第6話





 この国、タリア王国では珍しいが、隣国などでは獣人という種族は珍しくないという。村での生活の中、勉強した教材に人間族や獣人、亜人など種族についての特徴をまとめた本があった。


 その本では、はるか昔から存在する生物に【神獣】と呼ばれる種が存在し。神獣は、魔力を持つ生物との『契約』によって互いの『魔力』から子孫を作るとされていた。

 今までに、人間族以外と契約をした神獣は確認されていないが、人間族と子供を作ると生まれた子は親の神獣と人間族の特徴を合わせ持つ、『獣人』という名前で呼ばれる存在が生まれた。それが『原種の獣人』。


 獣人は他の種族と子供を作ると親のどちらかの特徴を持って生まれ、ハーフは生まれないという種としての珍しい特徴があるらしい。

 その獣人は、タリア王国においては少数だが、隣国には数多く生活しており。獣人だけの集落も多くあるそうだ。一般的に人間族より力が強く五感も優れている。

 獣人は同種で群れを作る傾向が強い。見た目の違いから、人間族と区別される場合があり、タリア王国においても排他的環境に置かれることも少なくない。


 ……いつか外の世界に出た時に、必ず会ってみたいと思っていた獣人は、隣の町であっさりと見つかったのでした。



 テーブルに並んだ夕食を盛り分けながら、獣人についての知識を思い出していたリタは、初めて見つけた獣人の子供に興味が出た。

 あの少女は、この店の看板娘で人気があるようで。少女が食事を運ぶと嬉しそうに声をかけたり、お小遣いを渡したりする人もいる様だ。そしてその光景は自然と受け入れられ。見ていてこちらまで嬉しくなる笑顔を振りまく少女に興味が尽きなかった。


「フィリーネちゃん、こっちもワインのお替りもってきてー!」

「は~い、わかりました~!」


 かわいい……。少女としての整った顔の造形と犬獣人の可愛らしい耳。スカートが不自然に盛り上がっている所を見るにおそらく『尻尾』もあるのだろう。

 そして何より魅力的なのは、花が咲いたかのような笑顔だった。


「リタ。とってもおいしそうよ、冷めないうちにいただきましょう」


 お母さんの声で意識が戻ってきた。ほんの少しお母さんの気分も良くなったようだ。あの少女が店内を周ることによって店の雰囲気がより明るくなる。


 お母さんは大皿の料理を2つに分け、それぞれの前に盛り分けてくれた。

 メニューは、トマトパスタに、ブイヨンとジャガイモ、燻製肉のスープ、それから小麦を使ったパン。

 パンは塩パンになっていて、そのまま食べても、スープに浸してもおいしく食べられる工夫があった。


 トマトのうま味と玉ねぎが煮溶けるまで煮詰めたトマトソースと、程よく茹でたパスタ。

 鶏ガラと香草、香味野菜を長時間煮込み、鳥や豚の血、卵白を加え、丁寧に漉す。味が凝縮したブイヨンをジャガイモと燻製肉だけの具で合わせ、ブイヨンその物の味を活かしたスープ。


