私を好きになって。私を好きにならないで。
※性被害に関する記述があります。事実ベースなのでかなり詳細です。苦手な方はブラウザバックを推奨します。
私が外に出ると、雨が降り出す。小雨の時もあれば、ゲリラ豪雨の時もある。そして、曇り空を見上げても、ちっとも心地よくない。
例えば私が晴れ女だったら―――いや、私に晴れは似合わない。
インターネットの記事
よく見るメンタルヘルスに関する情報で、必ずと言っていいほど書いてある「自分に自信を持つ」
私はその言葉が大嫌いである。
私は自分に自信はないし、自分の事が嫌い。でも、自信過剰で周りから引かれて生きるより、謙虚で静かに惹かれて生きたいもの。
誰かに好かれて生きていたい。私は何も持っていないから、自分で自分を認める事なんてできないよ。本当に何も持ってない。
強いて言うなら、この最悪な性格くらいだよ。でも大丈夫、私はちゃんと自覚してるから。
自覚せずに自分を善人だと信じる愚かな仮面達とは違うから―――絶対に。
自信はないし、才能もない。でもプライドだけは一丁前にあるの、それも心の底では隠すの。
自分で自分は認められないけど、周りには認められたいの。それも心の底では隠すの。
プライドも、承認欲求も、強く強く深く求めるものは簡単に手に入る。
謙虚に惹かれて生きていれば、簡単に手に入る……と思っていた。お金よりも簡単に手に入るプライドと承認。そこに愛なんてなくたってい、ただ誰かが「好き」と言ってくれれば、それでもう満足だった。どんなに垢抜けない男でも、人気者な男でも、仲の良い女子でも、恋愛的な好きでも、友情的な好きでも、どんな「好き」でも、満足だったの。
散々愛想を振り撒いた。
「私、ほんとに可愛い人にしか可愛いって言わないから」なんて何度も嘘をついた。でも本当のブサイクには可愛いって言わなかった。それだけで言葉の信頼を買っていた。
「そういうところがダイスキ」なんて、何百回も言った。本当の大好きなんて家族とダーリンにしか言ったことないよ。散々嘘ついた。
相手の欲しい言葉を見抜いて与えることに必死だった。才能はないけど、洞察力は努力で手にした自負があった。そしてみんなは笑い泣き、ありがとうなんて私に言ってきた。
ああ、なんて簡単なんだ。
満たされるのは、簡単なんだ。
でもなぜ、なぜこんなに孤独な気持ちなのだろうか。
大好きな家族も、愛するダーリンも、
満たしてくれる友人たちもいるのに、なんで孤独なのだろうか。
そんな気持ちに疑問を持ちながら、自覚しながらも曖昧にして生きてきた。
それが全て間違いだったことに気づいたのは、自分が汚された瞬間だった。
服と同時に削げた私の武器。
生まれた時から身体に付属している溝に指を添えられると、私の心の溝は深まった。深くて深くて、もう埋まらないほどの溝。
嫌なのに動かない身体と、苦しみと、悲しみと、絶望感。
今でも記憶に残っているのは、お酒でぐるぐるした視界に、妙に残ったシャンデリアの個数。
私が殺されてから半年して、私はとっくに愛想を振り撒くのをやめた。
愛想を振り撒く相手を間違えれば傷つけられるんだと、心が殺されるんだと、身を持って理解したからだった。
大学に行けなくなった私は、SNSを全て消した。逃げるように、消した。メールアドレスも変えて、大学は退学手続きをした。
本当の友人なんていなかったんだと思う。誰も支えになんてならなかった。
何もかも自業自得だと思った。いや、今も思ってる。
花粉が飛散して鼻がぐずぐずになると、季節の変化を感じるようになった。
空を見上げて、世界は大きいなと思った。
承認なんて無くても私は今ここに生きてると実感できるようになった。
自分の足音が案外大きかったことに気がついた。
深い呼吸をしていなかったことに気づいた。
空は青色だけじゃないことも忘れていた。
ただの、綺麗な日常がとても幸せに感じる。
何より、家族と彼に支えられ、みんなの愛に気づけた。本当の愛に、無条件の愛に気づくことができた。
これは嘘でも作り話でもない、本当の人生の話。
愚か者が友人だと思っていた異性から性被害を受け、今も深く傷ついて、日常を等身大で生きる…そんな私の話。
読んでくれてありがとう、この世のどこかにいるあなた。私の本心を知ってくれてありがとう。
最後に、後日談にもならないけれど、加害者はSNSにこう書いていた。
「人を殺した気分になっていたが、どうしようもないから健康に生きる」ってさ。
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