第5話 敵か味方か
――ドッッッカーーーーン!!(爆発音)
「おいお前それやりすぎやろ!ビル壊れたやんけ!」
あき「もうキキ!!うるさいよ!魔法で後で元通りにするから!」
「う…もうええわ。で、次どうしたらええねん!」
私はあきに戦闘訓練を受けていた。あれから2週間毎日、あきが時間を止めて近所の空き地で訓練していたが、やっとできるようになったのは飛行と基本的な身体強化で打撃系の攻撃だけ。
今日は街に出て実際を想定した訓練だ。
あき「さっき連絡が入ったから、いよいよ実践だよ!気合い入れてよね!」
「いや!私まだ全然無理やと思うけど!」
あき「大丈夫!あと実はさ、基本魔法はこの道具がないと使えないんだぁ~。」
そう言い、タバコの箱サイズの棒のようなものを渡してきた。
あき「使い方はね、そこのボタンを押して『オープン』って唱えるだけ!試しにやってみて。」
私は言われた通りやってみた。
「…お、オープン!」
そう唱えると、長い杖に変身した。
(あ、これ前にあきが跨ってたやつか…。)
あき「それに跨ると魔力なしで空も飛べて便利だよ!魔法を使いたい時に、使いたい種類の魔法を唱えればOKだからね。
状況に合った形で魔法の形も変わるよ。」
水、雷、炎タイプの3種類の呪文を教えてもらっていた。
「分かった。なんか、結構可愛らしい感じなんやな…。」
その杖は、アニメなどで憧れた感じそのものであった。
最初こそこんなイメージだったが、色々知ってから色んな意味で合っていない気がする。
そんなこんなで、ダークが現れるという場所にやってきた。
あき「どこかにいるはず。時間停止させてみよう。」
空から街を見渡して、ある違いを探す。時間が止まっている中で、私達以外に動いている奴がダークだ。すると目の前を何かが通り抜けた。
「おいあき!」
あき「うん、いたね。あっちに行った、追いかけるよ!」
あきに着いていき広めの駐車場に降りた。
あき――エクスプロージョン!
あきはいきなり魔法をぶっ放した。強い揺れによろめいて、煙の中から人影が見えた。
「あき!人がいる!攻撃すんな!」
あき「違うよキキ!あれがダークだよ!」
私は勝手に大きな怪物を想像していたから、とても動揺した。
私達と同じ人間の姿をしている。よく見ると右目だけが赤く、黒い戦闘服に身を包んでいた。
あき「キキ!早くステッキを使って!キキ!」
少しの間呆然と立ち尽くしてしまい、一瞬自分が何をしているのか分からなくなった。
ダーク「ははははは!なんだあき、そいつは新しいお仲間か?随分と雑魚そうだが・・・⁉」
驚いたように私を見て、突然ひざまづいた。
ゲルト「ニライ様・・・。無礼をお許しください。お会いできる日が来ようとは…大変光栄です。申し遅れました、ゲルトと申します。」
「え?あ、キキです。」
ゲルト「そうですか…キキ様とおっしゃるのですね。」
ゲルト「はい、そうですね。喜んで。」
(何を言ってるんや…?)
ゲルトは持っていた武器を置き両手を広げた。
あき「キキ!魔法を使って!そいつを殺して!」
私は目の前の敵がどうしても、悪い奴に思えなかった。
正解が分からない。
「でも、こいつはもう、戦う気ないで!殺されへん!」
あき――エクスプロージョン!
私に敬意を払っていた目の前の敵は、あきの攻撃で全身が粉々にはじけ飛び、
散った肉片と血が私のからだ中に付着した。呆然としていた私は徐々に
我に返り、同時に強い吐き気を催した。
「う…オエェッッ、う…。」
最後は確かに、ゲルトは微笑みながら涙を流していた。まるで、こうなることを
望んでいたかのように。
あき「あいつは、ああやって油断をさせてから襲ってくる卑怯な奴なの!
だからね、心配しなくて大丈夫。何も心配しなくていいから。」
そういいながら私の背中をさすっていた。あきの言っていることは
本当なのだろうか?それにゲルトは、私をニライと呼んでいた。
そう、アルベルトも同じ呼び方をしていた、何か関係があるのか。
深く追求してはいけない気がしてそれ以上聞けなかった。
絶対にあきは私に嘘をついている、そう確信はしたがどうしてかあきは悪い奴ではないとも思えた。
その後1か月かけて数体のダークを葬ったが、ゲルト以外のダークは敵らしく私も問答無用に攻撃してきた。
静「キキちゃん、あきちゃんも、放課後一緒にカフェ行かへん?」
学校の昼休み、いつものように3人でランチをしていた。
あき「いいね!でもしずちゃん勉強はいいの?」
静「うん、今日は久々に二人と遊びたいなぁ思って。どう?」
しずは基本的にテスト前以外も勉強している。優等生は凄い。
「いいやん、行こう!」
ここ数日ダークの気配はなく、あきも乗り気だったので行くことになった。
放課後になって近所のカフェに来た。
「えぇ!でか!このパフェ!」
あき「私甘いの大好き!この大きさなら10個は食べれるよ!」
静「あきちゃん食いしん坊やなぁ、でも私もここのパフェ大好き!」
こうしてみると本当に、普通の高校生だ。私はいつの間にかあきとも随分仲良くなっていて、ダークとの戦いも慣れて楽しく過ごせている。
だけどずっと、心の奥で何かがつっかえるような気持ち悪さがしていた。
楽しく3人で他愛もない会話をし、あきと別れた後で久しぶりに静と二人で帰っていた。
静「嬉しいわぁ。」
ふんわりとした笑顔でそう言った。
「どうしたん?なにが?」
静「いやぁ、こうして二人でゆっくり話せるの久々やん?こうして二人で帰れるのもいつぶりやろなぁって。」
静「あきちゃんが来る前なんて、ずっと二人やったやん?ちょっと寂しい気もしたり。あれ…?そういえば、いつから3人で遊ぶように
なったんやっけ?」
「しず…。」
私は何を言えばいいか分からなかった。
寂しいと思ってくれていたのか、申し訳ない。でも少し嬉しかった。
静「まぁええわ、それに最近、キキちゃんちょっと様子おかしいし。」
「え?どこがぁ。」
静「なんて言ったらええか分からんけど、なんやろ、キキちゃんじゃないいうか…?ごめんねぇ、ちょっと失礼やね。」
フフッと笑っていたが、寂しそうな顔をしていた。
前に母にも言われたが、自分をよく見てくれている人には分かるのだろうか。
「…しず、あ、あんな!」
静「アカン!…あ、ごめんごめん。私ちょっと参考書買いに行こう思っててん。先帰ってて。」
そう言うとそそくさと駅の方へ行ってしまった。
「なんや、久々二人で嬉しい言うたくせに…。」
しずに今までの事を打ち明けようとしたが、
しなくて正解だ。目に見えもしない敵の話をしたって混乱させてしまうだけだろうから。
私は一人で家に帰った。
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