま治癒魔法を取り、ガロウにかける。


「お前、治癒魔法なんか使えたのか・・・ビックリだわ」


「おう、俺もびっくりだ。でも、安心するのはまだ早い。何せこの治癒魔法、初級も初級、超初級の治癒魔法だからな。風邪に効くかも怪しい」


「でも、少し楽にはなった気がするぜ?プラシーボ効果かも知れねぇけどよ」


「まぁ、念の為休んどけよ」


「あぁ、そうさせてもらうよ」


ガロウは疲れてたのか、すぐに眠ってしまった。まだ少し顔が赤い。看病のやり方はよく分からんが、とりあえずビッチョビチョに濡らしたタオルを顔に乗せとくといいということは知っている。そんなわけで、顔に乗せてみたが、ガロウは寝苦しそうにしている。・・・何か間違えたか?とりあえず、このビッチョビチョのタオルを絞ってみることにした。絞って帰ってくるとガロウは顔以外も濡れていた。頭とかもビッチョビチョになっている。さては、塗れたタオルよりも乾いたタオルの方がいるな?すぐさまもう1つタオルを取り出し拭いてやる。体とかも拭いてやった。俺はなんて優しいモンスターなんだろう。プルプル震えてた頃が懐かしいぜまったくよぉ。ガロウの顔を見てみると少しはマシな顔になっていた。どうやら効果があったらしい。こんな七面倒なことをしないと良くならないなんて本当に人間ってやつは弱いなぁ・・・むしろモンスターが頑丈すぎるのか?とも思ったが、モンスターでも眠りや毒、麻痺とか色々かかったりするなと今思った。


「モンスターも似たようなもんか・・・」


そんなことを口にしながら、気が付くとすっかり暗くなっていた。


「何か今のこいつが食えそうな飯用意してやらねぇとなぁ・・・何があんだ?」


病人食ってやつがよく分からない。だが、俺には多少の知識がある。粥とかいうのも作ればいい。米を何かお湯でベチャベチャにしたやつ!作ってやろうじゃあないの。とりあえず炊き上げた米をお湯にぶち込んでじっくりコトコトやってみた。すると、何かそれっぽくなった。まぁ、こんなもんか、やってみるもんだな!案外簡単に出来たわ、流石は俺。ガロウのところに持っていってやると丁度目を覚ましていた。


「ん、粥か・・・すまんな」


「いいんだよ、これくれぇなんてこたねぇ。あと、ほれ。」


ドンッ!っと林檎を粥の横に1個置く。俺の大事な林檎ちゃん。


「大切に食えよな・・・」


「・・・くれるのはありがてぇんだがよ、せめて皮剥いて切ってくれねぇかな・・・」


「丸かじりが美味いんだろうがよ、四の五の言わずに食え」


「へいへい」


ガロウは粥を少しづつ食べながら笑っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る