なんでこんなに気にしちゃってるのよぉ!
まえがき
こうやって新しいのを書いていくと、即座に反応してくれる人が何人も……非常にありがたいです! ものすごく励みになります!
というわけで、もう一話行きましょう。
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私は純血のヴァンパイアクイーンにして、この世界の魔王……エスフォリーナ。数千年もの間全ての魔族の頂点に立ち、誰も手の届かない、遥か高みにいる高潔な存在よ。
対立する人間との戦闘だって、何度も生き抜いてきた……
それなのに———
「安心してください。幸せにしますから」
「あっ、その、えっと、よ、よろしく……」
———それなのに、なんで人間と……しかも勇者と付き合うことになってんの!? そんなっ、そんな経験ないのに!
私はただ、人間側に新しい勇者を召喚されないように先手を打っただけなのに、いざ召喚された勇者は私のことを全く恐れないし……それどころか私のことを、かわっ、可愛い、なんて———
っっ~~~~~~~~!!
私は魔王! あなたは勇者!
立場が違うのよ! 立場がっ!
それなのに可愛いだとか、けっ、けけけけ結婚だとかっ!
どうしてそんな恥ずかしいことを堂々と言えるのかしら!?
『幸せにします』なんて、そんなしっかり言い切られたら……
……ちょっと気になっちゃうじゃないの……。
———ハッ!?
違っ、こんな熱烈に求められたのが初めてだからって、楽しみなんかじゃないから!
「魔王様?」
「ひゃわっ!?」
突然声を掛けられ、ビクッと肩を跳ねさせるエスフォリーナ。白磁のような美しい肌が、見て分かるほどに赤く染まっている。
「なっ、何よ! 突然声をかけないでくれる!?」
「いや、その……魔王様が唸りながら頭を振ったり掻き毟ったりしてるから……せっかくの綺麗な髪が痛みますよ」
「きれ———だからっ、私は魔王であなたは勇者なのよ!? そんな口説き文句みたいな———」
「魔王様は、俺と付き合うのはやっぱり嫌ですか……?」
「そっ……んなこと、言ってないじゃない……」
「ツンデレ!? ツンデレですか!? 完璧です! 今のものすごくキュンッと来ました!」
「意味不明なこと言わないで! 勇者のくせに生意気よ!」
私がそう言うと、勇者は急に曇ったような表情になる。ついさっきまでの笑顔が嘘のような、心から悲しそうな表情だ。
「ど、どうしたのよ急に……さっきまでの元気はどうしたの?」
「その……せっかく付き合うことになったのに、俺のことを名前で呼んでくれないんだなって」
「……あなたも『魔王様』って呼んでるじゃない」
「いきなり名前呼びは距離詰めすぎかなって……はっ! 名前で呼んでいいってことですか!?」
「いやっ、そのっ……だいたい、魔王の私に先に名前で呼ばせようだなんて生意気じゃない! そんなに言うんだったら、あなたから先に名前呼びにしたらどうなの、勇者くん!?」
「それは確かに! なら…………エスフォリーナ」
「っ————」(トクン……)
トクン……じゃないわよ!
何トキメいちゃってんの私!?
というか今の流れ、なんか私が名前で呼んでほしいみたいに聞こえるじゃない!
っ……私をこれほどまでにドキドキさせるなんて……これが異世界の勇者の力……!!
「エスフォリーナ?」
「ひんっ」
「可愛いです、エスフォリーナ」
「やっ、あッ」
「エスフォ———」
「気安く私の名前を呼ぶんじゃないわよ!!」
「えぇ……」
顔が熱い、心臓がうるさい。
名前を呼ばれただけなのに……なんでこんなにドキドキしてるのよぉ……
「じゃあ、俺のことを名前で呼んでくれますか?」
「し、仕方ないわね……この私に名前を呼ばれることを光栄に思いなさい!」
「はいっ!」
「す、素直でえらいわね……い、いくわよ? りっ、りゅ……
っ~~~~~!
ぶわぁっと顔が熱くなる。
なんで名前を呼ぶだけでこんな恥ずかしいわけ……?
私、そんなに彼のこと意識しちゃってる?
人生初の彼氏だからってそんな……私は魔王なのよっ!
色恋沙汰にうつつを抜かしてる場合じゃないわっ!
……でも、名前を呼んだだけでそんな嬉しそうな表情をしてくれるなら、やってみて良かった───
じゃなくて!
「これで満足したでしょ! ほら、ついてきなさい!」
「ついてきてって、どこに行くんです?」
「もちろん、パパのところよ。あなたを紹介するの」
「えっ」
次回 勇者、死す!
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もしよければ、私の他の作品『アネックス・ファンタジア』と『Supremacy World Online』もぜひご覧ください!
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