第2話

 青グループにならなかった俺達は、恐らくは異世界に適さなかったのだろうから、このまま何事もなく元の世界に戻されるのだろう。

 「改めまして、ハズレの皆様」

 ん?

 ハズレって、どんな言い草だよ。

 「あ、あの……どういう意味なんでしょうか?」

 控えめに発言をした女生徒を見るエンジ・シュウ・ローズクォーツの目は冷ややかなもので、今にも溜息を吐きそうなくらいの、なんともいえない面倒臭そうな表情を浮かべている。

 「1度目のグループは、そのままでも物理攻撃によって最弱魔物なら倒せる力を持った人間。2度目のグループには魔力の才能がある人間、3度目は、修行をすれば戦える素質を持った人間。で、貴方達は無能なゴミクズってわけよ。理解できたかしら?」

 あぁ、分かりやすい。

 しかし、言い草。

 「なら、元の世界に帰してください」

 うん、俺も同じ気持ちだ。

 「それはできないわ」

 「は?」

 いやいや、俺達はゴミクズなんだろ?だったら帰してくれよ。

 「元の世界に帰すというのは、功労者に贈られる最上のご褒美でしょ?何故ゴミの貴方たちがそれを願うのか意味が分からないわ。自分の立場を弁えて?」

 「……は?」

 いやいや、いやいやいや!

 勝手に連れてきた分際で、何言ってんだよこいつ。

 「私達はこれからどうすれば……」

 まて、お前もなんでそんな下からものを言うんだよ。

 「元の世界に帰してください!なんでもしますからぁ~!」

 泣くな!喚くな!

 「なにも確認せずにゴミを連れてきたのはお前の落ち度だろう?功労者に与えるご褒美?知るかよ。さっさと俺達を元の世界に戻せ!」

 全くもってその通りだ。

 「なら貴方は"地球へ転生”で良いのね?」

 「あぁ」

 なんだよ、地球に帰してくれるんじゃ……待て、転生?転移じゃなくて?

 一瞬、部屋の中が真っ赤に光った。

 ほんの一瞬だけ、物凄い熱を感じた気がした。

 そして、本当についさっきまで男子生徒が立っていた場所には、煤だけが落ちていた。

 え?

 え?

 え?

 「選択して頂戴。1、この子みたいに転生する。2、最弱魔物よりも弱いことを理解した上で異世界に転移する。10分あげるから良く考えて。相談しても良いのよ?」

 10分かよ。

 「あ、あの……異世界に行って、そこで死んだ場合、転生はするんですか?」

 控えめな質問ではあるけど、あの女生徒はどうやら勝ち目のない異世界へ行くことにしたようだ。

 「輪廻転生に乗って転生するんじゃなーい?ただし、地球かどうかはわからないわ」

 フワッとしてんな。

 要するに、確実に地球に戻るには、今この場でコイツによって燃やされて死ぬしかないのか……異世界に行って殺されても一応可能性は残ってるけど、問題はどんな死に方になるのか、だ。

 少なくともここで燃やされたあの男子生徒は一瞬で煤になったから、苦しさを感じる暇もなかっただろう。

 俺はどうしよう……。

 こんな時に友達の1人くらい残ってくれてたら気も楽だったのかも知れないのに、あいつらはさっさと青グループになったしな……なら俺もあいつらと同じ異世界に?でも勝ち目がないんだぞ?

 ……いや待て、俺はなんでこんなにもこの状況を受け入れてんだ?

 もしここで地球に転生を選択したら、俺はあいつらに最後の挨拶すら出来ずに殺されるんだよな?それって酷くないか?

 そもそも、青グループの皆は無事なのか?

 「青グループになった皆はこれからどうなるんだ?無事なんだろうな?」

 「ここは色んな世界と繋がってるのよ。あの子達はここで基礎的なことを身につけた後、それぞれに合った世界に救世主として送られるわ。その後のことは、それぞれの運と実力の問題」

 スグに異世界に連れていかれる訳じゃないのか。だったら俺達も異世界に行くことを選べば予備知識を学んでいる間になにらかの力を身につけられる可能性があるな。

 戦う力がないのだとしても、生き残るための力が。

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