※ 第2話 奴隷へ堕ちる

「どれ、い……?」


「そう、奴隷。主な業務は私の身の回りの世話と夜伽です」


「夜伽……? あ、あの、それは……っ」


「あぁ、文字通りの意味ですよ。私の相手をしてもらいます」


「で、でも……高嶺さんは女の子、ですよね?」


「そうですね。で、それが何か?」


「女性同士で……って事、ですよね?」


「ご不満ならば先の三つのどれかでも構いませんよ?

臓器売却、風俗嬢、オークション……お好きなのをどうぞ」


「ひっ……あ、あの! その仕事っ、奴隷のお仕事でお願いします……っ!」


「あら? 良いんですか?」



高嶺さんはキョトンと首を傾げる。

私に選択肢なんて無いのに、この悪魔……っ!



「あっ、あの、せめてその仕事の説明だけでも……」


「説明と言っても先ほど言った以上の事はありませんよ。

私の家で家事をして、私に要求されたら身体を差し出す……要は私に絶対服従です。

あぁ、それから……反抗的な態度をとったら制裁を加えますので」


「う、うぅ……っ」


「ですが、そうですね……期限は1年。

1年奴隷を務め上げたら借金を帳消しにして差し上げましょう」


「ほ、本当ですかっ⁉︎」


「えぇ。ですが奴隷と言えど私の側に置く訳ですから……当然条件はあります」


「じょ、条件……?」


「そんなに難しいものではありませんよ。私に逆らわない、絶対服従……それを徹底すれば良いんです」



そう言うと高嶺さんは私の手足を縛っている結束バンドをハサミで切った。



「あ、ありがとうございます……?」


「脱ぎなさい」


「……え?」


「命令への抵抗及び反抗の意思あり、と」


「あっ、いえ! すみませんごめんなさい!」



私は慌てて服を脱ぐ。高嶺さんはそんな私をサディスティックな表情で見下ろしていた。



「ベッドから降りなさい。足は肩幅に開いて、両手は頭の後ろで組むように」


「は、はいっ」



私はベッドから降りて言われた通り両手を頭の後ろで組み、胸を張った。

すると高嶺さんは私の裸体をじっくりと見回す。

舐めるようなその視線に思わず身体を強張らせる。

そんな私に彼女は楽しそうにクスクスと笑った。



「ふふっ、それは服従のポーズ。私が待機を命じたらそのポーズで待っていなさい」


「は、はい……」


「どれ……」


「ひゃっ⁉︎」



高嶺さんの細い指が私の首筋をなぞり、お腹を撫で、胸の先端にツンと触れた。



「ふむ……存外にスタイルが良いですね。

もし弛んでいたらトレーニングから始めさせるつもりでしたが」


「ひぅ、あ……っ」


「まぁ、その心配は無さそうですね。

ですが私はこのスタイルも込みで破格の条件で雇ってあげる訳です。

くれぐれも怠惰な生活で無駄な肉など付けないように」


「はい……っ」


「では最後の審査です」



そう言って高嶺さんは高級そうなバッグに手を入れると、中から首輪と南京錠を取り出して私の足元に放り投げた。


 

「え……?」

 

「私の奴隷として生きていく覚悟を改めて確認させて頂きます。

それを自らの意思で首に嵌め、そこに南京錠をかけなさい」


「……っ」



高嶺さんは目の前に立って私と目線を合わせると……ニヤァっと堕天使のように微笑んだ。



「中にはGPSを仕込んである為、居場所は筒抜け。鍵は私が保管してあります。

私の許し無く首輪を外す事は不可能です……覚悟は良いですか?」


「……はい」



私は震える手で首輪のベルトを緩める。

そしてそれを手に取りゆっくりと自分の首へ巻いて……最後に南京錠をカチッと掛けた。



「よく出来ました」


 

そう言って高嶺さんは私の頭を撫でる。

あぁ、私本当にこの人の奴隷になったんだ……



「さて、では帰りましょうか。服を着なさい」


「えっ?」


「裸で外に出たいなら構いませんが」


「っ⁉︎ す、すぐに着ます!」


「ふふっ、どうぞ」



慌てて服を着る私を眺めながら、高嶺さんは楽しそうに笑っていた。



※※※※※



「「「お疲れ様です!!」」」



廊下に出るとコワモテで屈強な男の人たちが一斉に頭を下げた。

本当に高嶺さんはヤクザの偉い人なんだ……



「ひな子は私の奴隷となりました。よって以降の処置も無し。

これにて本日の業務を終了とします。お疲れ様でした」



そう言ってスタスタと歩いていく高嶺さん。

私も慌てて彼女の後を追った。



その後、駐車場に停まっていた高級車に乗って(運転手も怖かった)渋谷のとある高層マンションに到着した。



「今日からここが貴女の住居です」


「は、はい……っ」



エレベーターから降りて驚愕した。

最上階の1フロアが丸々高嶺さんの住居になっているようだ。



「ひな子の部屋はそこの廊下の奥です。

荷物を置いたら仕事に取り掛かってください。まずは夕食を」


「は、はいっ」



取り敢えず私の部屋に行く。最低限の家具は勿論、エアコンやテレビも完備されていた。

正直この一部屋だけで、直前まで住んでいた家より快適そうだった。



「高嶺さーん……?」



部屋を確認してリビングに戻ると高嶺さんの姿が消えていた。

水音がするからシャワーにでも入ってるのかな?



「好き嫌い分からないけど……夕食の準備をしますねー……?」



聞こえていない事は承知で準備に取り掛かる。

何作ろう……時間も無いしレトルトカレーじゃ駄目かな?

ご飯を炊く時間も無いからこっちもパックご飯。

家に有るって事は普通に食べてる筈……!



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