 どちらも本で作り方は知っていたが、家ではとても作れない料理だった。

 長時間煮込む料理はその分燃料が必要になり贅沢なもの。

 小銀貨2枚、1度の夕食にしてはかなり高め。初めて村以外で過ごす日だからと奮発したけれど、この料理なら決して後悔はしないだろう。


 お腹がすいていたのもあり、料理はすぐに食べ終わってしまった。それからお母さんと料理の感想を語り合い、少しの間だけ普段の明るい雰囲気に戻ることが出来た。

 食堂の様子が落ち着いた頃。女将さんがやってきた。


「うちの料理はおいしかったかい?」


 にこやかな表情でいう彼女は、自身の店の料理に自信があふれていた。


「はい、とってもおいしいです。この子にも今までこんなにおいしい料理を食べさせてあげられなかったから…」

「うん、お母さんと作る料理もおいしかったけど、このお店の料理は特別」


 定期的に自炊をやめて食べたいと思うほどの料理だった。


「それはありがとう、泊りのお客さんでよかったんだよね」

「はい、村から出てきたので生活が安定するまで長期で宿泊しようと思いまして…」

「へぇ、村から出てきたのかい? うちは決して安い宿じゃないが、いいのかい?」


 確かにこの宿の品質は高く、値段もそれに見合ったものだった。村からでき来た親子2人が気軽に宿泊する宿ではない。

 女将はこちらの気分を害さないように遠回しに事情を聴いてきた。


「はい、町役場で安全な宿を聞いたら、このお店を紹介してもらって…」

「安全…ね、何か訳ありなら相談に乗るよ?」

「ありがとうございます。実は、その…この子、リタについてなんですが、魔力持ちなんです。それも魔力量がかなり多いらしくて…」


 お母さんはそういうと、リタの深く被ったフードを女将さんにだけ見えるように上げた。

 リタはその時初めて女将さんの顔をしっかりと見た。茶色の髪を背中まで伸ばし、柄布で髪を1つにまとめ清潔感のある風貌。おそらく異国出身なのだろう、すっきりとした鼻筋に強気な目つきがよく似合う女将が、リタの顔をみて、間の抜けた顔をしていた。


「……驚いたねぇ、絹のような髪質の銀髪、透き通る青い目。まだ幼いがこの容姿、おまけに魔力持ち。お母さんを見た時から綺麗な家族だとは感じてはいたけど、これは物騒なことになりかねないね」


 実際に物騒なことに巻き込まれているから笑えない。


「はい…。それで村でもトラブルがあり、この町まで逃げてきたんです。この町では少しでも平穏に暮らしたくて…」

「わかった、そういう事なら任せておくれ。旦那に話を通してなるべく安くするし、助けられることなら手を貸すから」

「あ、ありがとうございます」


 女将さんも綺麗な人だったから、きっと共感できる点があったのだろう。

 もちろん被害が出る前に女将さんの手が飛んできそうな雰囲気はあったけれど。


 女将さんは早速厨房に相談しに行った。

 そして女将さんと入れ替わるように獣人の少女・フィルが歩いてきた。

 さっきのフィルは座っているリタよりも屈むことによってリタの顔が見えていただけのはずだ。

 しかし今もフード越しにリタの顔を直視しながら、にこにこして向かってくる。


「ねぇ、おねえちゃん。難しい話終わった~?」


 リタの顔の位置を見ながら一直線に歩いてきて、そのまま止まることは無く。椅子に座るリタの顔の真下。深く被ったフードの下から顔を覗き込めるほど近くまで寄って来た。ほとんど顔をリタの首にすり寄せる様な体勢でのぞき込む。


「お料理、おいしかったでしょ~? あのスープのジャガイモ、フィルが切ったんだよ~!」


 至近距離で直接見える笑顔が眩しい…。小さな子供が行う意味のない不審な挙動をお母さんは微笑ましいものを見るように見守る。

 リタはその頭についている犬耳がとても気になっていた。

 そして、その耳を可能なら触りたいと思っていた。ここまで距離感が近いのだから、大丈夫だろう、とリタは心の中で言い訳をまとめると、無防備なフィルの耳を前振りもなく両手で揉んでみた。


「あははっ! おねえちゃん耳が好きなんだね! もっと触ってもいいよ~?」


 一瞬、フィルの体が跳ねたが、嫌がるような素振りを見せることなく、あっさりと許可が出てしまった。

 そのまま耳を触り、確かめる。

 フィルの耳は、犬と同じ形をしているが、柔らかく手触りを追求した様な触り心地だった。頭を撫でるとお尻のあたりの布が動くので、尻尾が動いているのが分かる。

 自分の手の動きに合わせて反応するフィルの体に興味が尽きなかった。


(手は人間族と一緒かな? じゃあ足は? 尻尾はどうやって生えているんだろう。体毛は?)


