第5話
油井君が生きていると分かったものの、ここまで長居しちゃって良かったのかとカロンの方を見れば目が合って、微笑まれる。
「わ、私まだここにいて良い……ですか?」
最初カロンは好きなだけいて良いって言ってたけど、1週間とか2週間のつもりでいたのかも知れないし……。
「私は貴方達27名の転生管理を任されていますし、ここには人数分の部屋数もありますので。それに、現在誰1人として転生された方はいなくて、皆様ここに留まられておりますよ」
27部屋以上あるって、どんな豪邸?
いや、それよりも転生した人が1人もいない?
「皆ここにいるの?」
「死んだ皆はここにいるぞ。皆揃って転生した方がカロンも楽だし、皆一緒って安心感で幸福ポイントも高まると思ってさ。茶山さんもカロンになら協力しても良いって思うだろ?」
「もちろん。でも、早く転生したい人もいるんじゃないの?」
早く転生したいからって、まだ生きている人に対して“早く負けろ”なんて感情を抱いてしまったら、幸せポイントどころじゃないんじゃない?
私は油井君と土屋君に死んでほしくないから、何年でも、何十年でも待ちたいんだけど、全員がそんな考えじゃないのは分かる。
「そういう奴らには眠ってもらってるんだ。コールドスリープ、みたいな?」
魔法のスリープみたいなものね?
なんとか状況が整理できた所で自分の部屋……私が借りた部屋?とにかく、元いた部屋に戻って水晶を覗き込んでみると、なにも映し出されていなくて、そこで水晶は見ている人がいなければ電源が切れるようになっているんだと知った。
電源って表現は間違っているんだろうけど……。
「……栗原を見せて」
本当は見たくはない筈なんだけど、ふいに今どうしてるのかが気になってしまって、水晶に呟いていた。
ボゥと映ったのは、未だに勇者として活躍している栗原の姿で、その隣には見知らぬ魔法使いが栗原のサポートをしている。
見覚えがないということは、恐らくは異世界にいた冒険者を仲間にしたんだと思う。
だけど、一緒に戦って魔王を倒そうって志ならもう少し強そうな冒険者を選ぶようなものじゃない?
ゴミ認定されていた私がいうのもなんだけど、魔王を倒す勇者の仲間にしては、少し頼りない。
栗原からしてみれば、いちいち経験値酔いを起こさないってだけで優秀な仲間なのかもしれないけど……。
「油井君を見せて」
一旦なにも移さなくなった水晶は、ボゥっと望んだ人物を映してくれる。
頭から麻袋をかぶせられ後ろ手に縛られている油井君と、気絶しちゃってる土屋君が馬車の荷台に乗せられている所を。
2人は意識がないみたいで、荷台がガタガタとバウンドする中で身体が荷台に打ち付けられても反応がなく、まるで人形のようにされるがままだ。
生きてるのよね?
それより、土屋君までこの状況ってどういうこと?
この人攫いが物凄く強いってことだよね?
もしかして魔王の手下とかだったりする?
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