異世界召喚された俺、チョロイン魔王様が可愛すぎてとてもつらい。

風遊ひばり

異世界に転移したら彼女ができた

まえがき


近況ノートでも言ってた、ラブコメにも挑戦。何も考えずにノリのまま書いてます。

(アネファンやSWOをちゃんと書けってね……)


それらを書いてる筆休めで書いてますので、SWOと同じく不定期更新かと……ただ、せっかく書いたから読んでもらいたいだけ。


─────────────────────


 爽やかな風が吹き抜ける、高校1年のある日……下校中にそれ・・は突然起こった。



「なっ……!?」



 突如として足元に現れた、円形の光。それは見事な幾何学模様を描き、どこか現実離れした雰囲気と共に俺の身体を包み込む。


 俺の頭は、この状況を一瞬で理解した。つまり……


 異世界召喚キタ———ッ!?

 始まっちゃう?

 俺の物語始まっちゃう?

 しっかたねぇなぁ! いっちょ勇者になって世界を救ってやるかぁ!


 興奮を抑えられないまま、直視できないほどに目映く輝く魔法陣に目を閉じる。


 ほんの僅かな浮遊感。

 次の瞬間、一人の男子高校生の姿は完全に消え去っていた。



        ♢♢♢♢



 次に目を覚ました時には、見たこともない景色が広がっていた。


 石造りの、かなり広い部屋。

 火でも電灯でもない光を灯すシャンデリア。

 間違いない、ここは異世界だ!

 異世界……であってくれ!



「よく来たわね、勇者くん」


「っ!?」



 俺の願いが叶ったのだろう。

 鈴の鳴るような美しい声が、俺に向けて『勇者』と声をかける。


 これは確定。

 俺は勇者として異世界に召喚されたんだ!

 この後、超可愛い王女様に魔王の討伐をお願いされて───



「あれ……?」



 顔を上げた俺の視線の先……一段上がった壇上の王座に座る少女は、確かにこの世のものとは思えないほどに美しい。


 柔らかそうな、細く輝く金糸の髪。

 万華鏡を覗いているかのような幻想的な虹色の瞳アースアイ

 元の世界のモデルやグラビアなんかも目じゃないぐらい、完璧なスタイル。


 とんでもない美人。

 美人だけど……


 頭に生えた、二本の太い角。

 コウモリのような翼。

 そして、口から覗く鋭い牙。



 ……あれ? これ人間じゃなくね?



「私は魔王・・エスフォリーナ……あなたを召喚したのは、この私よ」


「えっ……魔王ですか? 人間の王女様じゃなくて?」


「私を矮小な人間と一緒にしないでちょうだい。私は由緒正しき、純血のヴァンパイアクイーン……人間より遥かに上位の存在と思いなさい」


「そ、そんな……」



 俺の異世界チート無双の夢が……

 てか、なんで魔王が勇者召喚してんの!?

 それやったら物語が即終了じゃん!



「なんで魔王が俺を……?」


「簡単な話よ。最近になって、人間が新しい勇者を召喚しようって動きを見せてたからね……私が先に召喚しちゃえば、人間側の戦力の強化を防げるでしょ?」


「そんなラノベにあるまじきストーリー破壊行為……俺を召喚してどうするつもりなんだ……はっ!? まさか、脅威にならないように先に殺そうと———」


「殺す? まさか、そんなもったいないことしないわよ」


「……え? もったいない?」


「だって、あなたをこっち側の戦力にするつもりだもの。この私の下で働けるのよ? 喜びなさい」


「いや、それは……」


「何よ、嫌って言うわけ? 今なら衣食住完備よ?」



 ふむ、衣食住完備とな?

 ……あれ?

 なんだか『魔王』っていう肩書と言動のギャップが……。



「……もう一声」


「我儘ねあんた!? ……仕方ないわね、あなたの部屋も用意するし、専属のメイドも用意してあげるわよ?」



 なんだかんだ言って、こっちの要求を呑んでくれるのがとても優しい。魔王って聞いた時は絶望したけど、意外と悪い人ではないのか?


 それなら……



「専属メイドよりも、魔王様にサポートして貰いたいなぁ……」


「……は? 何言ってるのよ。私はヴァンパイアクイーンで魔王なのよ? なんであんた世話なんかしなくちゃいけないのよ!」


「だって魔王様めちゃくちゃ可愛いし。そんな可愛い人にお世話してもらえるなら、俺は人間側に寝返ることなんてないだろうなぁ……」


「か、かわっ……初対面で何言ってるの!?」


「いやホント! めちゃくちゃ可愛いよ! 今まで俺が見てきた中で一番!」


「一番だなんて、そんな……えへへ……し、仕方ないわね! 私が面倒見てあげるわ。感謝しなさい!」



 チョロ—————————っ!?

 異世界の魔王チョロッ!

 なにこの可愛い生き物!?



 この辺りから普段の自分を取り戻した俺の猛攻は止まらない。



「つまり俺と魔王様との同棲生活ってことですね! はっ……つまり夫婦ってことなのでは……?」


「ふ……!? 何バカな事言ってんのよ!」


「だって男女が同じ家で同居なんて、それ結婚みたいなものでしょ?」


「そ、そういうのは好きな人同士でって———」


「なら大丈夫です! 俺、今魔王様を好きになりました!」


「なんでこんなにグイグイ来るの!? だいたい名前も知らない相手となんて———」


「俺、國都くにみや 龍斐りゅうひっていいます!」


「ちょっ……圧が———」


「……まぁ、いきなりそんなこと言われても怖いですよね。なら、まずは俺と付き合ってくれませんか!?」


「付き合うなんてっ、私は魔王であなたは勇者なのよ!?」


「そんなの関係ありませんよ! 愛さえあれば、種族の違いなんてちっぽけなものです!」


「あ、愛っ!? そんな、恥ずかしいことを堂々と———」


「恥ずかしいことなんてありませんっ! 重要なのは、お互いに歩み寄ることです。結婚とまでは言いませんので、俺と付き合ってくれませんか? というか付き合ってください!」


「っ!? あの、えっと……付き合うだけならいい……のかな?」


「ッッシャオラァァァァァッ!!」


「ひっ……」


「安心してください。幸せにしますから」


「あっ、その、えっと、よ、よろしく……」



 異世界に召喚されて5分。俺は人生初の彼女ができた。

 


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