第6話 戦場に咲くシスコン
そしてこれが消耗戦であり、王都の兵士、騎士を最大限投入した場合、魔物の群れを
それは周辺国からの侵略を防ぐ手立てが無くなる未来を示していた。
まず勝ちが無い、その事を認識する。
まずいよね、と告げるロランの声で我に返ると続けて状況を整理する。
王都は周囲を高い壁で囲まれているが、戦闘の規模が大きくなれば街への侵入も視野に入れなければならない。
ただの暴走であれば正面だけを気にしていればいい。しかし、今回はそうはいかない。敵に統率者がいる。
ある程度周囲に兵を
正面からぶつかると数の優位を保てないので土魔法で
消耗戦は避けられそうにありませんね。
モリアスがロランにそう言うと、ロランがもう一度、まずいよね、と呟いた。
「市街地に魔物が侵入した場合、クラリスの身に危険が迫るかもしれない。私は市街地に陣取ってクラリスを護ろうと思う」
「うん?うん。取り敢えず落ち着いて下さい。あなたは大隊長です。南の森の際で魔物を食い止める1000人の兵を指揮する立場にあります。そんなわがままが通るわけがないでしょう。どうして妹君が絡むといきなりポンコツになるんです。あと、ちょっと冷静であるかのように真顔を装うのをやめていただけますか?真顔で冷静なポンコツなど笑えませんので」
モリアスがロランを
そうですよね、とモリアスが同調する。こちらとしても想像していた通り、
この姿を侍女たちが見たらなんと言うだろうか。
いや、答えは分かっている、家族のために悩む姿も素敵で優しいわ、である。
あまり知られていない事実だが世界の約8割の
そして、女性の約9割は
つまり実に世界の決定権を握る存在の72%がこのポンコツに優しいということになる。
そして、同時についさっき部屋を訪れた際に感じた尊敬の念は忘れよう、モリアスはそう思った。
「つまり……その……、大隊長を辞めるべき……かもしれないとさえ考えている」
「思い切りの良さエグいですね。冗談はその辺にして下さい。今のが冗談じゃないとか冗談じゃありませんからね」
一呼吸おいてモリアスが続ける。
「話を戻しますが、市街地への魔物の侵入を阻止することは絶対です。なので東西と北の門の警備に人員を割く事、空を飛ぶ魔物の警戒のために壁の上の弓士と魔法士は外せません」
「東西と北は他所の担当かな」
「歩兵と騎兵で魔物を食い止める場合、弓士と魔法士が居なければ敵が減りません。英雄でもいれば別ですが。弓士と魔法士の手配は済んでいますか?」
「そこは抜かりなく終わっている。が、実戦が初めての連中も多い。恐慌を起こさないとも限らんな。英雄……、英雄なぁ。王様か眠り姫でも呼ぼうか。あとは前線をどこまで押し上げて保てるかと、歩兵の交代のタイミングをどうするかだろうか。森の全景は壁の上の
「妹君に言いますよ。あなたを護るために1000人の部下を
「やめろ。……やめて」
「あと、王様が出てきたら困るのは貴方です。あの方は
「だよね。確かに
「ではまた夕刻に参ります。それまでに他の隊との交代のタイミングを決めるのと、誰が指揮兵をやっているのかを聞いておいてください。あと、土魔法を使える人員を集めて空堀の設営とその後ろに壁の設営を。一度に通れる魔物の数を絞らないといけないので空堀は深目に。壁は魔法士と弓士の
白銀の騎士の二つ名を持ち、吟遊詩人には戦場に駆ける赤い薔薇と
剣を抜いて馬で駆け抜けると戦場には次々と
これまでに紅い花を咲かせて散っていった敵兵がこの姿を見たら何と言うだろうか、
モリアスは目の前のポンコツを
流石に今回は死ぬかもしれない、クラリスとデートしたかったな。生きて戻れたらデートに誘って色んなことをしよう。
ただ、この気持ちは絶対に口にするまい、誰かに聞かれたら生きて戻れない気がする。
特にあのシスコンポンコツ兵器に聞かれたら戦場に咲いてしまうかもしれない。
クラリスと進展があっても報告は全て事後にしよう。兵舎に戻るモリアスはそんな事を考えながら赤い
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