第12話 領地経営忘れてませんか?

 カイガンセン王国に向けての旅の道中。

 俺とフウは気楽に走りながら、ガラルド将軍は馬に乗っているという異様な光景になった。

 

 ガラルド将軍が逃げないのは道案内が終われば自由の身となるからだ。

 

 まぁ、ここで逃げても全力疾走で追いかけるだけだが。


「んー何か忘れてるような」


 俺は何かを忘れていた。


「あ、そうだ。領地経営を忘れた」


「それ大事でしょ」


「ジェラルド将軍は俺の補佐だし、城壁の周りを管理する人が必用だったんだよなー後はもろもろ色々だけどさ」


「ふむ、それなら俺がやってやろう」


 ガラルド将軍は上から目線でそう告げた。

 俺は走りながらポンと手を叩いた。


「ガラルド将軍に任せるさー、妻と息子も連れてくるといいよ、家とかも手配するよ、最初は宿屋で我慢してもらって、お金を貯めたら、俺から購入する形でね」


「そんな法則なのか? 良いだろう、ロックガン山に向かうぞ」


 

 ====ロックガン山====


 バンデット山賊団。

 20人の精兵の山賊団であり、リーダーはカラスマルという男らしい。


 バンデット山賊団の根城は野営地という言葉が相応しい。

 臨機応変に各地を転々としているのだろう。

 俺達の眼の前には20人の精兵の山賊団がおり。

 人質としてカフカ少年が捕まっていた。


「すみませんー装備を脱いだ瞬間に襲われました」


 カフカ少年はシャツとズボン一着になっていた。

 結構悔しかったのか涙目になっていた。


「約束の代物は持ってきたか! 最高な武具だぞ、それで俺達は無双するんだ」


「ああ、持ってきたぞ最高の武具をな」


「ほう、今そこに出してみろ」


「受け取れ、最高の武具だ」


 俺はコレクションブックからスキル:複製済みの装備を取り出した。

 それはみるみると巨大化していき、地面に落下するのではなく、バンデット山賊団の団員に落下した。


「で、でけええええ」


 巨大な剣。

 巨人族が使うであろう剣。

 それもそうだろう、VRMMMOで得た最高の武具は巨人族専用の代物だったのだから。


「う、うそだろおおおおお」


 下敷きになって男が身動き取れなくなる。

 その隙にガラルド将軍がカフカ少年を救出する。


「フウやっておしまいなさい」


「あんたもやるんだよ」


「だって、メンドクサイんだよー」


「あんたが領主で、カフカ少年が領民でしょ、あんたの父親なら助けてるわ」


「やりますかー」


「鼻くそほじってる場合じゃないからねー」


 俺は走りだす。

 コレクションブックにより身体能力は格段に跳ね上がっているはず。

 フウは地面を蹴り上げると、高らかにジャンプした。

 そのまま落下してかかと落としを1人の団員に食らわせる。

 団員は頭から地面に落下して気絶した。


 俺はその隣を並走しながら、とりあえず巨人の剣を持ち上げた。


「うっそーん」


 下敷きになっていた団員は動けなくなっていながらも突っ込めた。

 巨人の剣を構えて、ぶんと振り回す。


 突風となり、大勢のバンデット山賊団が吹き飛ばされていく、それはもう服が散り散りになっていく哀れな姿をさらしながら。


 何名か全裸で立ち上がり。


「きゃー変態よおおおおお」


「フウ下がっていなさい」


 俺はフウを下がらせ、パンツ一枚の山賊団員を片っ端から殴り飛ばす。

 顎にヒットさせると、そのまま上へと遥か上へと遥か上へと。


「って、どこまで飛んでくのよー」


 そのまま消えた。


「次―」


 2人、3人、4人、5人、6人、7人、8人、9人、10人と連続ビンタする。


「いいか俺はこのビンタを毎日くらってるんだぞゴリラ女に」


「誰がゴリラ女よおおおおお」


 9人の男達はビンタだけで脳震盪を引き起こして気絶していた。


 1人は遥か天へ飛び、1人はフウのかかと落としでご臨終、1人は巨人の鎧の下敷きになって身動きがとれない。先程剣をどけたがどけた後で鎧が倒れてきたという不運。


 残り8名は剣を構えて、冷や汗を掻いている。

 カラスマルがいないのは謎だが。

 それでも気にせず。コレクションブックから太陽の剣を引きぬく。


「これさー結構ダブってるんだよね、投擲に使えるんだよ」


「は、はあああああ、それ1億万Tでしょおおお」


 きっとバンデット山賊団もリサイクルドリームショップにやって来ていたのだろう。


「ほれ」


 太陽の剣を投擲し、爆発させる。

 1億万Tを投げ捨てる行為。


 太陽の剣が四散し、辺りに無数の灼熱の炎がメラメラと燃え盛る。

 炎は一行に消えず。


「ほれほれ」


 太陽の剣太陽の剣が投擲される。

 爆発する。辺り一面太陽の炎の欠片まみれ。

 炎は永遠に燃えているだろう。


「もうダメだ」


 既に暑さで8名はくたばりそうになっていた。

 だが空から1人の男が舞い降りてきた。


「呼んだかい」


「誰も呼んでねーよ」


 すかさず突っ込むが。俺も誰が呼んだのだろうかと、ちょっと反復して考え直した。


「このカラスマルが相手してやんぜよ」


 そこには鳥人間がいた。

 正確には多種多様な道具を掛け合わせて、空を飛んでいると言っていいかもしれない。


「お前、自力で空飛べるようにしたのか」


 俺の眼は輝いていた。


「そうさ、この法則を見つけるのに相当な時間と労力をかけたものさ」


「実は俺もコレクションブックにあるんだよ」


 コレクションブックから取り出したのは。

 背中に着ける翼。


「実はこれ天使から貰ったんだ、すげーだろ」


「は、はぁあああああ」


 俺は天使の羽を使って空を飛翔して見せた。

 相手も道具を掛け合わせたもので空を飛翔する。


「おいおい、俺は幻でも見ているのか」


 ガラルド将軍が蒼白になりながら呟く。


「いえ、子供が2人いるだけです」


 フウは冷静沈着であった。



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