第4話 転校生じゃない?

山奥の寺は、時空寺という。見たこともないし、どうやら普通の人間には見えないようになっているらしい。


アルベルト「キキ様、すみませんがあまり時間がありませんので手短に説明させていただきます。


この状況を説明している暇はありませんが、今から言うことをよくお聞きください。


あなたには素晴らしい力があります。ですが奴らのせいで今は思い出せないでしょう。なのでテスタラントへ行き、本来の力を取り戻してきてください。」


「あ、え?分かったけど、修行してこい的な話?時間の流れが違うから10年おっても1か月くらいしか経たんし、みたいな。」


アルベルト「いえ、修行の必要はないのです。思い出すだけでいい。一日です。数秒から数分でこちらに戻ってほしいのです。」


聞きたいことは山ほどあったが、私は今はそれどころではないと悟っていた。


アルベルト「…流石あなたは、こんな時でも落ち着いていらっしゃる。では!」


私はとっさに目をつむったが、次に目を開けてみるとまだ何も起こっていなかった。


「あ、あの、アルベルトさん。失敗ですか?」


アルベルト「いえ、お帰りなさい。流石です、一瞬でしたね。」


(…はぁ?何も起きてへんはずやけどなぁ…何も記憶ないし。力が付いたような気もせんし…。)


アルベルト「ふふ、大丈夫ですよ、信じてください。成功です。


すみません、あなたが真実を知るにはまだ早い。


あなたがしなければならないのは、高校生活を普通に送りながら、あきと一緒にダークと戦うことです。」


「は⁉え、あいつ私を殺そうとした…てか殺されたし!え、私全身ちぎれたよな。」


アルベルト「はい、ですがもう襲ってきません。学校で彼女に会えばわかります。


一度死にましたが、私が治しました。」


「治した⁉魔法って生き返らせることもできるんか?」


アルベルト「あなたは特別であり、そしてあなたのおかげで治せたのです。」


そう言い、優しい笑顔で私を見つめた。


アルベルト「あ!最後に一つだけ、あきにはテスタラントに行ったことは内緒にしておいてください。」


他は何も聞けないまま、私は家へ帰った。


「ただいま…。」


母「あぁお帰り…ってあんたどうしたん、元気ないなぁ。明日学校休むか?」


「いや、えぇよ大丈夫。お腹空いたな。」


母はお手製のハンバーグを作ってくれた。


「うまいわぁ!ありがとう。」


母「そやろ、なんやあんた珍しくしおらしいやん。あれ…?」


母はぼーっとした顔で私を見てきた。


母「キキ…?いや、ううん、なんでもないよ。」


「なんやねんどうしたん?」


母「いや、なんや一瞬キキじゃないみたいに見えてな。おかしいな気のせいやけど。」


「はぁ?歳ちゃうか、まだボケるには早いぞ。」


そう言い笑いあってご飯を食べ終えた。


(さっきのお母さん、変やったな。いや、私が変なんやろうな。


お母さんには私の変化が分かるんやろか?私にも分からんのになぁ。


というか、ほんまにテスタラントに行ったんか?後で思い出す?


明日あきに会う?ほんまに3年後に死ぬん?)


私は寝る前に最近の出来事を思い出し、久しぶりに一息付けてなんだか安心した。


そしてただならぬ不安で涙が溢れた。


「知らん!もう寝よ…。」


これから少しずつ謎が解明し真実にたどり着くとき、キキはある重要な選択を迫られることになる。そんなことはまだ想像さえしていなかった。


次の日私は学校へ行った。


静「キキちゃん、おはよぉ!土日どっか行ったぁ?」


仲の良いクラスメイトの友達、静が話しかけてきた。


「しず~おはよ。どこも行ってないねん。まぁ行ったちゃ行ったけど…。」


静「ん?なんて?」


「あいや、どっか行きたかったなぁて。しず誘えばよかったわ。」


静「私は勉強しててん。でも昨日は、近所にできたカフェ行ったよ!オシャレやったわぁ。」


あき「あー!それ私も行ったことあるよ!」


心臓がうるさい。顔を見れない。隣にいるのは絶対に…。


静「あ、あきちゃんおはよ!そうなん⁉また一緒に行こうよキキちゃんも。」


なぜだ?普通に静と会話している。前から知っているようだ。


あき「どうしたのキキ?顔色悪いけど、大丈夫?」


(こいつ…何言ってんねん?私を殺したん忘れたか⁉てかなんでしずと仲良さそうなんや?)


「しず、あきのこといつから知ってる?」


静「えぇ?そらあの時…あれ、いつからやっけ?まぁでも結構前から一緒やんか!何言うてんのキキちゃん。」


しずはケタケタ笑っている。状況がつかめない。するとあきは、私に耳打ちした。


「説明する、次の授業受けずに体育館の裏で話そう!大丈夫心配しないで!もう殺さないから!」


こいつは全部覚えている。怒りが込みあげてきたが我慢し、チャイムと同時に教室を抜けて体育館裏に急いだ。


あき「大丈夫!あぁ学校の皆には魔法で私が元からいたと思わせてるよ!


その方が都合いいと思ってさ。転入!て感じで行きたかったんだけどね。


それにしても、しずって超いい子だねー!」


「さっきから、お前、ええ加減にせえよ!どういうつもりやねん!説明しろ!」


あき「はいはいごめんってばぁ、落ち着いて!いやほんと、ごめんね。


どうしてもあの時、確かめる必要があったの!あなたが歪みであれば殺しても死なないからね。アルベルトが来ることも分かってたし!」


えへへ、と笑う顔をぶん殴ってやりたかった。


(ん?やとしても、殺して確かめる必要あるか?殺す前に確信したとか言うてたしな…なんかまだ嘘つかれてるんやろな…。)


あき「まぁ、これから私の相棒になってもらいます!そのうち分かるよ。


そういえば、アルベルトに色々聞いたでしょ?力は戻った?」


アルベルトはテスタラントに行ったことは言うなと言っていた。


あきは敵なのか味方なのか分からない。


「いや…それがようわからんねん。アルベルトには、あきとダークと戦え言われたで。」


あき「そっか!ならさっそく、今日の放課後屋上に行くよ!」









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る