 リタの興味は尽きなかったが、まさかここで確認するわけにもいかず、フィルの頭を触るだけにとどめた。

 しばらくすると、女将さんが帰ってきた。


「こらー、フィル。ちゃんとお客様にご挨拶した?」

「あー! 忘れてた、えっとね、フィルはフィルって言います! 8歳です! よろしくね、お姉ちゃん!」

「違うでしょ? あなたはフィリーネって名前なのよ、覚えてる?」

「はい! 私は~フィリーネでーす!」


 女将さんは、口調は厳しくも、優しい声音でフィルに話しかける。この可愛さを前に真剣に怒ることはできるのだろうか……。

 少なくともリタには難しい事だけは分かってしまった。


「あぁ、ごめんなさい。それで宿代の事なんだけど、事情を鑑みてシングルベッドの部屋で、一泊小銀貨4枚と大銅貨5枚でどう? 朝食はサービスするよ。これ以上は他のお客さんとの兼ね合いもあるし正直ギリギリ。もっと下げるとなると、夕方から料理の手伝いをしてもらうとか…。それでも大丈夫なら小銀貨4枚、いや小銀貨3枚と大銅貨5枚。そして料理を手伝ってくれるなら賄いも出せるかもしれないね」


「ありがとうございます、表に書いてある値段より大分負けていただいて……。夕方から調理のお手伝いも魅力的ですが、私が夕方宿にいない可能性もあるので、銀貨4枚と大銅貨5枚でお願いします。先に今日の宿泊代分払いますね。あとは泊まる日数が決まってからまとめてお支払いします」


 そういうとお母さんは麻袋から小銀貨5枚取り出して支払った。これで家から持ってきた金銭はほとんど残っていないはずだ。これから先の生活はあの臨時収入に頼ることになるだろう。

