【第5話】
お土産を大量購入してしまった。
「凄い買ったねぇ」
「エドさん、どれほど持ち込んだんですか。洒落にならないぐらい購入しましたよ」
「とりあえず次の給料日までは困らない程度の額だよぉ。財布に入るだけ入れてきたぁ」
「お金持ち……」
ショウは目の前に積まれたお土産の山を見て呆然と呟く。
エドワードと一緒に入ったお土産屋で購入したものは、月餅や冷凍の餃子や焼売といったお土産としては一般的な代物ばかりだ。中にはナッツ類を散りばめた直方体のお菓子も購入したが、試食で出ていたその商品を食べてみたらとんでもなく美味しかった。初めて食べたが、あの1口でショウはあのお菓子の虜になってしまった。
胡麻が効いたあんことナッツ類の相性が絶妙である。エドワードも試食を食べてあまりの美味しさに銀灰色の双眸を見開き、買い占めようとする彼をショウが必死になって止めたのだ。それでも3箱ほど購入していたが。
積み上げられた大量のお土産袋を抱えたエドワードは、
「まあ、持って帰るのは大変だけど十分に楽しませてもらったんだから街に還元しないとねぇ」
「オーダー式ビュッフェのレストランでも大量に食べましたもんね」
ショウはその時の光景を思い出して苦笑を漏らす。
オーダー式ビュッフェのレストランはやはりお昼時ということもあって満席の状態であり、2時間制という時間制限を設けられてしまった。それでもエドワードが片っ端からメニューを頼んでは物凄い勢いで消費していくので、店員もショウも呆気に取られたものである。
でも料理はどれもこれも美味しかった。ほとんどはエドワードが消費してしまったが、どの料理もつまみ食い程度の少量ずつを食べることが出来たので嬉しい限りである。やはり食べることに関してはエドワードと一緒に来るのが1番かもしれない。
「でもオーダー式ビュッフェの代金がいつのまにか精算されていたのは納得できないんですが。最後まで払わせてくれませんでしたね」
「だから言ったじゃんねぇ、彼女ちゃんにお金を出させる訳にはいかないのぉ」
エドワードは「それにぃ」とショウの頭を撫で、
「今日はショウちゃんに目一杯楽しませてもらったんだからぁ、その対価ぐらいは払わないとねぇ」
「それは俺もおあいこです。ここは初めて来た場所で、エドさんと一緒だからたくさん楽しめました」
色々なものを食べることが出来たのも、エドワードが大食漢だからだ。
ショウは胃袋も成長したとはいえ、まだそれほど多くを食べることが出来ない。でもエドワードが一緒だとショウがお腹いっぱいで残したとしても食べてくれるし、ショウに1口分け与えてくれたりもするので色々な味を楽しむことが出来た。本当に感謝しかない。
ショウはエドワードの手のひらに擦り寄り、
「エドさんに1口をたくさんもらっちゃいました。いっぱい色んな味が楽しめてよかったです」
「ショウちゃんは1口が小さすぎるのよぉ。もっとあげてもよかったんだけどぉ」
「1口で十分過ぎます」
ショウの言葉に、エドワードは「そぉ?」と応じる。
「じゃあまた連れてきてもらおうかなぁ、今度はどんな美味しいものが食べられるかねぇ」
「それについては自信がないですね」
「ええ? どうしてぇ?」
怪訝な表情を見せる先輩に、ショウは理由を話す。
「この世界に繋がったのは一時的なものです。神様が繋げてくれたんですが、全てが終わったらもう繋がらない可能性が高いです」
そう、ショウが生まれ育った世界に繋がったのは一時的なことだ。この世界にはもう二度と来れない可能性だってある。
訪れることが出来たのは――そしてエドワードたちを連れてくることが出来たのは、神様による粋な計らいのおかげだ。二度目はもうないかもしれない。
エドワードは銀灰色の双眸を瞬かせ、
「ショウちゃんさぁ、忘れてなぁい?」
「何がでしょう?」
「俺ちゃんたちは問題児だよぉ、世の中の理なんか無視だよ無視ぃ」
そんなことを言うエドワードは、
「だからきっとユーリが異世界を訪れる方法なんて見つけちゃうよぉ。我らが天才魔女様にやって出来ないことはないんだからぁ」
「そうですね、ユフィーリアならきっと見つけてしまうかも」
あの最愛の旦那様は自他共に認める魔法の天才だ、きっと異世界へ訪れる方法も魔法で見つけてしまうかもしれない。そうなったら、またエドワードを連れて美味しいものを食べにいくのもアリだ。
「じゃあショウちゃん、帰ろっかぁ」
「エドさん、俺も荷物を持ちますよ」
「じゃあこれだけお願いねぇ」
エドワードから月餅が詰まった袋を手渡され、ショウは仲良く並んで帰路を目指す。
さて、次はどこに行こうか。エドワードと一緒ならば、今度は食事の祭典なんかに行くのもありかもしれない。彼は肉料理が好きだから『肉フェス』なんてものに連れて行ったら大変なことになりそうだ。その時は、ストッパー役としてユフィーリアについてきてもらった方がいいかもしれない。
他にはどこだろうか。ホテルビュッフェや海の家、美味しいものを提供する場所はたくさんある。願わくは、用務員のみんなと美味しいものが食べたいものだ。
そんなことを考え、ショウは次の異世界デートに思いを馳せるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます