第三章 双子の姉妹

<1> あなたは誰?

ちょっとー! なんなのこれー! もう私がいるのに後から誰か入ってきた。




「あなたは誰?」

「あ、もう先にあなたがいたのねぇ。こんにちは。初めましてだね」

「え? あ、はい、こんにちは、初めまして」




ついつられて挨拶しちゃった。

パパとママに「おいでー」って呼ばれて私は「はーい」って返事をしたらここへ来た。

なのに、また後からこの子が入ってきた。




「そっか、きっとあなたも同時に「はーい」って返事をしたんだ?」

「そうね、そういう事になるわねぇ」




でも私にはわかっている。二人が同時に返事をしても選ばれるのはどちらか一人のはず。

……ということは、ママとパパが二人を呼んだって事になるわけ。




「つまり私たちは双子の姉妹ってことだ」

「そうねぇ、そういう事になるわね」




今度の家族にはお兄ちゃんがいる。

だからお兄ちゃんとパパとママに、みんなから可愛がってもらえると思ったのに

妹は二人になっちゃうのか。その場合どっちがお姉さんでどっちが妹かな?




「双子だと嫌なの?」




え? そんな事ないけど、でも愛情独り占めできると思っていたのに。




「ううん、嫌だなんて、そんなこと思ってないけど、でも急に双子だって知ったからびっくりしただけよ」

「そう? 私は双子で嬉しいなって思ったなぁ」




え? そうなんだ?




「だって、これから新しい人生を始めるの不安でしょ。一緒に始める姉妹がいてくれてちょっぴり安心したの」




そっか、そうかもね。私も心配がなかったわけじゃないからなぁ。




「どっちがお姉さんでどっちが妹かな?」

「そうねぇ、どっちでしょうねぇ」




そんなのまだわかるわけないか。

本当はもう決まっているはずだけど、私たちがまだ知らないだけかもね。




「私はあなたがお姉さんだといいなぁって思うなぁ」

「なんで?」

「だって、先にここに居たんですもの」




先に居たって言っても、ほんのわずかな時間だけなのに。




「最初怖くてすごくドキドキしてたけど、お姉ちゃんが居てくれたから安心したんだよ」

「私もあなたが来てくれたから、ちょっと安心したかも」


「ごめんねお姉ちゃん」

「え? 何がぁ?」

「だって妹が二人になったら可愛がられるのも半分こだもん」




うん、最初はそう思ったけど、でもやっぱりなんだか二人だと嬉しいかも。




「ううん、あなたがいてくれて嬉しいよ」

「ほんと?」

「うん、ほんと……なんだか眠くなってきちゃった」

「私も……」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る