 少しでも節約をしたかった。私は夕方空いているし、料理もお母さんより得意。

 もし、私が厨房で働いてもいいならこの話は受けておきたい。


「すみません、女将さん。夕方からの厨房の手伝い、私じゃあダメですか?」


 突然会話に参加したリタに少し驚きながらも考えてくれた。


「リタちゃんは料理できるのかい? さすがに経験がないならお願いできないけれど」

「私、お母さんと同じくらい料理得意です。それに、盛り付けや配膳も頑張ります!」

「うーーん、お母さんがそれでいいならうちは大丈夫なんだけど…」


 リタも女将さんにつられてお母さんを見る。


「リタ、これはお手伝いじゃなくてお仕事なの。でも、それがわかっているならお願いしたいわ。女将さんの言う事をよく聞いて、それから怪我はしないようにね?」

「うん、頑張る」


 決意を新たにすると、女将さんが手を伸ばしてきた。


「じゃあこれからは、同じ店の店員同士だ。女将さんじゃなくて、『ミレーヌ』って呼んでくれ。これからよろしく、リタちゃん」


 これはきっと握手だろう、本で読んだ知識からそう判断したリタはミレーヌの手を握り挨拶する。皮膚が硬くしっかりと鍛えられた手だった。


「こちらこそ、よろしくお願いします。ミレーヌさん」

「あとで厨房にいる旦那も紹介するけど、怖がらないようにだけお願い。顔は怖いけど、心は優しい旦那なんだ」

「頑張ります…」


 フィルのお母さんがミレーヌさんなら、お父さんが犬獣人って事だろう。それにここは冒険者の宿。怖がらないように今から覚悟をしておくべきだろうか。

 一応覚悟を決めるために、旦那さんを紹介してもらうまでこのまま席で待つことにした。

 もうすぐラストオーダーの時間、それが過ぎたら厨房も落ち着くのだろう。

 それまでの間、お母さんと2人でいろいろな事を話した。



 食事客が帰り始め、厨房が止まったタイミングでミレーヌさんから呼ばれ、そのまま厨房に案内してもらった。


 初めて入る厨房は、大きな寸胴鍋や鉄鍋、茹で釜などありとあらゆる調理器具の揃った場所だった。

 道具は雑多においてある様に見えるが、規則的な配置で。何よりどこも掃除が行き届いている。

 そしてその中心で仕込みと後片付けをテキパキとこなす大男がいた。


「あんた、この子がさっき話した子だよ。料理が得意みたいだから、お母さんの代わりに明日からこの厨房の手伝いしてくれるそうだよ。怖がらせるんじゃないよ」


 そうミレーヌさんが声をかけると、大男が振り向いた。

 大きい…身長は見上げるほど高く、ドア枠に頭がぶつかりそうなくらい。自分の頭がお腹あたりの高さだ。

 体毛は黒く、こちらを見下ろす瞳は金色。そしてフィルに似た犬耳が生えているが、こちらの方が鋭い形をしているように思える。少なくとも気軽に触って良い雰囲気じゃない。

 あとフィルと比べて全身が毛深い、それも動物的な毛深さ、まるで毛皮のようにずっしりとしている。

 獣人の個体差というのはこれ程あるのか、とまじまじと観察に集中してしまっていた。


 …だから急に話しかけられても、驚いたりしていない。していない。


 イトラ、気が付かなくてもいいんだよ………。


「嬢ちゃんが明日から手伝ってくれるっていう嬢ちゃんか、よろしく頼むぜ。俺はダルフっていうんだ。他国で冒険者をやっていたが、ミレーヌと一緒になってからこの町で宿のオーナー兼料理人をやっている。これからよろしく頼むぜ」


 声が重たく響く、眉間に皺が寄り、厳しい目つきで私を見ている。こちらに歩きながら自己紹介する大男・ダルフさんは握手を求めるように手を伸ばしてきた。

 指が太く、手のひらで簡単に私の頭を掴めるほど大きい。このまま頭を掴まれると思ってしまうほどの迫力。しかし、その大きな手の平は顔の近くで止まり、やはり握手を求めていた。

 握手ってやっぱりこの地域の文化じゃないよね? 冒険者だから? それとも他国の文化だろうか……。

 


 ここにきてまだ自分がフードを深く被ったままだったと気が付き、慌ててフードを外す。

 仕舞われていた銀髪が広がり、素顔があらわになる。自分の失敗を誤魔化す様に笑顔で、そしてしっかりと目を見て握手する。


「はい! 明日からよろしくお願いします!」

「……嬢ちゃん、いや、なんでもねぇ。よろしく頼むぜ、嬢ちゃん」


 少し何か聞きたそうにしていた様に感じたが、なんでもなかったみたいだ。

 こうしてリタの初めての就職先が決まった。



 それから、泊まる宿の部屋まで案内してくれた。

 部屋は2階で、1階への階段が近く。何かあった時にすぐに受付まで声が届く距離だった。1階にはフィルちゃん家族の住居スペースがあり、夜中でも何かあれば声をかけて欲しいって言ってくれた。


 2階、共有の台所は、レンガでできた一般的な台所で、調理器具も据え置きで使ったら洗って元の位置に戻す仕組みだ。置いてある分の薪は自由に使って良い、無くなったら有料で受付に貰いに行く。

