第6話 失った者

 痛い。気が付いたら僕は、森の中で倒れていた。辺りは、薄暗くおそらく夜なのだろう。全身が痛い、頑張って起き上がろうとしたら、右の足首に鋭い痛みが走る。僕は、そのまま座り込んでしまった。怖い。

僕は、痛みと恐怖で泣き喚いた。


???「うあぁぁぁぁん、とうちゃん、かーちゃん、どこー!」


いくら泣き叫ぼうが、誰も現れなかった。しばらく泣いていると、遠くの木の後ろから「パキッ」っと音がした。小さな音だったが静かだった森に響くようだった。泣いていた僕にもかすかに聞こえるくらいに。僕は怖くなって、すぐに泣き止んでしまった。そして、ひたすらと音がした方を見続けた。すると木の後ろから大きな熊?さんが出てきた。熊さんは僕の3倍・・・いや4倍、5倍大きかった。

(よかった、誰かいた!)

熊さんは、何かを確かめるかのようにゆっくり近づいてきた。


???「すみません、こ・・こ・・・・大丈夫ですか」?


僕は、その熊さんにここは、どこなのかと聞こうとしたが・・・熊さんの様子が変だ。何が変なのかわからなかった。ただ、熊さんから出る?いや、体に入っていく黒い何かを見て、何かがおかしいと感じた。

体か恐怖で固まる。僕はひたすら入っていく黒い何かを見ていたら熊さんと目が合う。次の瞬間。


熊?「ヴォォォォォ!」

???「っぅぁぁぁああああ!」


鳴り響く咆哮に僕は、驚いて走り出す。頭が真っ白になり、痛みを無視ししてひたすら逃げる。逃げきれないと知っていて、どこか絶望しつつ、死にたくないという思いを一心に逃げ続ける。だがすぐに追いつかれる。僕は狭い木の間を潜り抜けたり、飛び上がった木の根の下を潜ったりして、少しでも追いつかれないように頑張った・・・・が


???「っあ!」


僕は大きな壁を前に立ち止まる。見上げると、とても登れそうにない。すぐ後ろには、熊さんがいた。もう逃げ場がない、逃げる気力も体力もない。

僕は、諦めて泣き出した。死にたくない!


???「うぁぁぁぁぁん、なんで追いかけてくるの!、やめてよ!」


(・・・あれ?熊さんが襲ってこない?)そう思っていたが、熊さんの目線が僕に向いていないことに気づく。熊さんの目線を追いかけると、崖の上に黒い大きな猫さんがいた。前の両足に熊さんと同じ黒い何かを纏っている。

猫さんが飛び降りて、僕と熊さんの間に立つ。前足の黒色と思っていたそれは、綺麗な濃い紫色だった。


熊?「ヴォォォォォ!」


熊さんは、しびれを切らして突進してきたが


猫さん「うるさい」


噛みつこうとした熊さんの口を地面に叩きつけたと思いきや、口から紫色の球を吐き出した。熊さんの全身は、紫いろの何かを纏って、断末魔と共に消えてしまった。


猫さん「おい、大丈夫か?お前ど・・ら・・・た?」


ああ、綺麗だな、この猫さんになら・・・・

僕はそのまま気を失った。次に目が覚めた時は、小さな洞窟の中だった。

ここどこだろう?


猫さん「ん?目覚めたか、とりあえず食え」


昨日の猫さんだ。猫さんから赤い物を渡された、リンゴっていうらしい。

とても美味しかった。リンゴを食べていると猫さんが話しかけてきた。


闇胡「俺は、ギルスだ。お前は?」

???「・・・・・」

闇胡「どうした?喋れないのか?」


僕は、頭を横に振った。


???「・・・・分からない」

闇胡「ん?どいう意味だ?」

???「・・・思い出せないの・・・なにも」

闇胡「は?記憶がないだと?!」

???「・・・うん」

闇胡「はぁ、少し待ってろ。相談してくる」


猫さんが洞窟を出て行ってしまった。おかしい、何も思い出せない。いつから?昨日のことは覚えている。じゃあ、昨日から記憶がない?わからない。

考えていると、猫さんが狼さんを連れてきた。


闇胡「っち、なんでお前がくるんだ」、

狼さん「しゃーねーだろ、親父は狩り中だから俺が行けって母さんが言ったんだろうが」

闇胡「ッフン」

狼さん「さて、こいつが噂の化け物か、俺はウォルフィだ。」

闇胡「おい!、化け物言うな!」

雷尾「ん?ああ、悪い悪い、4日前に襲われたんだっけ?」


ん?4日前って!?


