第14話 チカホとカレン

六連星ムツラボシ……」


 それを発した瞬間に、六つの光がシマを囲む様に〈空間の檻〉を創っていた。


 シマはこれまで見たことのない能力に驚きながらも攻撃に転じようと体勢を整えていた。


 ────だが! 


 ───【流星フォール


 出現していた光はシマ目掛け、飛び交うように空間を反射し幾度となくシマへのダメージを繰り返し膝を突かせていた。

 そして最後に続けた───


「────手加減はする……【新星ノヴァ】」


一瞬─────


 光が消えると急激に明るくなり爆発を起こした。

 先とは比べ物にならない程の大ダメージを負わせていた!


 シマはその反動で後方に大きく飛ばされると、そのまま意識を失っていた。


「ごめんな……シマ……」


 ハヤセも能力域の限界が近づき、体力も大きく削られていた。

 額に汗を滲ませ、片膝を突き息を上げていた。

  

「ハヤセ! 大丈夫……?」

 駆け寄ってきたキキノに「──ああ、大丈夫だ」と言いつつも足下がフラついていた。


(大丈夫とは言ったけど……かなりキツイかもなぁ。でも何とか訓練学校まで戻らないと……)

 その姿に、キキノは意を決した様にハヤセに言葉を掛けた。


「……ハヤセ……。あのね、私ね。回復させられるかもしれない……」

「回復……?」

「うん……。カンちゃんからね、少しずつ私が能力を使える様に習ってたの……。『何かあった時の為に』って───でも、あまり安定しないから大きい力は使えないだ……。みんなに迷惑を掛けることになるから……。それでも、回復は失敗したことがないからできると思うんだよ」


 その言葉を聞いたハヤセはヘルゲートでの揺れを思い出していた。

(そうか……揺れあれは練習してて暴走したのか……)


 キキノはハヤセの背中に両手を押し当てると集中力を高めていった。


(……大丈夫。カンちゃんが教えてくれていた通りにする………

 ───混沌こんとんの中から拾い上げる

  ───空が生まれ大地と分かれる

   ───水が湧き生命を抱き

     ……樹々が全てを包み込む────)


「─────【創聖命ヴィータ】」


 キキノの言葉と同時に発動した創聖命それは波紋を広げるように全身を満たすと、小さく──りんッ。と鳴り終えると、ハヤセの体力と能力域を全快とはいかないものの、6割程の回復をみせていた。


「すげーよ……。ここまで回復できればキキノを抱えて十分戻れるよ!」


「───そういえば、私また抱えられるんだね……」

 少し照れくさそうに言った。


「嫌かもしれないけどもう少し我慢してくれ」

 キキノは慌てて両手を振ると「──そんなんじゃないよ〜!」と言い、ハヤセは「──そうなのか?」と返してきた。


 それに答え言った。


「抱えるのお願いします!」

 と、言葉が変になったことに気づき顔を赤くしていた。「そっか!」と言いながら、キキノを最初同様に抱えると、訓練学校に向かい進み始めた。


 

 ※ ※ ※



 シマとの小競り合いというくらいのものが終わり、キキノに回復してもらったことで、進むペースを早めた俺は学校の敷地前まで着いていた。


 周囲には生徒らしきものは見られず、建物にも明かりは点いていなかった。

 まだ、街中を探している事が分かり、俺はキキノを抱えたまま校内へと入ろうとしていた。


 そして、扉を開けようとした時────


「──【絶零ゼツレイ】!!」 


 俺の目の前の扉は固く氷に閉ざされていた。

 この能力には覚えがあった……シマと同じで幼馴染であるカレンだ……。恐らくチカホも来ているだらうと目をやるとカレンの後ろに立っていた。


「───やっぱ来たんだな……」

「……シマと戦ったでしょ……? シマとハヤセの能力の気配を感じたし……」

 カレンは怒り気味に言った。

 それに続けてチカホは寂しそうに口を開いた。


「───なんでよ……ハヤセ……」

「……お前たちには悪いと思ってるよ……巻き込んでさ……」

 カレンとチカホはシマと同じことを聞いてきた。


「そのなんでしょ? 理由は……?」

「誰なの……? そのは……?」

 怒りと寂しさとが合わさった感情だと分かる。

 でも、今に至った事を言ったところで、シマと同じ反応になると思った俺は言いたくない言葉を言った。


「───どうせ大人しく通してくれないんだろ? だったらさっさと始めよーか……。俺が2人を相手するよ……」 

 

 そう告げると、キキノを後ろに下がらせ俺は戦闘体勢をとった。 

 それに反応する様に2人も戦闘準備を整えた。

 

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