 自由に使っていいが、火の扱いには注意するようにとのこと。

 材料などは各自用意し、足りない物は多少融通してくれるそうだ。他の宿泊客もいるが、この宿に長期宿泊する人は現在いないため、ほぼ独占して使えるらしい。


 部屋は、シングルベットが1つに収納やテーブル、洋服掛けなど、必要なものは最低限揃えてある部屋だった。掃除も行き届いていて、清潔。

 数日に一度掃除に来るので、その時は貴重品などを持ち歩くか、仕舞ってカギをかけておくようにしてほしいと言われた。

 本来なら有料だが、桶とお湯はサービスしてくれるので、毎日体を洗うことが出来そうな点は特に嬉しかった。



 一通りの案内と説明を受け終わり、明日の朝食を取る時間まで自由になった。

 疲れて眠くなった体に鞭を打つ気持ちで部屋に入る。部屋までずっと羽織っていたローブを壁にかけ、服を脱ぐ。そのままベッドへ倒れこんだ。


「リタ、お母さんお湯貰ってくるから、先に休んでいて、それから―……」


 お母さんの声を子守歌にして、そのまま眠ってしまった。



 朝、目が覚めるとお母さんが隣でまだ寝ていた。寝顔は穏やかだが、少し涙の跡がある。自分の前では気丈に振る舞うけれど、本当は、1番悲しんでいるのはお母さんなのだ。

 お母さんの腕から抜け出し、ベッドから出る。


 ……そうだ、昨日は疲れてそのまま眠ってしまったのだ。そこまで思い出して、体がやけにさっぱりしている事に気が付いた。

 それに見覚えのない寝間着を着ている。


 もしかして、お母さんが寝ている自分の体を拭いて、宿の余っている寝間着を貰ってきて着替えさせてくれたのだろう。

 今も眠っているお母さんに感謝の気持ちを伝えたくて、でも起こしたくは無くて。


(ありがとう、お母さん)


 そっと、お母さんの頭を撫でた。



(イトラ、起きてる?)

(起きてるわよ、何の用?)

(別に用ってわけじゃないんだけど、お母さん起きるまで時間あるから話でもしたいなって思って)

(そう、まぁ好きにしたら? 気が向いている間は付き合ってあげるわ)


 イトラは、口調は素っ気ないが優しい。本人に言ったら怒りそうだが、少なくとも自分はそう思っている。

 そもそもイトラって何なんだろう。

 聞いても答えてくれなかったし…。魔力を必要としていて、自分の魔力は質が良くて心地が良いという。

 話しかけても答えてくれない時もあり、あとで聞くと寝ていたと言っていた。

 いつか、イトラについて教えてくれると信じて別の質問をする。


(昨日イトラが使っていた魔力のアレは、魔法じゃないって言っていたけど。私が頑張ったらいつか出来るようになる?)

(無理ね。あなた、魔力の質はそこそこに良いし、“視えている”から『聖術』は使えるだろうけど、昨日のあれは別物。あれは私たちにしか使えない力だから)

(そうなんだ………よくわからないけどショック…。じゃあ聖術って何? 初めて聞いたんだけど)

(人間の使う魔法とは違う、魔力の使い方の1つだと思ってくれればいいわ。それなら、あなた使えるからいつか教えてあげる。そして質問は終わり、すべてを1から説明する気はないの)


 そうしてイトラは黙ってしまった。

 今回わかった事は、自分がイトラの真似は出来ない事。あと魔力に質というものがある事。

 たしかに自分の魔力らしき物と、体内のイトラの力は全く違うように感じるからこれが魔力の質…かな?

 だた、聖術というものは真似できるらしいので、少し嬉しい。

 いつ教えてくれるだろう、楽しみ。



 1人で十面相しているとお母さんが起きた。

 昨日話せなかった今後の予定について確認したいのだ。


「お母さん、おはよう。体調とか大丈夫?」

「おはよう、リタ。お母さんは大丈夫よ、リタも平気?」

「うん…。昨日はありがとう、体拭いたり着替えさせたりしてくれて。お母さんも疲れてたはずなのに…」

「いいのよ、リタはすごく頑張っているんだから。もっとお母さんに甘えなさい」


 嬉しいけど、恥ずかしいのでお母さんに抱き着いた。

 すこしやつれたように感じるがいつものお母さんの匂いだった。それから幸福を貯めるようにしっかりと息を吸い、満足するまで体を預けた。

 落ち着いてから着替えて、これからの予定について話し合いをした。


 お母さんはこれからトムじいさんのお店で働きながら、この町で生活できるよう備える。

 昨日の追手から貰った金銭を数えると、銀貨34枚分。

 今日からこのお金とお母さんの稼ぎで生活していくことになる。(短剣の金貨は含めない物とする)

 当分の間この宿にお世話になるとしても、一泊ごとに小銀貨3枚と大銅貨5枚。朝食はついていても、夕食は自炊。

 ひと月約銀貨11枚+夕食や日用品の購入。宿代だけでも正直かなり高いが、安い宿では安心できないので下げられない。そこらへんも含めてトムじいさんに相談することに決めた。


 そのままお母さんと朝ご飯を食べに行く。

 すること、気になること、たくさんあるがこの町で少しずつ解決していこう。まだ生活は始まったばかりなのだから。





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