<2> お兄ちゃんは優しいよ

「お姉ちゃん! 起きて、お姉ちゃん!」




う~ん……眠いのに……あ、痛い!

誰? どうして叩くの? 痛いじゃないのー!




「あら~洋! ポンポン叩いたらママも痛いけど、赤ちゃんもびっくりしちゃうわよ」




あれ? ママの声がする……。


「起きた? お姉ちゃん? お兄ちゃんが叩いているの」

「そうなの? すぐにやめてって言って!」

「お兄ちゃんとはまだお話し出来ないよ。でもママが止めてくれたからもう大丈夫」




そっか。あーびっくりした。




「あ! ほら、赤ちゃんが驚いてお腹を蹴ったわ」

「あははは、洋がポンポン叩くから赤ちゃんが嫌がって動いたのかもよ」

「だぁーだぁー(俺より可愛がられるなんて生意気なんだよ)」


「あ、こらーそんなに強く叩いちゃだめよ! ねーあなた、洋をちゃんと抱っこしてて」

「あーごめん。ほらー洋はこっちだ」

「だぁーはぎゃぁーおぎゃぁ~(父ちゃん離せ! こいつら調子に乗ってるんだ)」


「どした? 洋、暴れるんだけど? なんだかもっと叩きたいみたいだぞ?」

「ふふふ、下が生まれるから嫉きもちやいているのね?」

「まさか! 洋にそんな事わかるわけないだろ?」

「はぎゃぁ、おぎゃぁ、あぎゃぁ~(わかるぜ! 俺よりそいつらの方が可愛いんだろ? くっそ~)」




やだなぁ~もぉ~お兄ちゃん怖過ぎ~!




「外に出たらさ、いじめられそうね」

「ううん、大丈夫よ」

「え? なんでわかるの?」

「お兄ちゃんきっと優しいもん」




そうかぁ~? こんなに私たちをポンポン叩くのに?




「なんで? どうしてそう思うの?」

「だって、大好きなママとパパに呼ばれて『はーい』って返事したのは、私たちと一緒だから」




そっか……一理あるわね。




「お姉ちゃんも優しいから、きっとお兄ちゃんも優しいよ」

「え? 私? 優しい?」

「うん! だって後から来た私の事、一緒で嬉しいって言ってくれたもん」




「なぁ、両方とも女の子なんだろ?」

「う~ん、エコーの写真だとそうらしいけど、隠れて映らない場合もあるらしいから、まだ男の子の可能性もあるんですって」

「そっか、まぁでも『結花(ゆか)』と『梨花(りか)』で決定かな」

「ふふふ、いいけど、男の子だったら?」

「まだ考えてないよ。もう娘で決まりだ! 女の子欲しかったからなぁ~やったね!」


「はぎゃぁ、おぎゃぁ、あぎゃぁ~(ひどいぜ父ちゃん! やっぱ妹の方が可愛いのかよ~)」

「うわ~洋が暴れ出したぞ、ヨチヨチ、どしたぁ洋? 今日はご機嫌よくないなぁ」

「ふふふ、あなたが変な事言うから嫉きもちやいてるのよ」

「えー? そうか?」

「はぎゃぁ、おぎゃぁ、あぎゃぁ~(あたりまえだろ~少しは俺の身にもなってくれよ~)」




「あ!お姉ちゃんは『結花』だって!私は『梨花』だって!」




だからー、まだどっちがお姉ちゃんかわからないのに……。

でも、なんだか私がお姉ちゃんでこの子が妹みたいな気がしてきたけど。




「やっぱり私がお姉ちゃんだって思うの?」

「うん」

「そっか。じゃぁ私は結花で、あなたは梨花ね」

「うん!」

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