第7話
勇者として問題がありそうな栗原の行動だけど、栗原は白属性と黒属性で言う所の黒属性らしいので、黒の勇者としては特別可笑しな行動ではないそうだ。
そう藍川君に聞いて、じゃあ他の黒属性の勇者として召喚されている茜谷さんを見てみたら、魔王として魔王城に住んでいるという衝撃的な光景を見ちゃったのよね……。
やっぱり、油井君と土屋君のペアが1番平和だし、見ていて幸せな気分になる。
「……あれ?」
水晶に栗原を映しながら、それでも脳内では油井君と土屋君を思っていた訳なんだけど、水晶の中の景色が少々不穏になっていることに気が付いた。
仲間を囮にすることが十八番の栗原だけど、囮にするために仲間をモンスターの群れに向かって放り投げた拍子にバランスを崩し、逃げ損ねたのだ。
他の仲間達は、敵中に残る形になった栗原を助けようと戦ってはいるけど……。
「勇者様ぁ!」
仲間の1人が栗原に向かって叫び、耳を塞ぎたくなるような叫び声が長く聞こえた。
ゆっくり立ち上がり、藍川君やカロンがいる部屋を覗きに行ってみれば、ベッドの上には栗原が眠っている。
死んだか。
「藍川君、コレの貢献ポイントって高いの?」
栗原を指差し、どうしても名前を呼びたくなくて“コレ”と発言してみても、栗原はいくつもの異世界を救った勇者に変わりはない。
1つの異世界も救えず、ただのゴミとして過ごしている私とは、比べ物にならない程のポイントを貯めているんだろう。
「あー……クリアした異世界数にしては少ないな」
あれ。
どうやらそんなに多くはないらしい。
「人を囮に使っていたから?」
パッと考えても、ジックリ考えても人としてどうかしてる行動だと思う。
私はそれで殺されたのだし。
「囮は……そこは、ポイントとしてはプラスなんだ」
やっぱり黒属性は悪い行動をするとポイントがたまるような仕組み……だとしたら、終始最低な行動をとり続けていた栗原が、クリア数にしてはポイントが低い理由は?
「減点される要素はどこだったの?」
1つの世界で100人以上の犠牲者を出さないと駄目とか、なんかそんな感じだったとか?
「単純なことで、白属性は人間側の勇者として召喚されて、黒属性は魔物側の勇者として召喚されるんだ。けど栗原は人間側の勇者として戦い続けたからな……」
あぁ……そういう……。
「じゃあ私、戻るわ」
部屋を出て、しばらく立ち止まったままいると、部屋の中から栗原の困惑したような声が聞こえてきて、藍川君は私にしたような説明を栗原にもしている。
ポイントが付与されていること、クラス全員で地球に転生すること。
「まだ皆ここにいるってこと?」
「死んだ奴らは皆ここにいる。半数位はまだ勇者として生きてるぞ」
半数は死んじゃったってこと……なんだね。
「……茶山さんもいるぞ」
ちょっと藍川君、なに言ってんの!?
会うとか言われたら物凄く気まずいんですけど!?
「どうして急に茶山さ……あぁ、そう。ねぇ、油井君は?」
うん、コイツ私のこと忘れてやがったな?そしてどうして油井君なのさ!
「油井は土屋と2人で異世界攻略中」
「生きてんの?じゃあ油井君は当たりだったんだー。茶山さんってさ、すぐに体調崩すしほんと迷惑だったんだから。いいなー土屋君。私も役に立つ仲間が欲しかったー」
しゃらくせぇ。
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