第4話
森の中でレベル上げに費やすこと、何週間か、何か月か。
あまり変わらない景色の中で昼夜問わずに動ける俺達の時間の感覚は結構可笑しい。
暗くなって明るくなったら1日って計算だけど、正確に何回明るくなったのかなんて数えてないし、洞窟とかに入ってたらずっと暗いしで、もはやこの世界に来てから何日経ったのか全く分からない。
それはなにも俺だけじゃなくて土屋もそう。
土屋の場合は俺の経験値酔いのことを考えながら敵を倒しているから1日の長さの把握は出来ていると言っていたけど、その1日を何回繰り返しているのかはそもそも気にしていないそうだ。
そんな俺のレベルも丁度5になった所。
土屋が言っていた通り、俺はレベル5なのにも関わらずレベル30オーバーの土屋の防御力と大差ない。
まぁ、防御力だけね。
最大HPはレベル5の割には少し高いね、程度。
そしてレベルが5になって初めてスキルが使えるようになった。
その名も「身構える」効果は防御力とスピードが上がるから敵の攻撃を受けるもよし、カウンター攻撃を狙うもよしな盾役にはピッタリのスキル。
後は敵のヘイトを集められるようなスキルがあればいいんだけど……それは次のレベルアップの時に期待するとしよう。
「レベルも5になったし、森の魔物も大体倒し尽くしちゃったし、そろそろ森を出て街を探してみようか」
森の魔物を倒し尽くしたって、なにをそんなサラッといってんの?
それ、結構大変なことなんじゃないの?
街を探しに行くのには賛成。
この世界の人達がどんな状況なのか知りたいし、意外と大丈夫そうならいい加減装備品が欲しいんだけど、先に確認しなきゃならない。
「森を出た瞬間魔物が物凄く強くなってたら、無理しないで森に戻ってくれる?」
RPGでお約束の“橋を渡っただけで敵のレベルが倍以上になってる!”みたいなことが起こらないとも限らないし、そうなった時、土屋は面白がって突っ込んで行っちゃいそうだし。
「んー、強い強くないの判断は俺に任せてくれるんなら良いよ」
俺に任せたらどんな魔物が出てきても強い認定だよ。
「うん」
「じゃあ俺からも。俺が無理そうなら逃げてね」
はっ!?
「む、無理そうってなに!?そんなの俺だって無理だよ!土屋?やっぱり森から出なくて良いんじゃない?ね?ね?」
「ふはっ。なら森から出て1番最初に会った敵だけ倒して今日は戻ってこようか」
そいつが物凄く強かったら……森に逃げてくればいいのか。
もし追いかけてきたら……森ごと燃やしてしまう?
うん、俺達は長い間森で戦ってきたんだ、森の外にいる魔物に、森の中で負けるわけがない!と、思おう。
「気を付けてね」
「んっ。ちょっと1匹倒してくるから、ここで待ってて」
軽快に走って行った土屋は、そのまま立ち止まりも構えもせずに魔物に向かっていき、呪文とかも唱えずに炎を出して攻撃をした。
その様子を見て改めて土屋が魔法使いだったことを思い出す。
森が火事になることに俺がビビッてからというもの、土屋は短剣で戦っていたからついさっきまで忘れてたんだ。
それを思うと俺は土屋に迷惑をかけてばかりだ。
だからって変にやる気を出して暴走して、森から出て自分も戦おうとするのは最も愚かだってのは理解できている。
言われた通り森の中にいることが、現地点で唯一の邪魔にならない方法なのだから。
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