異世界をコンビで生き抜こうと思います

第1話

 クラスごと異世界に連れて来られてどれ位経ったのか、俺は最後の最後まで「ゴミ」だと言われた5人の内の1人だ。

 なんとかギリギリ剣士としての力を出せたのか、一応勇者として広場に来ることを許された2人の内の1人。

 俺よりも「ゴミ」と言われた黒田と桃井がどうなったのかは分からないが、もう1人いた藍川がどうなったのかは知っている。

 エンジ・シュウ・ローズクォーツに逆らって燃やされたんだ……地球へ転生させたといっていたから、今の所唯一の帰還者ってことではあるのだろうが、「ゴミ」呼ばわりされて燃やされるなんてどんな気持ちで受け入れたら良いんだよ。

 ザコモンスターにすら勝てずに死ぬだろうと言われて、どうやって勇者として目覚めれば良い?

 分からない……怖い……。

 「ねぇ、油井君……。私達、これからどうなるのかな……」

 最後の最後まで「ゴミ」だと言われたもう1人である茶山さんが、剣を素振りしているクラスメートの方をボンヤリと眺めながらボソリと呟いた。

 俺達は揃ってザコにも勝てないし戦いの才能もないと言われたけど、それでも僅かに俺は剣士の、茶山さんは魔法使いの素質があったから勇者として広場にいる。

 けどさ、勇者として異世界に送り込まれるには「スキルの発動」という難関があった。

 ゴミである俺達に、戦いの才能がない俺達に、スキルの発動なんてできると?

 できる訳がないのだ。

 クラスメートのほとんどが既に勇者として活動を始めた頃になっても、俺は無駄に剣の素振りを続けるしかない。

 俺達以外のクラスメートは、スキルが打てる一歩手前って位には気迫も力も感じられるし、種族っていうのかな?もはやただの人間じゃない。

 素振りを続けるだけでも、本来ならばステータスアップの要素はあるようで、皆は練習用にと配られた剣を片手で大きく振り回しているし、広場をランニングするスピードも人間とは思えない。

 今、この瞬間に皆が地球に戻れたとしたら、須らく皆なにかしらの金メダリストだ。

 これからどうなるのか……そんなの、俺の方が聞きたいって言いたいけど、異世界に来てから今日まで俺は茶山さんに結構情けない姿ばかり見られてるから、なにか勇気付けられるような言葉を……。

 「……俺、達は……その、ゴミだし……1人じゃ異世界に行っても、なにもできない」

 いや待て俺。

 こんな言葉では誰も勇気付かないし、言ってる俺まで絶望的な気分になってきた。

 「分かってるわよっ!」

 ここでなんて言うのが正解なんだろう。

 俺はなんて言われたら勇気付く?

 なんて言われたい?

 分からない……きっと励まされたって適当なことを言うなって思うし、哀れだって共感されたって腹立たしいだろう。

 この先、勇者として異世界に放り込まれたら最後、その世界で俺達は死を迎えるのだ。

 そんな死を待つだけの俺は……生き残りたい?

 そうだ、生き残りたいんだ。

 ゴミほどの力しかない俺達が生き残るにはどうすれば良いのか……確実に単独行動をとるべきではないし、だからってゴミの俺達が一緒にいた所で意味はない。

 じゃあどうするのか。

 「他の、強い人と組んで勇者パーティーになれば良いんじゃないか?誰か、強い人の!」

 この広場に居座るという方法もあるけど、いつ異世界に放り込まれるかも分からないんだ。

 俺達がしぶとく生き残るにはそれしかない。

 「私達と組んでくれるような人がいるかな?それに、アイツらがそれを認めてくれるのかもわからないじゃない」

 確かに、スカイ・ルリ・アクアマリンとミント・ワカバ・エメラルドの2人が駄目だと言えば駄目なのだろうけど、あの2人は俺達に1つでも多くの異世界を解決して欲しいから1クラス分の人間を地球から転移させ、勇者に仕立て上げたのだろう。

 異世界攻略には前向きだけど、1人じゃ嫌だからパーティーを組ませてほしい。そう提案すれば許可が下りる可能性はある。

 いい加減頭の整理もついたんだ、ここに連れて来られた時みたいに泣きながら懇願するようなことはしないさ。

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