???「あのー・・・」

雷尾「どうした?」

???「4日前っていうのは?・・・」

雷尾「そっか、お前寝ていたから自覚ないのか。お前は4日間寝ていたぞお寝坊さん」

???「っえ、そんなに!・・・ごめんなさい」

雷尾「ガキが謝るなよ、元気に走り回れ!今は、体を治すことに集中しな」

闇胡「っで、立派な大人は、どうする気だ?」

雷尾「どうって、うちで面倒見るしかなくないか?それと、師匠に頼んで魔力の操作を教えてもらわなきゃな、こいつのバカでかい魔力をダダ漏れにしとくと、またいつ襲われるか、わからんしな」

闇胡「俺が教える」

雷尾「・・・先に師匠からだ、怒られても知らんぞ?」

闇胡「っう」

雷尾「ってなわけで、お寝坊さん歩けるか?」

???「え?」

闇胡「っは!、お前何言っているだ!」

雷尾「っへ、そいつが食ったリンゴは、後で食べようと思っていた、ユグドラさんの魔力が込められた特別なやつだ。どっかの誰かさんにとられたけどな」

闇胡「っ・・・」

???「その・・・ごm」

雷尾「謝るなって、もともとお前が目覚めた時用に取って来てたんだから。こいつをからかっているだけだ。」

闇胡「っな!」

雷尾「さて、師匠のとこ行くから食べ終わったらとっとと行くぞ」

闇胡「っちょ、待て!逃げるなこら!からかっていたってどいうことだ」

雷尾「ギルうるさい、っあ母さん今から・・・」

闇胡「話し変えるな・・・」


二人二匹は喧嘩しながら来て、喧嘩しながら帰っていった。

食べ終わると僕達は、師匠がいるというハクギの森に向かった。彼らは師匠に今までのことを説明した。


氷帝「なるほどな,承知した。俺はナルギウスというものだ。よろしくな」

???「っあ、はい、よろしくお願いします。」

氷帝「名前がないと不便だが、せっかく親にもらった名前があるんだ、勝手に名付けるのは、悪いだろう。そ・こ・で・だ、君には守護者(仮)になってもらう。守護者名はだ」

地竜「はい、わかりました」

氷帝「うむ、よい返事だ。地竜よ魔法って知っているか?」

地竜「いいえ」

氷帝「そうか、分かった。そこから説明するぞ。まず、8つの属性に分かれている通常魔法がある。属性は、火、水、雷、地、風、氷、光、闇が存在する。火は水に弱く、水は雷に、雷は地に、地は風に、風は氷に、氷は光に、光は闇に、闇は火に弱い。

魔法を使うには、魔力が必要だ。魔力とは、体内に流れるエネルギーのことだ。みんな、各々の魔力属性があり、同じ属性の魔法がうまく使えるということだ。

魔力にも性質があって、誰でも使える魔力を無力魔力と言う。無力を基準に、威力はそのままで魔法発動の速度が上がるのが聖力魔力と言う。これは、聖獣のみが扱える魔力だ。君も頑張れば聖獣になれるぞ?次に、絶対に手に入れてはいけない魔力だ。悪力魔力と言って、魔法の発動速度は、無力のままだが破壊力が格段にあがる。本来この世には、存在してはいけない者達、魔獣が扱う魔力だ。

君を襲った熊は、魔物っと言って悪力の塊だ。悪力は、我々の中にある憎が魔力に溶け込み外に出る。そして集まった悪力が形を成し、目に映る魔力を秘めたものを食らって強くなる。

倒すと憎が消え消滅する。獣族の形なら弱いものが多いが、竜族の形をした魔物は、聖獣でなければ倒せない。

聖力は、誰かを強く思う気持ちが、魔力と融合し聖力となる。一度聖獣になった者は、魔落ちしない限り、聖力が使える。まぁ、コツはいるが

最後に神に選ばれた者たちがいる。これは聖獣よりも上の存在で神獣と呼ばれている。知り合いに3人いたが、二人死んでしまったなぁ・・・。

この者たちは、特殊魔法と呼ばれる変わった魔法が使える。

太陽魔法、自然魔法、月光魔法、空間魔法がある。残念ながら、選ばれたものなら、魔獣でも扱えてしまうのが厄介だ。現に魔獣達のリーダーは、空間魔法を使える。味方側だと、自然魔法が使えるユグドラに、いずれ、月光魔法が使えるようになるファルイがいる。そして、神のみが使える時間魔法が存在するらしいが、誰も見たことがない。

説明は、以上だ!これからお前には、魔力操作の練習をしてもらう。お前の魔力量は俺とほとんど変わらないからな、押さえないと魔物が集まってくるぞ。」

地竜「はーい」

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