第2話
広場に残っているクラスメートの中からパーティーを組んでくれそうな人を探そうと思っていた俺は、先にスカイ・ルリ・アクアマリンとミント・ワカバ・エメラルドの2人の説得をしようと茶山さんと2人で向かった。
一筋縄ではいかないと思っていたから色々と言い訳めいた言葉を用意して挑んだ説得は、スカイ・ルリ・アクアマリンにより、あっさりと許可された。
ただし、3人パーティーから4人パーティーと考えていた俺の提案は却下され、2人パーティーとの条件で、更には次に戻ってくる勇者と俺、その次に戻ってくる勇者と茶山さんと、勝手にパーティー相手を決められてしまった。
けど、異世界を攻略して戻ってくるのだから広場でスキル練習を続けている人よりも強者ではあるのだろう。
なら後は怖い人じゃないことを祈るだけか……出来るなら赤池君が良いなぁ。
とりあえず、帰還者が出るまでは待機というので俺は無駄だと分かっていながらも剣を握り、スキルの発動練習を続け、茶山さんも杖を握ってカカシを睨みつけていた。
結局、帰還者2人が出るまで1度も出なかったんだけど。
「俺のペアって油井?」
「じゃあ私は茶山さんか」
俺のペアはどうやら土屋のようで、既に詳しく説明を受けた後のようだった。
「じゃあ貴方達をそれぞれ送るわ」
そう言ってスカイ・ルリ・アクアマリンは、今までは1枚ずつ出していた異世界への扉を右手と左手で同時に2枚出し、俺と土屋を右の扉に、茶山さんと栗山さんを左の扉に放り込んだ。
一瞬の浮遊感と眩しい光に目を閉じ、次に目を開けた時には鬱蒼と生い茂った森が見えた。
思ったのとは違う……。
俺はてっきり召喚士とかがいて、転移してきた俺達に世界を救ってほしいーとかなんとか言ってくるのだとばかり。
「この世界の転移は人によるのもじゃなくて、世界そのものによる召喚って感じだな」
隣にいる土屋は周囲の確認をした後大きくジャンプして森を上から確認してから降りてきた。
流石魔法使い、空くらいは飛べるようだ。
「えっと、聞いてるかもしれないんだけど……俺の戦闘力ってゴミでさ、なんの役にも立てないと思う……その、先に謝っておこうと思って、さ」
「あー、うん。聞いてる。けどさ、戦力がないっても経験値は入るんだよな?なら俺が敵を倒してくうちにレベルも上がるだろ。正直、知り合いが隣にいてくれると精神的にすっげぇ助かる」
やさしい……と、思ったのは最初の数分だけだった。
確かに俺に対しては優しいんだけど、その他に対する容赦ってのがあまりないというか……この世界のことを単なるステージと捉えている感じだといいますか。
つまりは、環境破壊とか気にした様子が全くない。
早く森から出ようって張り切った土屋は、鬱蒼と生い茂る木々に炎の魔法をバンバンと放って火事を起こし、辺り一面を焼け野原に……。
こんな力技を使うのなら、始めに飛び上がって周囲を確認していた意味ってなんだったんだ?
「つ、土屋……なんか、気持ち悪い……」
しばらく破壊の覇者となっている土屋を眺めていると、急に気分が悪くなって、俺はその場にしゃがみ込んで動けなくなった。
「あ、そっか。油井レベル1だっけ。ゴメンゴメン、今消火するから少し我慢してて」
どうやら土屋にはこの気分の悪さの正体を知っているようで、今度は台風のような雨を降らせて本当に消火してしまった。
そしてそこからしばらく休んでいると、立ち上がれるまでには回復した。
「まだちょっと吐きそうだけど……マシになったよ。で……これはなに?」
転移してからというもの、俺達は眠くもならないしお腹も空かないような体になったので、食べ過ぎとか食あたりとかそんなものではない筈。
そもそもなにも食べてないし。
「経験値酔いだよ。1日に取得できる経験値には上限があるらしくて、レベルが上がる度に上限も増えるっぽいんだ」
そんなシステムがあったのか、知らなかったよ。
「経験値酔い……すごい言葉だな……」
「まぁー俺が勝手にそう呼んでるだけなんだけどな。でも経験値稼ぎまくってる時に気分が悪くなるからさ、多分合ってるよ」
経験値を稼ぎまくっていたのか。で、今の俺もその状態だったと?
火事を起こしたせいで、一体どれだけの生物が……。
「……魔物以外は殺さないようにしよ?森も、燃やしちゃ駄目だよ」
経験値酔いを起こすからとかじゃなくて、やっぱり環境破壊とか大量虐殺は例え魔物相手でもダメっていうか……いや、この森の中に魔物しか生息してなくて、近くに人間が住んでいないっていうんなら、まぁ……あれだけど、普通に動物がいるかも知れないし、人だって住んでいるかも知れないのに、確認もせずに燃やすのはどう考えても駄目だ。
「んー、レベル1の炎魔法だから木とか草とか弱い魔物以外は結構平気なんだけど、まぁ、確かに地球基準に考えると派手だったな。ゴメン、怖がらせるつもりはなかったんだ」
え、っと……え?森の大火災が大したことないレベルなの!?
異世界って凄いんだな……。
魔法って概念がある時点で地球での常識なんかじゃ測れないってのは頭では分かってたんだけど、実際に目にすると全然違うわ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます