第4話

 体を揺さぶられる感覚がして目を覚ませば、草原のような広々とした場所にいた。

 ここが、灰色の世界?灰色っていうから、もっと色のない世界かと思ってたけど、草原は緑だし、空は青く、雲は白い。

 「黒田、大丈夫?」

 うん、特に痛い所もないし記憶が混乱している訳でもないし、大丈夫かな。

 「俺は問題ない。百瀬は?」

 「え?あぁ……大丈夫。で、ここなんだけど……」

 周囲を見回している百瀬につられて周囲を眺めてみても、草原が続いているだけの光景に変わりはない。

 他の物は、特になにもないな。

 「とりあえず、人か街を探そう」

 こうして1日中歩いて分かったことがいくつか。

 腹が減らないし、喉も乾かないし、歩き疲れないし、誰にも会わない。

 人がいないというよりも生き物の気配がしない……鳥1羽、虫1匹すら見ない。

 「ちょっ!黒田、これ見て」

 不思議な感覚に浸っていると急かすように俺を呼ぶ声が聞こえて、振り返った先にはステータス画面みたいなものを見ている百瀬がいた。

 「どっから出したんだ?」

 「俺が出したんじゃない。ここに浮いてた……そんなことは良いから、読んで」

 異世界らしい、ガイドライン的なものだろうと思いながら画面を覗き込んでみると、この惑星に名前を付けてください。と出ていた。

 「え?名前?惑星?」

 確かに灰色の世界を作れとは言われたけど、こう……もっと軽い感じってのかな?例えば、名前を付けるにしても、この世界に名前を付けましょう。みたいな。それなのに、惑星とか見ると妙に現実的過ぎて……。

 「異世界って、並行世界とかじゃなくて別の惑星にワープしてるって感じなのかな?」

 ワープ……世界を繋ぐとかいってたエンジ・シュウ・ローズクォーツがいた場所は、天界とかそんなんじゃなくて宇宙船みたいな?もう別の惑星に向かい始めているから地球へのUターンは無理ですね!みたいな?

 いや、そんな感じだったら、エンジ・シュウ・ローズクォーツに殺されると絶対に地球に転生できるって所の説明がつかない。

 送り返すとかならまだしも、ハッキリ転生って言ったしな……。

 「なにも分からん……とりあえず、名前を付ければ次の指示が出るんじゃないか?」

 とは言ってみたものの、惑星の名前?

 灰色の世界が1つもないから灰色の異世界を作ってみろってことだから……灰色、グレイ、鼠色、シルバー、銀色……ん~。

 「地球っぽい名前で良いんじゃないか?セカンドアースとか」

 2番目の地球かぁ。でも灰色要素も入れた方が良いよな。

 「グレイアース?」

 「いいな!それにしよう」

 シャラーン♪

 特に宣言とかしなくても、画面にはグレイアースの文字が刻まれ、電子マネーをチャージした時のような軽い音が響いた。

 そして思っていた通り次の文章が表示された。

 まだなにも存在しないグレイアースに生命を誕生させ、名前を付けましょう。

 と。

 まだ、なにも存在しない?

 なにも?

 え?

 「こっから!?」

 灰色の世界を作れとは言われたけど、創世からだとは思わなかったわ!

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