第3話

 10分後、俺達は4人そろって異世界に行くことを告げた。

 エンジ・シュウ・ローズクォーツは心底俺達には興味がないらしく、なんの感情も表さずに淡々と水晶を俺達の前に差し出し、黒と白と灰色の3つのグループに分けた後、さっき部屋にやって来た青色と緑色の2人を呼んだ。

 「アクアマリン、こっちのゴミが貴方の担当になったわ。 エメラルド、こっちのゴミが貴方の担当になったわ。2人ともよろしくね」

 こうして部屋に残ったのは、俺を含めた生徒が2人とエンジ・シュウ・ローズクォーツの3人だけ。

 「はぁ、貴方たち2人はゴミの中のゴミね。キングオブゴミだわ」

 だからその言い草よ。

 「さっきから聞いてりゃ、ゴミゴミって!」

 急に怒りをあらわにしたのは俺と共にキングオブゴミに選ばれた男子生徒だ。

 同じクラスってだけで特に接点もない生徒だけど、確かに体育でもテストでもいまいちぱっとしない生徒だなぁって……確か百瀬だっけ?名前は知らない。

 「だってそうでしょう?戦いのセンスもなければ、属性すらないなんて。あぁ、今すぐに消しクズにしてあげたいわぁ」

 どうやら白か黒かのグループ分けは属性だったようだ。

 「属性?俺達は人間なんだから属性なんて……」

 「あるのよ。分かるでしょう?人の王と魔の王の戦いといえば地球人らしいかしら?でもねぇ、世界によっては人の王が善とは限らないわけ。そんな世界では魔物が地球人を救世主として召喚するわけ。魔族を助ける時の救世主は黒属性になるわけ。理解できたかしら?」

 物凄くバカにされてる気がする。

 気がするどころじゃないな、俺達はゴミって呼ばれてんだから始めからバカにされてたわ。

 「で?俺達に合う異世界がないから地球に転生させるって言いたいんだな?」

 消しクズにして。

 「はい正解」

 自分の置かれている状況が分かったせいで百瀬はまさに絶望したって感じに膝をついてしまい、両手で顔を覆った。

 このまま放って置いたらコイツの言うように消しクズにされてしまうのだろう。

 うん、納得いかない。

 例えなんの役にも立てなくても、勝手に連れてきた人に対してゴミ呼ばわりとか普通にあり得ない。コイツの親の顔が見てみたいレベルで性格がゴミだ。

 このまま大人しく殺されてたまるか。

 「勝手にこんなクソみたいな場所に連れて来ておいて人をゴミ扱いかよ。で?合う世界がないから殺すだ?俺達が異世界に適さないと見抜けなかった自分の無能っぷりを俺達に擦り付けるなよ。いいか?10分やるから俺達に合う異世界を探してこい」

 どのみち殺されるんなら、これ位の大口をたたいたって罰は当たらない筈だ。

 「灰色に合う世界……フフッ、いいわぁ。面白そうね」

 おや?なんだか様子が可笑しいぞ?

 さっきまで興味なさそうな無表情だったくせに、笑ってる?

 「く、黒田……」

 絶望した表情で俺を見てくる百瀬は、俺の苗字は知っていたようだ。

 「今の段階では灰色に合う世界なんか1つもないわ。だからぁ貴方たちが自分に合う世界を作れば良いのよ」

 「は?」

 え?なに?

 世界を作る?

 「黒田……俺達どうなんだ?」

 細かいことは分からないし、どうなるのかも全く予想ができないけど、1つだけ言えることは、

 「俺達が世界を作ることになるらしい」

 争いがない異世界に連れていかれて、人と魔族を和解させるとか、なんかそんな感じだろうか?それ、戦って解決ってよりも複雑だし難しいような……そもそも俺達じゃあ戦っても負けるだけだしな。

 「じゃあ、灰色の世界創作、頑張ってねー」

 満面の笑顔のエンジ・シュウ・ローズクォーツは、俺と百瀬の額を人差し指で結構強めに弾くとヒラヒラと手を振って何処かに落ちていく俺達を見送った。

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