第13話 羽ばたく領主はどこまで飛ぶの

「カラスマル、どこまで飛べるか勝負だ」


「いいぜ、どっちが最高の空の覇者か分からせてやんぜよ」


 俺とカラスマルは遥か天へと向かって飛翔を続けた。

 雲を突き破り、宇宙に行こうとしたあたりで、氷のように凍えてきた。

 それはカラスマルも同じことであり。


「ふ、ふはははははっはは、バリア発動」


「な、なにいいい、せこいぞ」


 俺はバリアに包まれて遥か宇宙空間ぎりぎりまで飛翔していた。

 カラスマルは凍り付いた道具の翼が故障して地面に落下し始めていた。

 あのまま落下したら即死だろうし。

 俺はメンドクサイと思いつつも、地上に向けて飛翔、いや落下を始めた。


 バリアは解かれており。

 俺の顔の肉がそぎ落とされてしまいそうなほどの風圧を感じた。

 天使の羽は生き物のように羽ばたくので折れる事はないが。

 それでも天使の羽自体が崩壊したらどうしようかと俺も焦りを感じざる負えない。


 カラスマルが地面に落下する寸前で俺はキャッチする事に成功した。

 天使の羽を上手く飛翔させ地上と平行に飛翔しながら、巨人の鎧に激突したのであった。


 2人共5分間くらい気絶していただろうか。

 俺は立ち上がると、カラスマルの手を引っ張った。


「お前は最高だ。久しぶりに空のバトルをした。天空界に招待したいくらいだ」


「天空界?」


「そういう異世界があるって事だ」


「す、すげえええ、お、俺はアンタの事を兄貴と呼ばせてください」


「いいぞ、あっちは姉御だな」


「何が姉御よ、まったく、心配したのよ、どこまで飛翔するのかと、雲より真上に上っていったときは死んだかと思ったわ」


「まぁそれくらいでは死なないだろうな」


「いやーそれくらいだと死ぬから」


 ガラルド将軍がさらっととんでもない事を呟き。 

 カラスマルはガラルド将軍を二度見していた。

 そして何かを思いついたように閃いた顔になった。


「おめーマウンテン王国に捕まったガラルド将軍だろ」


「そうだが?」


「おめーの噂は国中で最悪だぞ、裏切者のガラルド、おめーの妻と息子はエンカウンター領地に向かって逃げてるそうだ」


「そ、そうか、それは良かった。俺はこれからエンカウンター領地の城壁担当になるんだよ」


「へぇ、なら兄貴の所で空の研究をさせてくだせー、おめーら行く覚悟はあるだろ」


 20名の部下達はぼろクズのようにされていたので、びくっと反応してただ頷く事しか出来ないようだった。

 だが1人また1人と叫び出す。


「兄貴がいるならどこにでも行きます。ここでの兄貴とはカラスマルさんの事じゃなくてユウさんの事です」


「なら早いな、皆で移動しよう」


 かくして新しい領民を確保したのであった。


====エンカウンター領地====

 

 色々あったけど現在の領民を確認する事に。

 新しくガラルド将軍が加わり、妻と息子も加わる。

 カラスマルも加わり、20名の団員も加わる。


 現在民は11名いるが、20名の団員が加わり、31名となった。

 ジェラルド将軍、ガラルド将軍と妻と息子、カフカ少年、マックスギルドマスター、ヒダリ受付嬢、破壊勇者クラウス、創生勇者バデット、カンスイ老師、魔王娘フーデリカ、カラスマルと、それぞれの役割があって、領地をより良く発展させていってくれている。


