第11話 VRMMOの基本は巨人狩りなの?

 レベル2500の巨人族を200体倒す。

 それが俺とテナ氏に与えられた任務だった。

 のだが。


「あれ、明らかに1000体越えてるよねー」


 巨人族の大群がゾンビの如く群れを成して進軍してくる。

 彼等の装備は巨大な剣に巨大な盾、鎧に身を包み、まるで俺とテナ氏が侵略者のような扱いだった。


「うぉおおおおおお」

「ものどもおおおお、人間がきたあああ、殺して食べるぞおおお」

「今日はおいしい、女の肉もあるぞおおおお」

「男の肉はまずいぞおおお、おっさんだぞおおおおお」


「まったく五月蠅いわね」


 テナ氏は軽くジャンプしていく。地下世界の中で自然と出来上がった岩のような柱の真上に上り。

 その上から機工の弓を発動させている。

 レベル200はそれだけに凄い事で。


 弓矢が何かしらのスキルで解き放たれると、巨人の頭が吹き飛んでいた。

 光の欠片になって巨人は消滅している。

 ドロップアイテムの光はテナ氏のアイテムボックスに勝手に収納されているらしい。


「ふむ、とても凄い、このゲームの中ではモンスターを倒すと消滅するのか、凄すぎる」


 だが、そんな関心を抱いている場合ではなく、俺の周りには4体の巨人が囲んでいて。

 彼等は剣を振り上げ振り通す。

 体をミンチにされるのかもしれない。

 だが、足神の靴で軽快にステップを刻み踊るように相手の攻撃を避け続ける。


 手神の籠手で俺は太陽の剣と雷鳴の剣をジャグリングのようにくるくると回転させていき。

 

 レベル10では不可能な跳躍を見せ、レベル10では不可能な攻撃力で1体の巨人の腕を両断していた。

 レベルが50になったので、次に、2体、3体と最後に頭を砕いて倒した。


 レベルが100になった。


「ふぅ、これが強くてニューゲームの高速レベル上げだ」


「尋常じゃないわね」


 弓矢を引き絞るテナ氏に柱の上から突っ込まれつつも。


 俺達はそれから無我夢中で暴れてやった。


 俺にとって、夢世界でこうやって暴れる事は当たり前の事だ。

 なにより、何度だって死んだ事がある。

 それは慣れてしまえば怖くないが。

 現実世界で死ぬと本当に死ぬからそれは怖い。


「ふぅ」


「はぁ」


 巨人族は跡形もなく消滅していた。

 辿りついた場所には2個の巨大な宝箱が置かれてあり。

 俺は右をテナ氏は左を選んだ。


 ただ、出てきたドロップが。

 確かに最高な武具だった。

 ただし、それは巨人族が装備するあれで。


「く、ははははっはあ、確かにそうだな、最高な武具を持って行ってやろうさ」


「私の方は弓関係だったわね、助かったわ、あなたを舐めていたみたい、ユウ氏」


「気にするな、おかげで俺はレベル200になったけど、一度ログアウトするからレベル1からだ」


「私もそろそろログアウトね、また会えるかしらユウ氏」


「また遊びに来るよ、このVRMMOという世界はとてつもなく広く色々なコンテンツがある事が分かった。もしかしたらまだまだ本質的に強くなれるかもしれない。さて、ログアウトするさ」


「え、ここでログアウトはしないほうがって、クエスト報酬を、遅かった」


 テナ氏が残念そうに笑い。


「あなたの分も貰ってあげるわ、謎のおっさん」


 俺はベッドから立ち上がると、何か忘れている気がしていたが、あまり気にせず。

 入口の受付の女性に挨拶して。外に出た。


 ドーム状にはどれくらいの人間が眠っていて、VRMMOの世界で楽しんでいるのだろうか。


「まぁ、俺にとっては異世界もVRMMOもあまり変わりが無いんだけどな」


 それが至極もっともな結論であった。


「さて戻るか」


 意識を遮断し。

 空間に吸い込まれて。

 俺の意識は現実のものとなった。

 起き上がった俺は。

 

「さてやりますかとバンデット山賊団のアジトに向かう事にした」


 寝た日から、ちょうど3日が経過していた。

 カフカ少年の家で爆睡していた。

 領地の門に向かうと、そこではフウが戦闘服で待っていた。

 

「まったく、思っていたより早かったわね、最高な武具って奴は手に入ったの?」


「さっき複製して、コレクションした。俺はさらに強くなったぜ」


「それは頼もしいけど、カフカ君も長く監禁されてると頭が可笑しくなるかもしれないから、早く助けるわよ」


「もちろんだ。さてと、カイガンセン王国のロックガン山のバンデッド山賊団かー情報があまりないんだよな、そもそもカイガンセン王国の事はあまり知らないし」


「それならーガラルド将軍に聞けば良いんじゃないかしら、あの人、マウンテン王国の捕虜になってるから」


「じゃあ、そこから行くとしようか」


 2人はゆっくりと徒歩ではなく、猛スピードで走った。

 俺はコレクションブックのおかげもあって尋常じゃないスピードを出せる。

 しかしフウが並走出来るレベルなのは意外で、彼女がどれだけ修行を積んできたかが理解出来た。


====ガラルド将軍====


 今日も牢屋の中でひたすら贅沢な食事を食べていた。


「はぁ、やはりカイガンセン王国の食事がまずかったのだろうか」


 その後、鉱山の採掘作業が始まる。

 マウンテン王国は山が多く鉱石を採掘する鉱夫がとても貴重される。

 ガラルド将軍はバリバリ働き、こうして毎日贅沢な食事にありつける。


 国には妻と息子を置いてきた。

 どうにかして会いに行きたいが、このまま朽ち果てていくのだろうか。


 その時王様が眼の前にやってきて、その隣にはあの指をもいだ商人がいた。


 ガラルド将軍のトラウマが呼び起こされ悲鳴をあげるも。


「ど、どどどどどっどど、どういう事ですか、王よこいつは俺の指をもいだんですよ」


「それが戦争だろう」


「あいつは実演販売って言ってましたが」


「それも戦争だろう」


「戦争じゃねーよ」


「今そのユウ殿から貴公にお願いがあるそうだが」


「なんだ、報酬はあるのか」


「自由を与える。お主はカイガンセン王国に戻る事も出来るし、どこにだって行く事が出来る。ただしユウ殿のお願いを聞かねばならない」


「それなら、ぜひ、息子と妻の顔を見たい、いや一緒に暮らしたい昔のように」


「では話が速いじゃん」


 生意気そうな女性が呟き。

 ガラルド将軍はひたすら頭を下げて話を聞いていた。


「バンデット山賊団? あいつらですか、規模は20人の精兵で、冒険者ランクにするとSランク以上です。俺でもてこずります」


「では、ガラルド将軍、ロックガン山に案内してくれ、その後自由だ」


「ふ、ふははははは、ありがとう」



 牢屋の扉が開かれる。

 なぜか王様が自ら鍵を開けている。

 人材不足なのか?


 ガラルド将軍は鎧に着替えを済ませると。

 王様に会釈し、商人ユウと格闘家フウとの旅に出かけた。


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