第3話 真実はどこに
私はあきに連れられて、町の教会に来ていた。
産まれてからずっとこの町に住んでいたけど、
こんな場所に教会があるのは知らなかった。
あき「こっちこっち!」
「うわぁ、汚いな。」
教会の中は廃墟同然、銅像も無くただの空き地のようになっていた。
あき「この水、ちょっと触ってみて!」
壺のようなものに、水が溜まっていた。
雨水のような、とても綺麗とは言い難い水。私は言われた通り、水に手を付けた。
手のひらが水に触れた瞬間、全身に電気が走った感じがして身動きができなくなり、怖くて助けを求めようとあきに視線をやると、そこにあきの姿はない。
視界にノイズがかかったようにぼやけ、気が付くとそこは暗闇に包まれていた。
「あき!どこ行ったん⁉なぁ!もうなんやねん…。変なことに首突っ込むんやなかった…。」
?(…で、――ん――そう――…)
どこからか声が聞こえてきた。
暗闇の中に薄っすら光が差し、その光が徐々に広がった。
すると光の向こうから、数人の人がこちらを除いているのが見えた。
「すみません!聞こえますか⁉あの!!」
こちらの声や、姿は見えていないようだった。
私は耳を澄ませ、その人たちの会話を聞こうとした。
(――困ったな。また歪みが酷くなってきた。)
(あぁ。)
(これじゃぁ、どうにもならんぞ。)
(一刻も早くなんとかせねば…。)
「なんや?歪み…さっきあきが言ってたな。私が歪みってどういうことや?アカン分からん…、そもそも歪みって『穴の中の時空の歪み』って話ちゃうかったか?解釈違いか?」
私はブツブツと考えをまとめようとしたが、何も分からなかった。
あき「キキ!」
あきの声と共に元いた場所に戻っていた。
「…今のなんやったん?なんか人がおって、こっち見ながら歪みの話してたで。」
あき「うん、見せた方が早いと思ってさ。キキが見てたのはね、私が元居た世界!10年前のね。」
「え?てことは、1000年前か?昔の録画的なもん?」
あき「うーん、まぁそんな感じかなぁ。というか10年前から止まってるんだ。
キキがさっき見たのはね、穴の中の歪みで、それを覗いてる教祖達だよ。」
「私穴の中におったん⁉」
あき「そう!ちなみに私には見えない。これで確信した。」
あきは今まで見たことがない真面目な顔をして、続けた。
あき「さっきの水はね、聖水みたいなもの。私は穴の事を説明したよね?穴って言っても、落とし穴みたいなものじゃない。さっきキキが見たでしょ、ああやって聖水から歪みに繋がっているの。
本来ダーク以外の人間は水に触れた瞬間に酷い酔いに襲われて弾かれちゃうの。
人間が唯一穴を通る方法は、神父に殺されて聖水をかぶる。私達がされたようにね。そう望まれたし、私達も望んだこと。」
「そう、それでなんで私が?」
あき「歪みそのものなのよ。キキはね、なぜか穴【ホール】と発生した。」
「いやいやいや、私は人間やし、ちゃんとお母さんの腹ん中から産まれてきた!」
あき「…分かってる。でもそうじゃないの。確かにそれは本当、人間だよ。
でもね、この世界に産まれる前に、あなたはホールと同時に歪みとして発生した。それが突然姿を変えて、この世に人間として産まれたの。」
「…待って、あんたらと私が同い年なんって…。」
あき「うん。私達の転生が原因だと思う。それによって何かが変わってしまった。まだそこがよく分かっていないの。」
「それで、さっきの映像?はさ、なんで10年前から止まったん?」
あき「消滅したの。世界が。」
「え…3年後じゃなかったん?」
あき「教祖様だけが生きてる。今はもう向こうの世界【テスタラント】は無い。」
あきの話は思っていた以上に複雑だった。テスタラントとこの世界は、ホールの歪みで繋がっているが、時間の進み方が違う。
テスタラントの100年は、こちらで1年。
その違いによる歪みだと思っていたが違うらしい。そして10年前、テスタラントで1000年も前に何らかの原因により消滅。
しかしこの世界からテスタラントに戻る時、テスタラントではこちらの世界と同様の時間の進み方をしてたことになると。
つまり今戻れば、あき達が『転生してから17年後のテスタラント』に戻れる。
3年後とは、歪みの寿命があと3年だと、教祖が神から信託を受けたと。
あき「そ、歪みが使えなくなったら元も子もなくなるんだよねぇ。ちゃんとした方法で塞がないとだめだし、ややこしいよねぇ。」
あきは淡々と、続けて言った。
あき「だからさ、キキ。あなたには死んでもらわないと!」
――エクスプローション!
その瞬間、私は宙に浮いた。一瞬だった、これが死なのか、何が何だか訳も分からずに凄い爆発音とともに全身が弾け飛び、自分の肉片が散っているのが見えた。
だが気が付くと、私は空を飛んでいた。
「うぐっ…おえぇ…あれ??い、生きてるし!え⁉飛んでる⁉」
?「大丈夫ですか?あぁ良かったニライよ。間一髪、ギリギリでした。」
「⁉ちゃいますよ、キキです!」
アルベルト「そうですか、人間のあなたはキキとおっしゃるのですね。私はアルベルトと申します。ではキキ様、とりあえず逃げますよ。」
「あ、あぁそう…。」
(アルベルト?外国人か?)
多くの疑問を残したまま、あきは私を殺そうとした。
でも私が歪みそのものなら、今殺すのはまずいんじゃないか。3年後にどちみち私は死ぬはず。そういうことではないのか?
私はアルベルトという男に、ある山奥の寺に連れてこられた。
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