 一番の鍵的な存在はフウだろうと思っている。

 幼馴染で強気で圧倒的な強さ。


 カラスマルとの1件の後、エンカウンター領地までまっすぐ帰還した訳だが。

 その道中でガラルド将軍の妻と息子との涙の再開があった。


「あんたーよくも負けたわねー」

「父ちゃん雑魚やん」

「ああ、俺は雑魚で負けたさ、それでもお前達が無事で嬉しい」


 ガラルド将軍は妻の尻に敷かれるタイプらしい。

 この道中カフカ少年はシャツとズボンだけだったので、少し可哀そうだったが。


 その後、俺はカラスマルに空飛ぶ研究所を任せようと決意していた。


 リサイクルドリームショップの事務室に移動する。

 元々ここは領主の館だった時の作戦会議室だった訳だ。


 ジェラルド将軍がいつもの如く立っていたし、フウも隣にいた。


「まずはっと、現在のお金だが」


 ちなみに巨人の剣と鎧はコレクションブックに再び収納されている。

「1000億万の2900万円Tある状態だからっと等価交換のカタログを発動してっと」


 カタログに表示されている【空飛ぶ研究所】を見つけて、2900万Tを支払って、山の方角に設置する事に、もちろんワールドマップを起動させて。


 そこの担当がカラスマルという事に決まっていて、一応設備は整っており、20名の団員が生活出来る研究所という訳だ。


 後はガラルド将軍なのだが、呼び寄せる事にした。

 ガラルド将軍がやってくるまでの時間。コレクションブックから超能力の書を厳選する。

 無数にある超能力の書の1冊を見つけ出す。

 念力融合という超能力であり、普通のスキルの書では存在しない技術だ。


「お呼びでしょうか」


「まぁ、かけてくれ」


 ガラルド将軍は椅子に座ると。

 俺は彼の前に1冊の本を置く。


「それは【念力融合】という超能力の書で、習得すると城壁に石などを念力で操作しながら付け加えて強化させる事が出来る。使い用途は想像力しだいだ」


「ふむ、その本を読めと」


「そうだ」


「ふむ、読もう」


 念力融合の超能力を獲得したガラルド将軍の瞳はキラキラに輝いており。

 右手と左手を握りしめながら、次に何をしてやろうかと考えている。

 次の瞬間、自分自身を浮遊させていた。


「ほう」


 俺は逆に驚かされていたのだが。ガラルド将軍は当たり前のように自分自身を念力で浮遊させていた。


「さて、仕事なのだが、城壁はぼろぼろになっている。全ての城壁に再現魔法をかける暇はないというか魔力が持たない、よろしく頼みます」


「任せてください」


 ガラルド将軍は胸を張りながら【念力融合】を獲得した事に自信をつけたようだ。

 まずガラルド将軍はこれでがんばってくれるだろう。


 リサイクルドリームショップをまた開店させる必要もあるし、今回はカフカ君の一件で臨時で休業しているが、随時開店していきたい。

 

 お店を担当とする看板娘的な存在が必用だが。 

 頭の中をよぎったのはフウであった。

 いやいやあいつが看板娘になったらお客が血を見るだろう。

 さて、どうしたものかと考えていると。

 フウがこちらをギョロリと見ている訳で。


「フウ、君にうってつけの仕事があるんだが」


「金くれるならするわよ」


「それならとりあえず、看板娘になってくれ、君ならお金のやり取りがうまいだろう、計算高いというか」


「あんた、それ、私が計算高くでせこいって言いたいの?」


「そういう訳ではない、って、ちょっとまてええええ」


 フウが至近距離でこちらをじーっと見ている。

 思わず心臓がどきんとする。もうすぐおっさんと言っていい程の年齢。

 もうすぐおばさんと言っていい程の年齢。それでもフウはどこからどう見ても美女であり。


「君に任せた」


 かくして看板娘が決まったわけだ。

 次に俺がやる事と言ったら夢の世界で仕入れる事。


「なのだが、ちと考えが変わった」


 出費つまり投資。

 1000億万Tのうち500億万Tを使用して、このリサイクルドリームショップを巨大化させる。地球で言う、巨大デパート化させる。それも中世風にだ。


「ふっふっふ」


 カタログのリサイクルドリームショップをアップグレードするだけ。

 俺はぽちっとそこを押した。

 すると周りの光景がパズルのように切り替わり、フウとジェラルド将軍は度肝を抜かれたように驚きの声をあげ。


 次の瞬間……

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