第3話 表面上の悪と裏側の善
天界の裁判所は事件が山積みだ。それだけ世の中にクズが多いと言う事だ。
テミスが「次はこの事件」と言って私に資料を渡した。被疑者 早乙女 里
罪状 育児放棄 と書かれていた。資料に目を通す。事件は現在進行形だ。里は自分の娘を放置して頻繁に夜の街に行っている。娘はまだ2歳父親はいない。なので夜中は家に娘を残している。朝方になり帰ってくるとすぐに寝てしまう。そして夕方また出かけて行く。と書かれていた。私はテミスに「下界に行って参ります。」と言い出発した。里の家に行くと、里は寝ていた。里を起こし話を聞く「私は天界裁判所裁判官の香崎舞花と言います。貴方に育児放棄の罪状があります。」と言った。それを聞いた里はいきなり「この家から出て行って」と言い私を追い出した。帰る訳にも行かないので周りに聞き込みをした。周りからは良い見方をされていないようで良い情報は1つも無かった。次の日もう一度里を訪ねた。結果は一緒だった。すぐに追い出された。ここまでされては私もするしかない。書類に起訴妥当と押した。天界に戻りテミスと法廷に向かった。法廷では里が連れてこられていた。裁判が開廷する。テミスが話し始める。「被疑者の証拠が余りに不十分だと私は思います。よって被疑者は自分から話す事。」と言った。テミスが続ける「まず貴方は育児放棄をしていますか。」と聞いた里は「いいえ」と答えた。「では質問を変えます。夜の街に行っている事は認めますか。」と聞くと里は「はい」と答えた。私が「それを育児放棄というのでは。まだ娘さん2歳ですよね」と言った。里は涙を流した。そして話始めた。「仕方なく。父親が姿を消して稼ぐ力がなかった私は夜の街で働き始めました。もちろん娘と一緒にいられない事は問題だと思います。だけど娘と生きるにはこの方法でしかないんです。」と里は言った。テミスがガベルを叩いた。「被疑者は娘を見ていないのではなく見られない環境にある。周りが里を悪と言って印象を下げこのような誤解になってしまった。しかし里は善の為に働いていることを証明した。よって起訴不当としこの判決を無罪とする。」と言った。里は「ありがとうございます」と言って退廷した。1週間後里を訪ねるとまともな職につき娘と生活をしていた。こういう平和な裁判もあるのかと思った。しかし私は天界裁判所の真実を知らなかった。
神々の判決 文実に賭ける @sineitai
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